【IPO】289A ファイントゥデイホールディングスの新規上場における株価考察・初値予想
2024年11月13日、ファイントゥデイホールディングスの東証プライム市場への上場承認が公表されています。
本日はファイントゥデイホールディングスの会社概要・事業内容、IPO時のオファリング概要、目論見書記載価格の考察、初値予想について考えていきたいと思います。目論見書上で開示されている細かな情報なども勘案した株価考察もしておりますので是非最後まで読んでください。
ファイントゥデイホールディングスの会社概要・事業内容
ファイントゥデイホールディングスは、国内外で展開する複数の法人とブランドを有する純粋持株会社です。主な事業展開地域は日本、中国・香港、アジア太平洋地域の11か国・地域で、国内には埼玉県久喜市とベトナムに工場を所有し、研究開発から生産、販売に至るまで一貫したビジネスシステムを確立しています。2023年12月期の売上収益は、日本42.6%、中国・香港40.1%、APAC地域17.3%となっています。
グループの主なブランドには、髪と肌をケアする「fino」や「TSUBAKI」、高機能スキンケアを提供する「SENKA」、メンズグルーミングブランド「uno」、中国・香港市場向けの「KUYURA」、ニオイケアを中心にした「エージーデオ24」などがあります。これらのブランドは、各地域で強固なプレゼンスを築いており、fino、TSUBAKI、SENKA、KUYURAは売上収益100億円を超える規模となっています。また、その他のブランドとして、+tmr、SUPER MiLD、MA CHERIE、AQUAIR、シーブリーズなども展開されています。
ファイントゥデイホールディングスは、「素晴らしい一日を紡ぎ、豊かな人生を送れるようにする」ことを企業の存在意義とし、ヘアケア、スキンケア、ボディケアを中心に、品質の高い製品を提供しています。
詳細な事業内容についてはファイントゥデイホールディングスが提出した有価証券届出書の【事業の内容】を読むとよくわかると思いますので、ここでの説明は割愛しますがご一読いただくことをおススメします。(下記URLは有価証券届出書のうち証券情報の記載がない東証HP上の「Ⅰの部」です)
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/mklp77000000lami-att/12FineTodayHoldings-1s.pdf
また、ファイントゥデイホールディングスはファンドが株主の上場案件となります。
同社は2021年1月に、CVC Asia Pacific Limited又はその関連会社が助言する投資ファンド又は投資ビークル(以下、「CVC」という。)により設立されたパーソナルケア製品の生産・マーケティング・販売等をグループの事業とする純粋持株会社であり、事業の祖業は1959年に設立された資生堂商事株式会社を前身としています。
IPO時のオファリング概要
上場承認日 :2024年11月13日(水)
仮条件決定日 :2024年12月2日(月)
条件決定日 :2024年12月9日(月)
上場日 :2024年12月17日(火)
ファイントゥデイホールディングスは日本の投資家だけではなく、海外市場(ただし米国においては1933年米国証券法に基づくルール144Aに従った的確機関投資家に対する販売のみ)でも販売が行われます。
大きめの規模の時価総額とオファリング金額となる場合に選択する「グローバル・オファリング」と言われるIPO時のオファリング方法となります。
国内外の主幹事証券・シ団のフォーメーションは以下の通りで、計8社です。
【国内主幹事証券】
大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、UBS証券
【国内シ団】
SBI証券、楽天証券
【ジョイント・グローバル・コーディネーター】
大和証券、みずほ証券、SMBC日興証券、UBS証券
目論見書記載価格は2,150円です。
目論見書記載価格をベースとしたオファリング金額は以下のとおりです。
公募(国内+海外) :なし
国内売出し :約326.4 億円
海外売出し :約441.6億円
オーバーアロットメントによる売出し:約115.2億円
合計:約883.1億円
目論見書記載価格の考察
目論見書に記載されていた想定価格は2,150円です。
今回は目論見書記載価格を使ったフルダイリューション(希薄化の影響を与えるすべての要素について考慮した)ベースの時価総額を以下のように計算しました。
目論見書記載価格2,150円×フルダイリューション株数102,389,966株=約2,201.4億円
※フルダイリューション株数=発行済株式総数102,050,000株-自己株式0株+新株予約権339,966株+公募による新株式発行0株+オーバーアロットメントによる売出しに伴う第三者割当増資0株)
2024年12月期の業績予想は現状開示されていませんが、2024年8月8日に「2026年度までの中期経営計画策定について」をHPで公表しています。
https://www.finetoday.com/jp/news/newsrelease/2024080802/
その中で、連結売上収益の年平均成長率(目標)を約6%以上としていることから、今期の予想売上収益は前期比+6%の106,184百万円と仮定します。
また上記の中計の中では調整後連結当期利益率を2026年度には約11%以上と設定しており、2023年度実績は10%であることから、今期の予想当期利益率は11%と仮置きし、当期利益は11,680百万円と仮定します。
※公表されている中計では調整後連結当期利益率とされていますが、調整項目については上記では考慮しないこととします。
上記の予想当期利益をベースに、本ページで算出したフルダイリューション株数を用いて算出したEPS(1株当たり当期純利益)114.08円。PERは18.85倍となります。
ここで競合他社(類似会社)について検討します。
化粧品関連としては、資生堂、コーセー、花王、ポーラ・オルビス、マンダムなどがありますが、かなりPERにばらつきがあります。
原因は直近の決算発表のタイミングでの業績予想の下方修正ですが、資生堂に関しては現在PERが182倍!なのであまり参考にありません。
そのほか、コーセーも下方修正を公表しており、花王とマンダムに関しては上方修正を公表しておりますので、上記の中で唯一業績予想を維持しているポーラ・オルビスホールディングス(4927)を類似比較企業としたいと思います。
ポーラ・オルビスは時価総額が約3,100億円で、PERは25.8倍です。
IPOディスカウントを20%と仮定すると25.8×0.8=20.64倍がポーラ・オルビスから20%ディスカウントしたPERとなります。
ファイントゥデイホールディングスのEPSが114.08を算出されていますので114.08×20.64倍=2,355円と出てきます。目論見書記載価格がポーラ・オルビスから20%ディスカウントした水準よりもさらに安いということが分かります。
需要次第ではありますが、今後の投資家マーケティングの結果、IPO時の公開価格が目論見書記載価格の2,150円から上振れる可能性もあるのではないかと考えています。
ファイントゥデイホールディングスの初値予想
上場後のフェアバリューとしては予想EPS114.08円×ポーラ・オルビスのPER25.8倍≒2,943円と算出。ただし、ファンドのEXIT案件であることも考慮すると初値がいきなりこの水準まで上がることは考えにくく、初値が付いた後に徐々に株価を切り上げていく展開を予想します。
もはやただの勘になりますが目論見書記載価格2,150円に対して、公開価格が少し上振れて2,200円、初値がポーラ・オルビス対比で20%ディスカウントした2,355円と予想します。