そろばん付き電卓に見るイノベーションのジレンマ

みなさん、こんにちは。
いつか自分も「イノベーション」を起こしたい。
そんな思いで、アイデアの発想方法を日々勉強中です。
そんな私が最近読んだ本の中で、面白い話を見つけたのでシェアします。


今回参考にした書籍は、内田 和成さんの「イノベーションの競争戦略: 優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?」です。本書は、「イノベーションとはいかに顧客の行動変容に至るかの競争であり、顧客の価値観や行動を変え、次世代の社会の常識を創ることで、自らがゲームチェンジャーとして新しい市場やビジネスモデルを創造すること」として、イノベーションの成功・失敗事例を多数取り上げて分析しています。

イノベーションは技術革新だけでは起こらない

どんなに優れた技術が開発されたとしても、それが世の中に浸透するまでには時間がかかります。なぜなら、「人の行動のほとんどは、長い年月をかけて習慣化されているから。無意識に行われている行動を変容することは、人にとって大きなストレスになるため、なかなか習慣は変わらない」から。
本書では、「電卓」を例にあげて、その理由を説明しています。

スマートフォンの登場で、その存在感がやや薄くなってきた感もある電卓ですが、「特殊な技術なしに、誰でもスピーディーに計算できるという、圧倒的に新しい価値を創造した商品であり 、顧客であるオフィスワーカーに、そろばんを習得しなくなるという行動変容を起こした」イノベーションの一つになります。
当時は電卓レベルの計算スピードを出すために、わざわざそろばんを習得していたんですね。今流行りのプログラミングもいずれそうなるかも。
スマートフォンの登場で、電卓がその存在感が薄れてしまったように、電卓の登場で、そろばんが存在感を無くしてしまいました。
ですが、1972年のパーソナル電卓の発売当時、「電卓という便利なものができたらしい。じゃあもうそろばんは必要ないね。」と一気に世代交代が起きたわけでないようです。

そろばん付き電卓「ソロカル」登場の背景

1978年にシャープから発売された、そろばん付き電卓ソロカル。
写真を見てみましたが、本当に電卓にそろばんがついてます。(笑)
電卓があるのになぜ、わざわざ商品を大きくしてまでそろばんをくっつけたのか?
「人々の電卓に対する信頼が完全には醸成されていなかったため、本当に合っているのか、そろばんで検算するニーズもあった」そうです。

なるほど、これは面白い話だと思いました。
登場したばかりの電卓は、当時主流だったそろばんほどの信頼をまだ勝ち得ていなかった。そのため、そろばんと電卓のいいとこ取りのような商品を作って、弱点を補完したということですね。
このような事例は現在にも見られます。たとえば、電子印鑑です。

新型コロナ感染拡大によって、多くの会社がビジネスプロセスをデジタル化した。電子ファイルに記載された内容の確認、決裁は、本人性と改ざん不可能性さえ担保されていれば、画面のボタンの押下で十分である。
にもかかわらず、これまで使い慣れていた印鑑をデジタル化した、電子印鑑を用いている例などは、まさにそろばん付き電卓と同じである、と言える。これらの例のように、習慣化された行動をガラッと変えるのは難しい。

イノベーションの競争戦略: 優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?

こう見てみると、「画期的なアイデア」を考えても、商品化するだけではすぐにヒットはしないことがわかります。人々の行動変容が起きるまでの段階に合わせて商品のデザインや位置づけを徐々に変えていくほうが良さそうですね。

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