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どないなるんかなあ

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)

皆さんこんばんは
フリックフラックの髙橋壱歩です。

いつも僕の記事をお読みいただき、
本当にありがとうございます。

今回の記事では
毎回、本当に一部の読者の方々に
ご好評いただいている
相方 上山立起の主催ライブの
様子を書いていきたいと思います。

とは言っても
過去3回については、
僕は出演しておらず客席にいて
そこから見た内容を
皆さんにお伝えしてきました。

しかし今回は
初めて僕自身もお誘いを受けたので
客席ではなく
参加した側から見た
ライブの様子を
できるだけ鮮明にお伝えしたいと思います。



フリックフラック
うえやまりつき第4回主催ライブである
『どないなるんかなあ』

TBS系列で放送されている
人気企画ドリームマッチの
完全オマージュライブであり、
普段組んでいるコンビの相方を
シャッフルして
違うコンビを組み、
一度きりのネタを披露すると言う内容で
はじまりました。

ライブ内容の幾つかについては
触れることができない部分が
多いので
今回は僕が組ませていただいた
相方の話を中心に
書いていきたいと思います。


遡ること2ヶ月ほど前、
相方であるりつきから
そろそろまた主催ライブをしようと
思っていると言う旨の話を聞きました。

と言っても僕は彼の主催に関しては
今までもほとんどノータッチで
何をしようが
お任せしようというスタンスでした。

しかし今回の内容は
ドリームマッチ

今までは
りつき1人、もしくは
ボニーボニーのとくのしんさんなど
本当に少人数だけで
行うことが多かったのですが

今回は内容が内容なので必然的に
演者の数は多くなります。

今まで以上に
他の演者の管理や連絡などが
大変になることは容易に予想できました。


「誰誘ったら良いと思う?」


僕は

メンバーが偏りすぎなければ
自分の主催ライブなのだから
お前の好きな人を呼べば良い

とだけ伝えました。


そしてそこから約1ヶ月後

演者が決定したと伝えられました。


その演者の一覧を見て、
僕は正直、驚きというか
一種の恐怖のような物を感じました。


ほとんどの演者が僕たちよりも先輩、
そして全員が僕たちよりも
年上だったのです。


りつきよ、お前は正気なのか?


僕たちはフリーなので
芸歴はあってないようなものですが
お客さんはそうは思わないでしょう

もし、失敗したらどうしようと
主催ではない僕自身も
ビビり散らかしていたことを
今でもハッキリと覚えています。
(そりゃ最近なんやから覚えてるやろ)


そして運命の
フィーリングカップルの日程が
決まりました。


実際に演者全員が一堂に会し、
誰と組むかを決めるのです。


日が迫るにつれ、
緊張が増していき

他のライブで会った
このライブの演者に

「誰と組みたいとかあります?」

などの探りを入れてみたりと

ちょこまか動くことはありながらも
結局何が起きるわけでもないまま
その日はやってきました。


そして12月3日
フィーリングカップル当日


ライブの本番は12月19日です。


このライブ、
地味にネタ合わせ期間が
長めに設けられているのです。


そのことが更にプレッシャーになりました。

もし僕たちがお互いに誰にも選ばれることなく
余ってしまったらどうしよう


仮に誰かと決まったとしても
大きなミスを犯してしまったらどうしよう


そんな思いを抱えながら僕は
フィーリングカップル会場の
BAR舞台袖へと向かいました。



(フィーリングカップルの内容は
割愛させていただきます。)



僕の相方は4組目に決定しました。


相手はボニーボニー
花崎天神さん


花崎さんは
普段のライブでご一緒させていただいたり
僕たちの主催ライブにも
何度も出演していただいたりと
本当にお世話になっている先輩です。


ある程度、気心の知れた間柄である
先輩と組むことになり、
僕はこの時、少し安心しました。



(ここから花崎さんとの出会いの話です)


僕が花崎さんと初めて会ったのは
今から4年ほど前のことです。
(すいません、
今日のnote結構長くなる予感です。
ゆっくり、
皆さんの読みたいところまでお読みください。)


僕はその当時、
シンプルテンプルという
前のコンビを組んでいました。

芸歴1年目、
ライブもまだ出はじめたばかりで
右も左もわからない状態の時、
僕たちに
様々なライブや
エントリーの仕方など
色々な作法を教えてくれたのが
今は東京で活動をされているある先輩芸人でした。

ある時、その先輩に

「グ○ッチェというお笑いショーバーがあるから
シンプルテンプルも出ないか?」

(カタカナ多いですよねすいません)

と誘われました。


出たいと伝えた僕は
ネタ見せの段取りをつけてもらい
決められた日に
今は無き、
お笑いショーバーグ○ッチェに
向かいました。

店の中に入ると、
3人の大人がいました。


手前に1人

そして奥に2人


挨拶をすると、手前に座っていた男性に

「ネタを見せてくれ」
と言われました。


緊張しながらも
僕たちはその時一番自信のあったネタを
その場でしました。

笑い声は全く聞こえませんでした。

ネタが終わります。



一番手前にいた男性が
僕たちの姿を一瞥したのち、

奥の2人に尋ねました。

「どうやった?おもろい?」


その直接的な質問に
僕たちは背筋が凍る思いがしました。


「いやぁ面白いんじゃないですか?」


その時の奥の2人の言葉は
とても嘘をついているようには
思えませんでした。


皮肉にも感じませんでした。


称賛されているようには
確かに感じたんですが

それでも
その一切オブラートに包まない
言葉の一つ一つが
その頃の僕たちには
刺さりまくり、
更に恐怖が増すばかりでした。


「じゃあ出てもらおか。よろしく」


僕たちのグ○ッチェへの
出演が決まった瞬間でした。


その時、
その奥にいた2人こそ
ボニーボニーだったのです。


その時、2人がボニーボニーではなく
レイジーレイジーと
名乗っていたのと
僕たち自身の緊張からか

ボニーボニー = 奥にいた2人

と僕の記憶の中で一致したのは
そこから何ヶ月も経った後でした。


そしてそこから
僕たちはグ○ッチェに出演したり、
他のライブなどで
何度もボニーボニーさんと
共演させていただきました。


数年後、僕たちは
シンプルテンプルを解散


ボニーボニーのお2人とは
仲良くさせていただいていたにも
関わらず、
ちゃんとしたご報告もできずに
解散してしまったことを
申し訳なく思っていた僕

そんな無礼な僕に
解散の数ヶ月後、

新しいコンビとして
改めてご挨拶に向かった時に
快く受け入れてくれた
お2人の優しさは今でも
覚えています。


そして今では
フリックフラックごと
可愛がってくださっています。

(皆さんお待たせしました。
過去のパート終わりです。)



そんなボニーボニーの花崎さんと
ネタができるというのは
光栄でしかなく、
コンビが決まった瞬間は
ただただ自分の力を出し切って
僕なりの結果を出そう

そう思っていました。


りつきは
「僕ね、この企画思いついた時
壱歩と花崎さんのコンビできたら
面白そうやなと思ってたんですよ」

と謎のカマシを入れてきました。


しかし、

フィーリングカップルの席を離れ、
2人になった瞬間
花崎さんは僕にこう言いました。

「絶対優勝しような!」


ここで目が覚めた気がしました。

そうか
花崎さんからすれば
普通に1位を獲る気満々なんだ。


それだったら
本コンビじゃないからとか
後輩だからとか
言い訳じみたものは
全て取っ払い、
1位だけを目指そう。


誰と組むことになっても
何か吸収できればいいなとか

僕は最初そんなことばかり考えていましたが
それ以上に1位を獲りたいという
その気持ちだけが先行したのが
その時でした。


そしてその当日、

最初のネタ合わせというか
相談がはじまりました。


「やっぱり漫才?」


これは本家のドリームマッチでも
そうですが
組んだ瞬間はやはり
漫才かコントかという問題が生じます。


しかし僕はすぐに答えました。


「いやいや、漫才でしょ!」


この時にはすでに
コンビが決まったことの
安心感からか
謎の余裕が出てきていた僕は

花崎さんの
「漫才?コント?」
という質問すらボケかのように扱い
「どう考えても漫才でしょ!」
くらいのテンションで返答しました。

そして花崎さんを
どう調理してやろうかな
くらいの
謎の傲慢さと遊び心が
溢れ出していました。


ボケツッコミも一瞬で決まり、
コンビ名は
花崎さんが好きなバンド
ブルーハーツの曲の歌詞
『ヒマラヤほどの消しゴム』
という案をなぜか僕から出し、
一瞬で決まりました。


その後ネタの内容について
少し話進めた段階で
その日のネタ合わせは終わりました。

そしてその3日後の12月6日

僕がよく行っている喫茶店で
2回目のネタ合わせが行われました。

この段階で
花崎さんが先輩であり年上
僕が後輩であり年下であることを
前提として展開していこうという
ネタの大筋が決まりました。


お互いに余裕が出てきたのか
ネタの話はそっちのけで
世間話をしていると

ウエイトレスの方が
注文を取りに来ました。

おそらく中国かどこか、


アジア系の学生っぽい女性で
僕が1人でこの喫茶店にきた時などは
ほぼ毎回働いているのを見かける方でした。

注文をとり終わり、
厨房に消えて行った姿を
花崎さんが目で追うのがわかりました。

「めっちゃ可愛いじゃんあの子」

「そうですね。カタコトがいいですよね」

「え、日本人じゃないの?」

「僕何回かここで見かけたんですけど
多分違いますよ」


そんな話をしては
ネタの話に戻り
また世間話をしてを繰り返しました。



そしてその帰り道


2人で話しながら歩いていると
花崎さんがふと口を開きました。

「俺最近さ、
この辺でめっちゃ可愛い子見たんだよ」


そんなことどうでも良いがなと
思われそうですが
男同士の会話なんてこんなもんです。


「そうなんですか?」


更に話を聞きます。


花崎さんがその時
語った内容はこのようなものでした。


ある日のライブ終わり、
千日前を歩いていると
交差点のあたりで
めちゃくちゃ可愛い子を見つけた。

どうしても可愛かったので
あとを少しつけることにした。

15分ほどついて行ったが
結局なにもできなかった。


この人はいったい何の話をしているのだろう


続きを聞いてみました。


ここからは
花崎さん口調で書きたいと思います。


「でさ、俺めっちゃ後悔してて、

何日か後のたまたま同じ時間に
同じ場所を通ったわけ

そしたらその子がまたいたわけよ」


「え?めっちゃすごいじゃないですか」


「だろ?
で俺次あったらぜってえ
連絡先聞きたかったから
またついて行ったわけ

でも15分ついて行って
また結局聞けなかったんだよ!」


「何してるんすか!」


「だってさ、
15分以上ついて行ったら
それはもうストーカーだろ?」


花崎さん、
直接も言わせていただきましたが
noteでも改めて書かせていただきます。


15分以上ついて行かんくても

ついて行ったらもう既に

ストーカーやから!!!!!

後輩にびっくりマーク
5個も使わせんといてください


それから数分歩いたのち、
花崎さんは

「俺、日本橋のゲーセンで
うんこしてから帰るわ!」

と言って
夜の暗闇の中に消えていきました。



そして5日後の12月11日

3回目のネタ合わせ、

また同じ喫茶店


少し遅れて
店内に入ってきた花崎さん


また世間話がはじまります。


すぐにウエイトレスの方が
注文を取りに来ました。

すると花崎さんが口を開きました。

「めっちゃ可愛いですね!」

あ、直接言うてまうんや


花崎さん、
そういうのもう
アウト寄りの時代になってきてますよ
という発言をグッと堪えて
またネタの話に戻ります。


3回目終了



そして4回目のネタ合わせは
2日後の12月13日に
行われました。


そしてこの日に
ある事件が起こるのです。


その日、僕たちフリックフラックは
主催の昼寄席があり、
その昼寄席に
ボニーボニーさんも出演予定でした。

つまりライブ終わりにそのまま
ネタ合わせをしに行こうという
段取りでした。

しかし前日にボニーボニーさんから
ライブのキャンセル連絡があり
改めて待ち合わせをしないと
いけなくなってしまったのです。


6時前にライブの片付けなど
諸々が終わり、
僕は花崎さんにLINEをしました。


正確な時間は決めていませんでしたが
6時過ぎには集まるだろう


僕はそう思っていました。

18時16分


花崎さんから連絡がありません


僕は先に
晩飯を済ませておくことにしました。


その旨を伝えるLINEを送ります。


返信がありません。


ご飯を食べ終わった時も
まだ連絡がありませんでした。



どうしよう



アメ村のど真ん中で
僕は途方に暮れていました。

ウロウロしていると
やっと花崎さんから連絡が来ました。


7時19分

「ごめん!!!今起きた!!」


え?????


正直びっくりしました。


人間が起きる時間でしょうか


朝の7時ではありません


夜の7時

19時です。


こんな時間に目覚めるなんて


そして20時には着くと
追って連絡が来ました。


皆さんは覚えていらっしゃるでしょうか

この日、大阪は
前日に輪をかけて寒さが増し、
冬本番中の本番
外に長時間いられるはずのない日でした。


僕はいつもの喫茶店に避難しました。


そしてただただ待ちました。


そして
20時12分


喫茶店で1人


僕は

花崎さんはもしかしたら
死んでしまったのではないかという

考えにまで至っていました。


そして20時30分頃
花崎さん到着

ついた瞬間に僕は言いました。


「花崎さん、
あなたもそっち側の芸人だったんですね。
僕は花崎さんは時間は守る人だと
思っていました。」


花崎さんが答えます。

「いやぁ〜これは俺が悪いわ。
ごめんなホントに」


はい

花崎さんが悪いです。

10:0です


どんな喧嘩とか事故でも
10:0って滅多に無いですよ?


でも今回はかんっぜんに10:0です

この喫茶店の
閉店時間は21時00分でした。


1発目の注文がラストオーダー


よりによって
また前と同じ女性が注文を取りに来ました。

ニコニコしながら花崎さんが
注文とは全く関係のないことを聞きます

「どこの方なんですか?」


ウエイトレスさんがカタコトで
答えます。


「中国です」

「可愛い!」



何が?
何で中国やったら可愛いの?


ウエイトレスさんが
立ち去った後も
花崎さんは更にこう続けました。

「マジでめっちゃ可愛いわ。
次会ったら絶対名前聞こ」


花崎さん、
あなたが先輩でよかったです

あなたがもし後輩だったなら
今頃どうなっていたか


ちなみにその日の僕たちのやりとりがこちら
         ↓
         ↓
         ↓

画像1

画像2



この日はその後、近くで立ちながら
ネタ合わせをして解散しました。



5回目、
最後のネタ合わせはライブ当日に
行われました。

「16時にいつもの喫茶店で」


そう連絡をうけました。


そしてその時間に
喫茶店の前に着くと
またしても花崎さんの姿はありませんでした。


すぐに連絡をします。


すぐ返信が来ました。


「ちょっと遅れる!!」


またか。
少しイラッとしましたが
その日は当日です。

怒ってもしょうがありません。


僕は黙って店の前で待っていました。


全然こうへんなぁ

何分経っても
花崎さんは1人も来ません

(1人しかおらんやろ)


16時22分

待ち兼ねた僕は
一旦外に出て花崎さんに
電話をかける事にしました。



店の外をウロウロしながら

たまに窓の奥の店内の様子を眺め、
電話をかけます。

すると衝撃的な光景が
僕の目に映ったのです。


何と
モジャモジャとした物体が
大きな荷物を持って
店内のソファに腰掛けたのです。


花崎さんだ。



僕の存在に気がつかず
店内に入り、
何事もなかったかのように
席に座ったのです。


僕も急いで店内へ


怒りたい感情も
少しはありましたが
今日は本番当日だという
理性で必死に抑え
僕も席に向かいました。


「いやぁこれはホントにすまんわ」


これは?


前回のことは何も覚えていないのだろうか

しかし、ネタも詰めないといけない。

遅れるのはしょうがない
先輩なんだから

僕は後輩なんだからこれでいいんだ

気持ちを抑え、
最後のネタ合わせに入りました。


喫茶店で少し話し、
また外に出て
立ちながら合わせていると

すぐにライブの入り時間は来ました。


今回のライブは少し特殊なため
リハーサルの時間も
長めに取られていました。

それが更にコロナの影響で
開演時間の前倒しなどが行われたので
尚更でした。

全員が少しずつバタバタしていました。



そういえばりつきは大丈夫だろうか。



この数日間、ライブがなかったため
あまり連絡を取っていなかったのですが
急に心配になってきました。

ふとりつきのことを思い出していると
電話がきました。

「あのさ、ホンマにすまんねんけど
アンケートだけお願いしていい?」


僕へのアンケート用紙の作成及び
印刷のお願いでした。


やっぱりか


こいつ相当バタバタしているな?



りつきの現状を把握し
会場である、BAR舞台袖に
花崎さんと2人で入ります。

周りの演者たちを見ると
今までとは違った緊張感があるのが
ヒシヒシと伝わってきました。


みんないつもと違うことに
ある程度緊張しているんだなぁ


その事実が更に僕を緊張させました。

リハーサルを済ませ、
あとは本番を待つだけという
時間になりました。


その間も花崎さんは
僕に対して
「絶対1位獲ろうな」
声を掛けてくれました。


その時に改めて思い出しました。


花崎さんはこの2週間、
僕に対して
「楽しもうな」
「絶対勝とうな」
「1位獲れるぞこれ」

など何度もポジティブな言葉を
掛けてくれました。


花崎さんで良かった。


改めてそう思いました。


絶対にベストパフォーマンスをして
1位を獲ろう。

ここまでやったらあとは
勝つしかない。


僕の中を
そのような感情が駆け巡りました。



そして開場時間になりました。

お客さんがどんどん入ってきます。

このライブでは
誰が誰と組むのか
SNSなどで事前には
発表されていませんでした。


なので僕はなるべく
お客さんの前では
花崎さんとは話さないでおこうと
決めていました。

少しはカモフラージュになるかも
しれないと思ったからです。


しかし、
どうしようもなく不安に似た感情が
僕の体の中を駆け巡っていくのが
わかりました。

もしスベったらどうしよう

今回のネタは一緒に
半分ずつアイディアを出し合って作った。


僕が考えたところの反応が悪かったらどうしよう


花崎さんの足を引っ張ってしまったら


ただただ不安で
どうしようもない感情を
どこにもぶつけることができず
ただただ会場の周りを
ウロウロし
ただただタバコを吸うだけの
機械になってしまった僕の周りには
同じような動きをしている
他の演者が数人

「ネタ書いてはじめてわかったわ。
自分でネタ書いて舞台でするのって
こんな怖いんやな。」


近くにいた先輩芸人がふと呟きました。


りつきの姿が視界に入りました。


彼は誰よりも楽しそうにしていました。


そうか、りつきよ
君は今日もそうなのか
自分の主催ライブを
誰よりも楽しんでいる。


そしてライブがはじまりました。

ライブ直前まで
ほとんどチケット取り置きが
なかったのにも関わらず、
会場にはりつきの主催ライブの中では
最多の人数のお客さんが
いらっしゃいました。

「何でこんなに来てんねん!」

また誰かが変なテンションで
変な事を言いました。


僕の見る限りでは全演者が
よくわからないテンションに
なっていました。


僕たちのネタ順は
7組中6番目


最初にフィーリングカップルの
映像が流れるため
結構な待ち時間が生じます。

僕は舞台裏に行ったり
客席最後部に行ったり
ウロウロしながら
他の演者のネタを見ていました。

花崎さんとネタ合わせをしたい気持ちも
もちろんありましたが
他の演者たちが
どんなネタをしているかの方が
気になったのと
何をしていても
どうせ落ち着かないので
こうするしかなかったのです。


そして出番直前になりました。


「1回合わすか」


花崎さんに促され
最後のネタ合わせをしました。



なぜか感情が溢れてきました。



これで最後か


いつもと違う相方と
ネタを作るなんて
結構なカロリーを使う作業です。



めちゃくちゃウケたって
めちゃくちゃスベったって

次の日になれば
何の影響もありません

何の評価にも繋がりません


それなのに
こんなに真剣にネタを作って
練習をして

もちろん
お客さんに来てもらって
するライブなので
それは当たり前のことなのですが
それにしても
この一連の作業は大変なものです。


でも、僕はすごく楽しかった。


こんな文章でしか
書き示すことのできない
自分の文章力の低さを本当に恨みたいですが
それでもこう言うしかないくらい
すごく楽しかったんですよ。


花崎さんはまた僕にこう言いました。

「よし、絶対優勝しような」


舞台袖のカーテンの前にたち、
出番を待ちます。


しばらくすると
花崎さんの大好きなバンドの曲が
流れはじめました。

いよいよ僕たちのネタがはじまります。

はじまると本当に一瞬の出来事でした。


思った以上に多かったお客さんに
怯んでしまったのか
僕ははじめあまり声が出ませんでした。


あまり反応も良くない


そんな状況の中で
花崎さんがギアを入れ直した瞬間を
僕は隣で目の当たりにしました。


その瞬間、鳥肌が立つほど
気持ちが良かったのを
僕は一生忘れることはないでしょう


気持ち良すぎて○○かと思いました。


ネタは本当に一瞬で終わりました。


舞台を降りると
花崎さんが右手を差し出してきました

僕も右手を出し、
力強く握手をしました。


終わった


出番が終わった


あとは結果を待つだけです。


そして結果発表


その時僕は正直
全くドキドキしていませんでした。


多分1位だ


本当に他の演者さんには
申し訳ないのですが
1位としか思えませんでした。
(急なイタさ全開発言)

なので
順位が順番に発表されていって
1位か2位のどっちかと
いう段階まできたとき

はよ名前呼ばれろ

としか思っていませんでした


1位で僕たちの名前が呼ばれた瞬間、

花崎さんが僕のことを抱き寄せました。

その力が強すぎて
首をつりかけましたが


良かった

頑張って良かった。


ライブ終演後、
賞金を受け取りました。

主催者であるりつきから
花崎さんに賞金の3000円が渡されると
花崎さんは僕にまず1000円を渡しました


その瞬間、
え?と思いました。


その感情が思わず表情に
出てしまい
声にも出してしまいました。


「え?マジですか?」


「いやいや、ちげーよ!
今500円玉探そうとしてたんだよ」


すぐに花崎さんは財布の中から
500円玉を探し
僕に渡してくれました。

そしてそのあと、
花崎さんとはじめて2人で写真を撮りました。

画像3


いい写真ですね


家に帰ったあと
興奮冷めやらぬ僕に
花崎さんから写真と一緒に
LINEが送られてきました。


「お前が東京行く前に
おもろいこと一緒に出来て
嬉しかったよ!!」




何回目かのネタ合わせの帰り、
花崎さんは僕にこんな話を
してくれました。


「あのな、俺は子供は
ぜってー作らねーんだよ」


僕はすぐに尋ねました。


「何でですか?」


「あのな、遺伝ってあるだろ?
俺の見た目が
遺伝した子供が生まれたら
可哀想だろ?

だからな、俺からの遺伝は
中身だけでいいんだよ」


「どういう意味ですか?」


「あのな、
遺伝子から以外でも遺伝するんだよ。

例えばな、
俺が死んだ後も
例えば壱歩みたいな
芸人の後輩が
俺の芸の一部を引き継いで
頑張ってくれたらそれは
一種の遺伝になるだろ?」


「なるほどね。
そういうのもあるんですね」



花崎さん、
あの時は少し素っ気ない
返事をしてしまってすみませんでした。



花崎さん、
あなたは僕の周りで


一番ダサくて


一番カッコいい
芸人なのかもしれません



僕はあなたの、

花崎さんの芸の一部を確かに
受け取りました。


ちゃんとした形では
受け取れてないかもしれませんが


確かに受け継ぎましたよ


花崎さん

ありがとうございました。


今後もどんどん楽しく面白い記事書けるよう頑張ります! よければサポートお願いします😊