トップをねらえ!がシンエヴァの予習になる理由がわかっちゃった

※この記事はネタバレを含みます

自分が勝手に決めた「オリンピック・パラリンピック開催中に何か観よう期間」でオッドタクシーを観た後に何を観るかは決めてた。それは2004~2006年GAINAX制作のOVA(オリジナルビデオアニメ)「トップをねらえ2!」。原案・監督はシンエヴァでも監督を務めた鶴巻和哉氏。なんでトップをねらえ2!(以下トップ2)かと言うと「トップ2を見ておけばシンエヴァの予習になる」という話を聞いたから。もうすでにシンエヴァは4回観てしまった後なのだが、その話を聞いて言うが早いが観てみようとなった次第。つい昨日(8/10)に全6話を見終えたので何がどうシンエヴァとリンクするのかが分かった気がしたのでそれを作品を観た感想とともにここに記しておきたい。

〇衝撃のSF感動作!

ラストは普通に感動してしまった。はじめ、宇宙・太陽系を舞台にした明るいSF作品化と思いきや3話のチコの葛藤。4話のシリアスな展開。物語が進むにつれ徐々に明らかになる謎。5話から6話にかけての人類の存亡をかけた最終決戦。人類は母なる地球を使ってブラックホールを取り込んだ宇宙怪獣をせん滅しようとしていた。そこに再び現れたノノ。ノノは憧れた地球を守り、あえて自身の力で宇宙怪獣の対抗する。そしてその純粋なまでの思いのまま進むノノと、素直になり切れなかったラルク。トップレスのトップになると決めていた。いつか地球に行くと約束をしていた。しかし叶わなかった。ノノ自身が太陽系絶対防衛線であるバスターマシン7号であるがゆえに。最後、ブラックホール・エグゼリオに亀裂が入り無限大のエネルギーが噴出するところを自身の縮退炉を使ってブラックホールを作り、それをぶつけて消滅させた(という解釈でいいよね?)。同時にノノ自身も消滅することになった。結局ノノの夢は叶うこともなく、ラルクもノノに関わる全ての人もノノとその後を過ごすことは叶わなかった。しかし彼女が憧れたあの人が10年後のある日の夜に現れる。遥か昔、ノノと同じように宇宙怪獣と戦い、人類を守り切った、ノノが憧れる「ノノリリ」が1万2000年の時を通過して再び太陽系に戻ってくるのだ。
ラルクはノノリリに会ったその時にきっとこう言うだろう。「あなたに憧れた1人の女性が1万2000年前のあなたのように人類を救いました」と。
おっと、これは僕の妄想です(笑) 作中では解明されなかった謎が残ったままだが、それを「まあその辺はいいかな」と思えるくらいにラストは良かったと思う。トップ2は純粋なSF作品であり、純粋なSF感動作と言っていいだろう。

〇「2」だけではなく前作「トップをねらえ!」から見ないと真の感動を味わえない

このトップ2だけを観てもじゅうぶんに作品を楽しめるのだが、しかしながらこの感動は前作「トップをねらえ!」を観ていればより一層深く大きなものになる。ディスヌフの頭部に隠されたコックピットと、そこに用意されていた戦闘服のデザイン。ノノ、バスターマシン7号のキック技。ノノが憧れるノノリリとは誰のことなのか。1万年前の遥か昔にいったい何があったのか。それもこれも前作を観ていればわかるのである。そしてそれを知っていることで感動はより大きなものになる。トップ2だけしか見ていない人はぜひ前作「トップをねらえ!」をご覧いただきたい。

〇トップレスの謎、そして人類を狙う宇宙怪獣

最終話のラストを観た時は大きな感動に包まれる。一瞬は。すぐさま冷静になったのも事実。ここがまたこの作品の凄いところなのだが。
「トップレスが変動重力源になり得るかもしれない」という懸念が残っている。変動重力源≒宇宙怪獣であるわけなのでこれが正しければトップレスは未来の宇宙怪獣ということになる。もしかしたらタイタンの変動重力源も数千年前のトップレスの慣れの果てが宇宙怪獣に変化していたものなのかもしれない。宇宙怪獣はどの程度かはわからないが知能や意志があるように見える。トップレスはエキゾチックマニューバを展開している際に「頭がからっぽ」状態になるという(Wikipediaより)。その能力を開放している状態は「意識はうっすらありつつ強大な力を使っている」と言えるか。なんとなくその姿は宇宙怪獣にも見えなくない。
宇宙怪獣はなぜ人類を狙うのか。ニコラや宇宙軍のAIの参謀は「トップレスを狙っている」的なことを言ってたが、前作ではトップレスはいないのに人類に攻撃を仕掛けてきたのでこの予想は却下。宇宙怪獣はそいつがトップレスであるなしに関わらず、理由はわからないが人類すべてを敵と認識しているとみていいだろう。
エグゼリオの宇宙怪獣を倒して最大の危機を免れた人類に平和が訪れた。5話では投薬することでトップレスの力を無くすことができる的な発言もあったし、宇宙怪獣がトップレスを狙っているという認識のままならすべてのトップレスを投薬によって解放することもできるだろう。だがまた新たな宇宙怪獣が出てきたときどうするのか。縮退炉は遥か昔に封印された失われた技術であり、バスターマシン7号もこの世にいない。結局トップレスがいなければ宇宙怪獣に対応できない。
だがトップレスをそのまま存続…生き永らえさせても、彼らが未来の宇宙怪獣になる可能性がある。トップレスがいなければ宇宙怪獣にやられる。だがそのトップレスは宇宙怪獣となりかねない。人類はこのジレンマを抱えたままなのだ。宇宙怪獣を倒すトップレスが存在し、別の人類のトップレスが宇宙怪獣となりまた別の人類を襲う…。太陽系の外、銀河系の外の大宇宙ではこんなことが幾度となく繰り返されているのだろう。
「実は問題を抱えたままであり、感動のラストもその平和は泡沫なのかもしれない」という、物語的には終わったが、作品の描かれていない未来を示唆したり受け取り手に後味を残す作品の終わらせ方は、まったくもってSF作品そのものだ。このラストはトップ2がきちんとしたSF作品であるということを示すのと同時に、きちんとしたSFにしようという作り手の意志がひしひしと感じられる部分である。

〇で、どの辺が「シンエヴァ」の予習になるのか

とうことなのだが、これは「シンエヴァ」ではなく「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の予習と言った方が正しい。実はエヴァTVシリーズを含めたいわゆる「旧劇」「新ヱヴァンゲリヲン劇場版」と「トップをねらえ!」「トップをねらえ2!」は同じような構造になっているのだ。
「トップをねらえ!」は主人公タカヤ・ノリコはロボットアニメオタクで、1話では「ロボ立て伏せ」などのお笑い要素も含み、「お姉さま」ことアマノ・カズミも出てくる。その後2話で現れる天才宇宙パイロットのユング・フロイト。3話で帰らぬ仲間となったスミス・トーレン。4話でついに宇宙怪獣せん滅のために開発された高機動宇宙戦艦「ガンバスター」が登場。5、6話で人類の運命を左右する決死の作戦が決行される。
…とここまで見てわかる通り、はじめのお笑い要素、お姉さま、仲間との出会いと別れ、最後の決戦など、「トップをねらえ!」の各話と「トップをねらえ2!」の各話がそれぞれ同じような設定・ストーリー展開になっており、あたかもリンクしているかのようなのだ。
エヴァはいわゆる新劇しか見てない人でもSNSやいろんな考察で「旧と新では世界線が違う」というのを見た・聞いたと思う。トップをねらえ!1と2は過去と未来の話で新旧のエヴァの別の世界線とは違いがあるが、どちらも結局「多少の違いがあるが設定やストーリーはほぼ同じ」という点で同じ。つまりトップをねらえ!1と2の設定とストーリー構成の類似性を知っていればエヴァの新旧を見比べた時のすり合わせも容易にできてしまうということなのだ。ここが「トップをねらえ!がシン(新)エヴァの予習になる」ポイントである。
このほかトップをねらえ2!にはエヴァを連想させる点がいくつかある。
・宇宙怪獣≒使徒
・バスターマシン≒エヴァ
・トップレス≒チルドレン
宇宙怪獣は人類を狙っていてことあるごとに人類に攻撃を仕掛けてくる。使徒の狙いはネルフ最深のセントラルドグマのアダムで、そこでサードインパクトを起こすことだが、エヴァが抵抗してくるのでやっぱりせん滅しようとする(時々取り込んだりもする)。
トップ2におけるバスターマシンはどうも自身の意志を持っているようだ(AI?)。さらに4話で大破したトランシスや6話でラルクがディスヌフの内部を歩くシーンを見るとまるで人間の筋肉や内臓のような内部構造が確認できる。この辺も使徒にATフィールドを張り、やはり内臓のようなものが存在するエヴァと似てる。
トップレスは設定では20歳を過ぎるとバスターマシンを操れなくなる「あがり」を迎えてしまう。10代以下、つまり「子供」しかトップレスになれない。エヴァの搭乗者もどれも10代の「チルドレン」だ。この点も共通する。
そして何よりトップレスとチルドレンが酷似するのはその境遇だ。
作中でトップレスは宇宙軍に虐げられる存在でもある。2話に出てくる元トップレスのハトリがそうだ。そしてトップレス自身も「あがり」が来るのを恐れる。ニコラが「いま自分が」、カシオが「かつて自分がそうだった」と、トップレスというしがらみに囚われる。
エヴァも同じだ。シンジはエヴァのパイロットあるが故に妹が酷い目に遭ったとトウジに殴られる。使徒という人類の敵と戦っているにも関わらず。チルドレンもまた思い悩む。シンジはエヴァに乗ることに常に葛藤し、アスカは自身がチルドレンであることにしか価値がないとまで言う。そしてつきまとうエヴァの呪縛。エヴァのパイロットもまた自身がチルドレンであることに囚われ続ける。
さらにトップ2の6話でカシオは助けに来たラルクにこう言う「トップレスなんかなくていいんだ」。果たしてエグゼリオの宇宙怪獣を倒した後にトップレスが居なくなったかはわからない。しかし存続かどうかの議論はなされたはずだ。シンエヴァもシンジが「エヴァに乗らなくていい世界を作る」と言って最後は全てのチルドレンが「エヴァに乗らなくてはいけない」というしがらみから解き放たれる。トップレスのトップレスであることの呪縛からの解放と、チルドレンのエヴァの呪縛からの解放。ここもまるでそっくり。
さらにさらにトップ1→2という流れで作品を観ると最後に大きな感動が生まれるところも同じだ。エヴァも旧エヴァを知っていればこそ新劇…シンエヴァの最後の感動が大きくなる。物語のつなぎ方・まとめ方・こみあげる感情や思いという点においても共通点があるのだ。
ということで上に挙げたこれらのいくつもの共通点で以て「トップをねらえ!が新ヱヴァンゲリヲン劇場版の予習になる」とうことなのである。

●8月13日からシンエヴァのサブスク配信が始まる

さてこの記事が上がった数時間後にはいよいよ「シン・エヴァンゲリオン劇場版」がアマゾンプライムビデオで配信が解禁となる。この数日まるで駆け込みのように新劇・序破Qを見ている人が増えているという。ぜひその方々も序破Qだけでなく「トップをねらえ!」「トップをねらえ2!」を見てシンエヴァの予習をしてみてはいかがだろうか。きっとあの一回パッと見ただけではわからないシンがわかりやすく入ってくるはず。
さらにTVシリーズを含めた旧エヴァをリアルタイムで見ていた当時碇シンジくんと割と同世代だった自分から言わせてもらうと、新劇の4部作だけでなく必ず旧エヴァも見て欲しいという気持ちである。なぜなら旧も見ていた方が新劇がよりわかりやすくなるし、シンエヴァの最後の感動も計り知れないくらい素晴らしいものになるからだ。時間が無いから・面倒くさいからと言わずにぜひとも新劇だけでなく旧エヴァも見てもらいたい。流れとしてはTVシリーズ→旧劇→新劇がベストです。こうでないとダメです。もっというとTVシリーズ→旧劇→トップをねらえ!→トップをねらえ2!→新劇なら何も言うことはありません。よろしくお願いします(笑)

note → https://note.com/ippanjinkeiba
Twitter → https://twitter.com/ippan_jin_JP
    https://twitter.com/ippanjin_keiba
YouTube → https://t.co/AtpU6FlUNK?amp=1




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?