見出し画像

ひつじサミット尾州2022前夜祭 ②ファクトリーブランドが高める産地の自立心

※written by 三星毛糸株式会社 未来創造室 杉山修治さん

繊維や生地の一大産地である尾州ですが、取引先が商社やメーカーが中心であることから、一般的な知名度が高いとは決して言えません。このため最近では、消費者と直接つながろうとファクトリーブランドとして独自商品を開発、販売する動きが各地で広がっています。

2番目のセッション「ファクトリーブランドが高める産地の自立心」では、ファクトリーブランドも多く扱っている応援購入サービス、Makuake共同創業者/取締役の坊垣佳奈さんと、実際にMakuakeでプロジェクトを展開しているモリリンの山川僚介さん、ひつじサミット尾州共同代表の伴染工の伴さんにファクトリーブランドに取り組む意義などについて語っていただきました。モデレーターはラグーンの淺野一平さんが務めます。


◆目次
・「Makuake」が生み出す、作り手と消費者をつなぐ場
 ①Makuake共同創業者/取締役 坊垣さん
 ②モリリン 山川さん
・他産地の事例をご紹介します
・ひつじサミット尾州をきっかけに新しいファクトリーブランドも生まれました
・終わりに


◆「Makuake」が生み出す、作り手と消費者をつなぐ場

誰がどんな思いを持って、どうやって作られたのか?
自分が身につけたり、口にする商品の事なのに、知らない事が多い。
これだけ情報にあふれた世の中なので、もっと知れるようにした方がいいな、と思います。
そう語るMakuake共同創業/取締役者の坊垣さんからのメッセージからご紹介します。

◆Makuake 坊垣さん

(坊垣さん)
私たちは、自分たちが運営しているプラットフォーム「Makuake」を「応援購入サービス」と呼んでいます。

日本でのクラウドファンディングは、東日本大震災後に広がったこともあって、当初は寄付を募るサイトとして使われてきました。もしくは、企業などの資金調達のツールと見られることもあります。しかし、私たちはMakuakeをEコマースの1種だと考えています。

Eコマースと言ってもAmazonなどとは違い、購入したらすぐに商品が届くわけではありません。
Makuakeは「今は世の中にない商品をデビューさせる場」、かつ「消費者とつなぐ場」だと思っています。新たな商品を作り出そうとしている人と消費者をつなぐ場です。

そこでは、製品が作られる背景や工程、産地、作り手の思い、こだわりなどが語られます。
消費者はそうしたことを知り、より深く理解したうえで「応援する気持ち」で商品を購入します。こうしたことが、産地の活性化にもつながっていくのではないかと考えています。

そのためにMakuakeには、キュレーターという独自の職業があります。
商品の魅力を引き出し、どのように発信していくか、というポジションです。
全国にいるこのキュレーターはできるだけ現場に入り、その地域の食や文化を知る事で、うわべだけではなく深いところまで伝えていけるようにサポートしています。

実際に、Makuakeを利用してBtoCに挑戦するというメーカーや商社が増えています。そうした企業に聞くと、消費者と直接つながることがBtoBの取り引きにも生かされるとおっしゃるんですね。消費者の生の声に触れることは非常に良い経験となるようです。

商品を買うときに、その商品は誰が、どのように作ったのかというところまで考える消費者はあまりいません。しかし、作り手の思いが伝われば、それはモノづくりへの応援につながっていきます。

今はインターネットによって、人と人がつながりやすく、個人の思いを発信しやすい時代です。ネットを介していると実感が湧かないかもしれませんが、Eコマースは消費者と直接つながるダイレクトツールです。ぜひ、怖がらずに消費者とつながってほしいと思います。

続いては、Makuakeで既にチャレンジを行っているモリリン株式会社 山川さんのメッセージをお伝えします。

◆モリリン山川さん

(山川さん)
弊社は繊維商社でアパレルから繊維全般を扱い、私が所属している部署では布団やラグなどのインテリア雑貨などを扱っています。取引先は主に量販店やテレビ通販で、典型的なBtoBの会社でした。しかし、BtoCにも力を入れていこうということで、2020年からMakuakeでプロジェクトを始め、これまで8つのプロジェクトに取り組んできました。その中で昨年、薄くても温かい宇宙服素材を使った掛け布団を販売したところ、1億円を超える応援購入がありました。

それまでBtoCに取り組むには、在庫を持たなくてはならないなどのハードルがあったのですが、応援購入で製造後にお届けするという形にすることで、多くの課題をクリアできました。
今まで消費者へ直接お届けするという事をやってきていなかったのですが、そういう所のハードルを下げて切り開けたのは非常に良かったと思います。

またプロジェクトを通してふれあう事で、直接お客さまの声を聞かせてもらう事ができました。生の声を聞くことで、お客さまから教えてもらえる事が多くあります。

現在はコスモダウンの後継タイプをMakuakeで展開しています。
去年以上のペースで応援いただけていますので、ぜひ皆さんも「コスモダウン」で検索してみてください。
*2022年11月29日をもってプロジェクトは終了しています。今回も応援購入額は1億円を超えていました!


◆他産地の事例をご紹介します

・岐阜県関市

地元や近くのエリアで見ていると「関の刃物」は印象深く有名と思えるのですが、全国的に見ると実は知られておらず、よく見たら関の刃物だった、という状態です。

刃物のエリアで作られるものは、ハサミの刃などの分業や下請けになる部分が多く、最終製品を作っている会社があまりないため全国的に名前が知られる事がないという現状があります。

関の刃物を知ってもらう、技術を知ってもらうためには、最終製品を世に出す必要がありました。
その時、2000人以上に応援された「Key-Quest」という鍵型便利ツールが世間で話題になった事で、同じ関の会社が「この会社ができるなら私もできるのでは!」と勇気をもらい続々と製品を展開していく流れが生まれました。
その後の「関の刃物」という共通ロゴを作って認知度を高めていく事で、「1社が一瞬知られた」という点の状況から「関の刃物」という面が訴求され、高いブランド力を得ることになりました。

このことで行政からの注目も集まり、関市主催の「工場参観日」でもmakuakeを活用し、集客を行うという流れも生まれています。

・大阪府八尾市

このエリアは、「繊維、ウール」で繋がっている尾州とは異なり色々な産業で面白い事業者が集まっています。
裏を返せばブランディングがしづらいという状態の中で、だからこそみんなでこぞって見せる場を作るために「みせるばやお」という地域支援団体を作り、皆で八尾を盛り上げています。
同じ産業ではなくても同じ地域に根差した共通意識があることから、先輩Makuake経験者
がこれから活用する人にアドバイスできる場にもなっています。

・新潟県燕三条市

元々地域ブランドが強い地域ですが、Makuakeを通して「今まで部品を作っていたが、初めてカスタマー向けの製品を作ってみた」という会社がたくさん生まれ、名前が世に出る会社も多く出てきています。
本間製作所さんはまさにその事例で、Makuakeのユーザーにアンケートを取り一番票が入ったアイテムを作り販売していくという「ユーザー巻き込み型」の商品開発も行っています。

・広島県広島市

地域を良く知るBEAMSさんのスタッフと一緒に地域の会社と新しいものづくりをしていく、という企画を連携して行っており、Makuakeは最終の見せ方を担っています。
半年ほどで16以上のプロジェクトを展開しており、知見やノウハウを持つブランド企業が技術力の高いメーカーと共同で商品企画を行う事で、自分たちでは気づかなかった価値を発見し、商品を生み出しています。

それぞれの地域から出る目に見えない反響も面白く、採用がやりやすくなる、会社の中で新しい企画が出るようになる等のほか、「地元の企業が結構頑張っている」という印象を与えられている事でUターンで戻ってくる若者も徐々に増えているそうです。


◆ひつじサミット尾州をきっかけに新しいファクトリーブランドも生まれました

このセッションの中で、ひつじサミット尾州をきっかけに生まれたWITHANKの応援購入もスタートしました。

『「ふわっさら!」な心地よさを、一日中。ウールと和紙が出会ってできた新感覚ソックス』というタイトルで19時過ぎに公開されたこのプロジェクトは、会場やオンライン配信視聴者の力添えによってひつじサミット尾州前夜祭が終わる前に達成率100%に到達。
最終的には達成率303%まで育ち、受付を終了しています。

ひつじサミット尾州2022の共同代表であり、WITHANKのブランドオーナーでもある伴染工の伴さんのメッセージをご紹介します。

◆伴染工 伴さん

(伴さん)
伴染工は元々糸に色を染めるかすり染めの会社ですが、ひつじサミット尾州をきっかけに
「WITHANK(ウィズハンク)」というファクトリーブランドを立ち上げ、第一弾商品として靴下の販売を開始しました。
今までECサイトやポップアップストアでの販売を行ってきましたが、今回Makuakeでウールと和紙を使った尾州の技術者が協力し合って開発した靴下を販売することになりました。

糸を作る会社があり、その糸を染める会社があり、染まった糸を特殊な技術で巻く会社があり、糸を靴下に仕上げる会社がある。
今回のプロジェクトタイトルには、「尾州産地でものづくりに携わっている技術者が持つ技術のストーリーをこの靴下1足で感じてもらいたい」という想いが込められています。

当日放送中に目標額を達成!


(伴さん)
尾州は衣服の素材となる糸や生地の産地ですが、消費者に直接届く最終商品はほとんど作られておらず、どうしても消費者との距離が遠いという現状があったと思います。
その距離を埋めるために考えたひとつの手段として「ひつじサミット尾州」がありますが、もう一つ企業ごとになにかアプローチできるものは無いか…と考えた中で、直接使い手にアプローチしようとMakuakeで商品を販売することにしたんです。


◆終わりに

セッションの最後に、坊垣さんからメッセージをいただきました。

(坊垣さん)
進歩には外部との接触も重要です。私たちはMakuake を通じて消費者と直接つながることで発展を遂げた会社を数多く見てきました。この、ひつじサミットも、新しい視点を取り入れるきっかけになると思います。応援しています。

着れる、食べれる、楽しめる! ひつじと紡ぐサステナブル・エンターテイメント、「ひつじサミット尾州」。
2021年に尾州一帯を巻き込んで始まったこの産業観光イベントは、2023年も10月28日(土)29日(日)の2日間で開催を予定しています。

・今年はどんな工場が見学できるのか?
・次回の見どころは?
・前夜祭後夜祭は今年も開催する?

などなど、事前情報は「ひつじサミット尾州公式LINE」でご案内いたします。
お友達登録はこちらのQRコードからどうぞ!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?