『汝、星のごとく』、個人的感想。
凪良ゆうさん著作、『汝、星のごとく』。とても綺麗なお話で、二十歳も半ばを過ぎる自分の心に、とても突き刺さる物語でした。
失礼ながら、存じ上げなかった方なので調べてみると、「母子家庭に育つが、小学6年の時に母親が帰ってこなくなったことにより、児童養護施設で生活するようになる。高校を1年で自主退学した後、アルバイトを掛け持ちしながら生活した。」のだとか。物語の中で、青埜櫂や井上暁海の自身の母親に対する、心情描写の解像度の高さは、もしかしたら著者ご自身の経験から書かれているのかもしれないと感じました。
高校生で味わう青春、大人になっていく中で増える荷物、抱えるものが多くなりすれ違っていく関係、繋がりがなくなっても忘れられない想い。大小はあれど、共感できる人は多いのではないでしょうか?
そういう私も、高校生時代を思い出しては、あの頃には戻れないだろうと感傷に浸ることもしばしば。
櫂と暁海は、繋がりがほぼ切れた状態から、これが最後になるだろうキッカケで、行動することができたからこそ、僅かな、けれど確かに幸せな生活を送ることができたのかなと。私は、そのキッカケを見逃してしまったのだろうなぁと、もしくは見ようとしなかったのかなと振り返るばかりです。
この作品は「自立」あるいは「モラトリアム」に対し、その周りの「環境」がどれだけ大きな影響を与えるのかをテーマの1つにしているのではないかと感じます。もしも、櫂や暁海の環境が「離婚・別居をしていない両親がいる」「悪しき伝統に縛られない価値観」「成長を支える十分なお金」のそろっているものであれば、いわゆる「普通」の成人になっていたと思います。
しかし、物語では「女性を下にみるような価値観」「経済的に苦しい家計」「ヤングケアラー」としての描写が多かったように感じます。「環境」というものは残酷で、子どもにそれを意識させることはなく、”それが普通”なのだと錯覚させてしまう。暁海もそれに悩み苦しみ、完璧に抜け出せたのは二十歳も大きく過ぎてからでしたね。
物語を読み終わり、ふと自分を振り返ってみると、やりたいことは見つかっているし、親のことは必要以上に意識しないし、経済的にもある程度余裕があるし、と考えると、暁海が手に入れたかったものを私は全て手に入れることができていると思います。それって、かなり幸せなことなのではないかと感じますね。
などど、色々と考えを巡らせてはいますが、『汝、星のごとく』、私にとっては心に強く残る作品でした。個人的には、私と年代の近い、二十代半ばから三十代前半の方々に強く刺さるのではと感じています。
みなさまも、ぜひ手に取って、物語の世界へと向かってください。読んでいるうちに、自分という存在が薄れていき、少しずつ姿を現す美しい物語に一体化していきますよ。
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