フリーマントルの海と娘の笑顔
子どもの学年が上がり
夫の仕事の立場が変わり
それに従って減ったのは家族旅行
娘がひとり暮らしをはじめて
この家を出ていってしまったから
この先は出かけたとしても夫とふたり旅か?
はたまた
夫を置き去りに友人との旅になるか?(笑)
かつての家族旅行をふと思い出すとき
必ず目に浮かぶ写真
娘が8か月のときに行った
西オーストラリア・フリーマントルでの1枚
真っ青な空とコバルトブルーの海
そこで嬉しそうに空を見上げて
肩車してもらってる娘…
何年たっても、何度見返しても
私はこの笑顔に元気をもらってる
当時、夫の仕事の都合で
インドネシアのジャカルタに住んでいた
娘が生まれてはじめての長距離旅行
万が一、娘が旅先で熱を出したときのために
ホテルは医療機関の近くがいいよね?
飛行機の中でぐずったらどうする???
常夏のインドネシアから行く
真冬のオーストラリア
…この子の着る物はどうしたらいい?
夫婦ふたりで行くのとは違った
ちょっとした緊張感をもって準備した旅行
そんな両親の思いをよそに
娘はずっとごきげんでニコニコ顔
パースを拠点に1週間の滞在中
1泊で行ったのがフリーマントルだった
インドネシアとは違った海の色…空の色
久しぶりに味わう冷たい冬の空気
深呼吸…
…なんて気持ちいいんだろう
写真はその時に撮ったもの
雲ひとつない真っ青な空の下
ピンクのトレーナーが映える
肩車をしてもらってごきげんな娘は
映えてきて間もない白い前歯をちょっと見せて
嬉しそうに空を見上げていた
5月にスハルト政権が崩壊…
大規模なデモや暴動が起こって
緊張感が抜けきっていないインドネシアから
飛行機でほんの3時間飛ぶだけで
こんなにも世界が違うなんて…
公共の乗り物や徒歩で街歩きができる
その自由な時間がとても幸せに感じた
親たちのそんな解放感を
幼い娘も感じ取っていたのかもしれない
フリーマントルは時間の流れもゆっくり
海辺でフィッシュアンドチップスを食べたり
オープンエアのカフェでカプチーノを飲んだり
色とりどりの新鮮な野菜や果物が並ぶ
街のマーケットにも立ち寄った
そのマーケットでひときわ目を引いた
カラフルなコットンのぬいぐるみ屋さん
娘を喜ばせようとお店に近寄り
かわいい動物のぬいぐるみを眺めていると
お店の人が声をかけてきた
「いらっしゃい!どこから来たの?」
自分たちが日本人であること
今はインドネシアに住んでいて
旅行でオーストラリアに来ていること
たわいもない会話をしていると…
肩のあたりでジュッパジュッパという音!?
腕に抱いている娘を見ると
私の後ろにぶら下げられていた
小さなネズミのぬいぐるみの細いシッポを
よだれを垂らしながらしゃぶっている!!!
すでにネズミの着ている洋服も
娘のよだれでシットリ…
「うわ~っ!ごめんなさい!
このネズミ買います!!!」
思いがけず
フリーマントルのマーケットで
想い出に残るおみやげを買うことになった(笑)
このネズミは今でも大切なウチの家族
本棚の定位置にちょこんと座っている
そういえば…
オーストラリアでは子どもを褒めるときに
「ゴージャス!」という表現をよく使うらしく
どこを歩いていても
ベビーカーを覗く人たちが
ニッコリ笑って「ゴージャス!」と
娘に声をかけてくれていた
最初は「こんなお地蔵様みたいな顔が
ゴージャス(豪華)ってどういうこと?」
って思っていたけれど意味を知って納得…
…が
ある場所でベビーカーの娘をのぞき込んで
「ゴージャス!」といった老婦人の表情が
なんとも笑いをこらえている???
ベビーカーの娘を見てみると
靴下を片手に持った娘が
もう片方の手で自分の脚を持って
思いっきり口に入れて舐めていた(汗)
…ゴージャスというか豪快というか…
そんな娘は今年もうすぐ24歳
そうか…あの旅は23年も前のコト
当然のことながら娘の中に
オーストラリアの旅の記憶は
まったく残っていない
いつかまた娘と一緒に
あのフリーマントルの
コバルトブルーの空と海を見に行こう
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