#4 東武東上線ゆる散歩旅~大山~
立春を迎え
暦の上では「春」といいながら
まだまだ寒い2月上旬
2022年最初の東武東上線ゆる散歩旅
4駅めの「大山」へ
首都圏にお住いの商店街マニアなら
恐らくご存じであろうこの町
駅を挟んであっちとこっちに
大きな商店街があることでちょっと有名
戸越銀座や武蔵小山
十条なんかと肩を並べる?商店街は
テレビの街頭インタビューや
グルメ番組でもちょいちょい登場する
板橋のホットスポット!?
商店街を端から端まで歩くだけで
旅レポのネタには困らないことは
想像に難くないことは分かりつつも
ここはヘソ曲がりの私…
あえて商店街の外側をメインに歩こう~♪
ということで
全長560メートルのアーケード商店街
「ハッピーロード」を突き抜けて川越街道へ
せわしなく車が行き交う大通りを
池袋方面へ進むとまず見えてきたのは
角地に佇むレトロな建物
老舗の洋食屋さん「オオタニ」
川越街道を頻繁に利用していれば
お店に入ったことはなくても
建物だけは知っているという人も多いはず?
もう20年ほど前…
ちょっと奮発して家族でオオタニへ行き
晩ごはんにハンバーグをいただいた我が家
隣のテーブルに運ばれてきた
特大エビフライの大きさに
娘がクギ付けになっていたのを思い出す(笑)
そんな想い出のオオタニを目印に
左へ曲がって静かな住宅街を直進
この先に散歩前の腹ごしらえをしに
立ち寄りたいお店があった…はず
…が、歩いても歩いても
それらしきお店が現れない(汗)
「ん?ホントにこの道だったっけ?」
と不安になりはじめたころに発見!
コーヒーショップ「ピノキオ」
看板の「コーヒー」の文字が
擦り切れて「ニーヒー」になってるが(汗笑)
ここはザ・喫茶店…コーヒーショップだ
まだ朝の10時半過ぎだが
店内に入るとすでに3~4組のお客さん
どのテーブルでもみんな幸せそうに
アレを食べている…そう、アレ
ピノキオのアレとは
ホットケーキ
もう10年ぐらい前のこと
ある雑誌で「おやつ」の特集があって
ここのホットケーキが表紙を飾った
まるで絵本にでも出てきそうな
そのホットケーキの写真に惹かれ
普段買ったことなどない雑誌を即買い
なんと!表紙のホットケーキが
地元沿線で食べられると知って
友人とふたりで食べに来たことがある
以来、いつかもう一度
ピノキオのホットケーキを食べたいと
密かに願っていたわけで…
この大山の旅を
その「いつか」にしない手は無い!
なんたって
この日は朝ごはんを抜いて来たのだ(笑)
お店を切り盛りしているのは
一見無口そうなマスターおひとり
ブレンドコーヒーとホットケーキを注文すると
カウンターの向こうのオープンキッチンで
ホットケーキの材料を混ぜる音がしてきた
チャッチャッチャッ…といいリズム
待つこと15分ほど
銅板で丁寧に焼かれた
名物ホットケーキがやってきた
直径10センチほどのきれいな円形
厚さは3センチちょっとあるだろうか
表面のこんがりした焼き色と
側面の白い部分のコントラスト
かっちり四角く切られたバター
ナイフを入れると
表面はクッキーのようにサックリ
そして中はフワッとしつつもドッシリ
これはパンケーキじゃなく
ホットケーキという名前がピッタリだ
小ぶりながら食べ応えがあって
2段を食べ終わる頃にはお腹いっぱい
朝ごはんを抜いてきて良かった(笑)
「おいしかったです~!
やっぱり食べに来てよかった!」
お会計をしながらマスターに話しかけると
嬉しそうに目元がゆるんで
思いがけず立ち話に花が咲いた
聞けばピノキオは今年で49年目
ホットケーキが
店のメニューに加わったのは25年ほど前
評判が評判を呼び
今では土日祝日は外に行列ができ
店内に入るのが大変な日もあるらしい
週末は奥様も手伝って
お店を回しているそう
「ところで…どうしてお店の名前を
ピノキオにされたんですか?」
と聞くと恥ずかしそうに笑って
「この店はじめたときは
俺もまだ20代だったからね~
深い意味は無くてさぁ
みんなが覚えてくれたらそれでよくて
こだわりもなんもなく付けたんだよ」
店内でまるでかくれんぼをしているように
こっそり置かれたいくつかのピノキオの人形が
一緒にクスクス笑っているように見えた
心もお腹も満たされて
幸せ気分でゆる散歩を再開
と…雰囲気のいい神社が目に入った
ここは熊野町の「熊野神社」
ちょっと神様にご挨拶させていただこう
境内に入ると
カラフルなビー玉で飾られた手水舎に
小さなカラス?の置きものが数羽
なんだかこの神社…かわいいではないか
このカラスの置きもの
なんとこの神社のお守りとのこと
ごみ置き場を荒らす黒い鳥として
嫌われがちなカラスだが
家良守(カラス)=家内安全
災いを枯らす(カラス)=災難除
としてのご利益があり
また人間の愚かな行動を
八咫烏(ヤタガラス)が
取り除いてくれることで開運・幸運へ
導いてくれる…という意味もあるらしい
なんとも愛らしい神社との出会いに
ほっこりした気持ちで散歩旅の無事を祈った
川越街道やら首都高速やら
古いものなどあまりなさそうな風景だが
ゆっくり歩いてよく見てみれば
昔懐かしいモノが道端に…
裏道の軒先には
最近あまり見るコトのなくなった
節分のイワシと柊の飾りも
こういうのを見るとホッとする
わざわざ作られたレトロ文化じゃなく
昔から脈々と受け継がれて
そこに住む人の息づかいが感じられる
生きた生活文化の空気感は心地がいい
観光目的で歩く人など
ほとんどいないだろう道
住宅街の裏側に
風情のあるお寺があった
真言宗豊山派「西光院」
力強い仁王像の奥には
古い木造の本殿と整えられた庭
春には新緑と花に彩られるのだろう
表通りから見ただけでは分からないほど
中は広くて檀家さんの墓地もあり
古い古いお地蔵さまたちも…
江戸時代初期に創建されたお寺で
板橋七福神の大黒天が祀られていることは
自宅に戻って調べて知ったコト(汗笑)
さらにゆるゆる散歩を続け
たどり着いたのは「板橋交通公園」
一見フツーの公園に見えるココ
子ども達が遊びながら
交通ルールを学べるという場所
園内にはリアルな交差点や信号などもあって
三輪車や自転車デビューのちびっこにピッタリ!
本当なら足こぎのゴーカートなんかも
貸し出してくれるらしい…が…
現在は園の一部が
新型コロナの感染予防対策で閉鎖中
子ども達の声が聞こえない
静かな昼下がりの公園のベンチで
ポツンと座ってひなたぼっこをしている
小鳥の背中がちょっと寂しそうに見えた
川越街道や中山道や
江戸から地方へ向かう重要路があるからか
板橋は寺社やお地蔵様、庚申塚が多い
川越街道から近い
「大山福地蔵尊」もそのひとつ
道端にある小さな目立たない祠だが
とても綺麗に手入れがされている
よほどご利益があるようで
「参拝のために路駐をしないように」と
たくさんの注意書きも…
今から150年前にこの地に実在した
「おふくさん」という行者が
地域の人々の病気や悩みを癒していたそうで
おふくさんが亡くなった後に人々が
お地蔵様としてお祀りしたそうな…
現在この祠のすぐ隣では
大山地区の再開発に伴って
大きなタワーマンションの建設中
カンカンと響く工事の音と地響き
いずれ高くそびえるマンションを眺めて
おふくさんは何を思うんだろう?
時代や町がどんなに変化しても
昔から地域を守ってくれている
小さなお地蔵様を大切にする気持ち
そこに目を向ける心の余裕は忘れたくない
そんなことを思いながら
今回のゆる散歩旅最後の目的地へ…
東武東上線の線路を渡った目の前
「東京都健康長寿医療センター」
読んでそのままその名の通り
高齢者専門の医療施設
実はココ
新しい1万円札の顔となる重要人物に
深く関わりのある場所なのだ
近代日本経済の父「渋沢栄一」
この医療施設の施設内に
大きな大きな渋沢栄一の銅像がある
な~ぜ~???
健康長寿医療センターが建てられているのは
かつて「養育院」があった場所
ヨウイクイン???
養育院は明治維新後
江戸経済が崩壊したことで急増した
生活困窮者の収容保護施設
都内を何ヵ所か移転した養育院が
関東大震災後最終的に落ち着いたのが
板橋のここ大山
渋沢栄一はこの養育院の事業に深く関わり
亡くなるまで50年以上にわたって
養育院長として活躍していたのだ
開設当初は
街にあふれる孤児や浮浪児、貧しい老人に
医療や教育を提供する施設として
太平洋戦争では空襲の被害に遭いながらも
事業を再開して多くの戦災孤児の収容をし
東京の復興後は高齢者と知的障害者の
福祉施設として利用されていた
養育院は1999年末に廃止され
現在は健康長寿医療センターとなっている
明治以降の日本の経済基盤を支えた
渋沢栄一が晩年まで活躍していた場所が
実は自分のすぐそばにあることを
この散歩旅をすることで発見できた
ちょっと賢くなった気分???
渋沢栄一…
小柄なおじいちゃんおイメージだったが
銅像は想像以上にデカかった(笑)
それにしてもずいぶん歩いた気がする…
(万歩計を見れば11㎞・15,000歩(笑)
大山のゆる散歩旅もそろそろ終盤だ
ハッピーロードと線路を挟んで反対側
飲食店で賑わう遊座大山商店街から
スタート地点の大山駅へ
さて…今夜のおかずを買って帰ろうか!
ハッピーロードの入口近くにある
「渡辺鮮魚」さんは
新鮮なお刺身が手ごろな価格で人気
マグロの赤身とタイの盛り合わせ
それに真アジのお刺身を買い
お好み焼きや甘味もやってる
お茶屋さん「大山園」さんで
大学芋の小さいパックをひとつ
さらに
駅前の「丸十製パン」さんで
翌日の朝のパンを買い…
これで今晩と明日の朝は万全だ(笑)
見れば見るほど欲しくなる
食材やらお総菜がいっぱいの大山の商店街
財布のひもを緩めると危険キケン(笑)
コーヒーショップ
「ピノキオ」のマスターが言っていた
「大山の町はこれから変わるよ~
なんたって30階以上高いタワマンが建つんだよ
でも、ウチの店は変わらないからさ
また食べにおいでよ…混まない平日にね」
…また来よう
あの物語に出てきそうな
2段重ねの正統派ホットケーキを食べに
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