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(事務データではなく)事務データ「処理」ごと事業企画に渡す

この記事を読んでいただきたい方

* 事業企画部門でデータを元に事業戦略を検討する(したい)人
* 事務データ処理の手順を開発している人
* 事務データ処理のための基幹システムの責任者
* 事務データ処理のための基幹システムを開発している人
* ALZETA でのデータ処理に興味を持っている人

前回は,データで柔軟にコントロール可能な事務データ処理 JOB を作成してみました.この JOB は請求管理部門で定期的に実行されて,粛々と割引額計算をこなしています.一方で,事業企画部門は売上推移や競合他社の施策をウォッチし,新しいビジネスルールの検討を繰り返さなければなりません.今回は,そういう場面で威力を発揮する ALZETA の利用例を見てみましょう.

1. 「データをください」は危ない

さて,石油元売A社の競合B社が,A社と同様の会員サービスを開始しました.割引単価の算出のやり方がかなり異なるのですが,とにかく「最大 7円割引!」というのがB社の宣伝文句です.前回ご説明したように,A社の割引単価の最大値は 5円なので,これではB社のガソリンスタンドに顧客を持っていかれる恐れがあります.

対策として割引サービスの内容を再検討することになりましたが,もちろん収支に与える影響を踏まえて検討する必要があります.現在の割引金額データを入手してシミュレーションをやるということになりますが,果たしてこのデータ(前回ご説明した JOB が出力した最終結果)で,最尤なシミュレーションが行えるでしょうか?

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おそらく,できないと思います.たとえば,(上の表にはありませんが)期間限定の特別割引ルールが適用されている会員がいたとすると,どうでしょう.株主優待はそれほど流動性がないのでこの場合無視して良いと思いますが,初年度特別ルール,クジ当選者限定ルールのような流動性の高いビジネスルールを適用してしまっている場合…このあたりを取り入れた計算にするのか,排除する計算にするのか,またその根拠は?ということを経営陣に質問された時(されそうです),答えられるでしょうか?答えられなければ,持ち帰りとなって,今度は請求管理部門にデータの位置付け,根拠,算出ロジックなどについて問い合わせをすると,請求管理部門も面倒な手間が増えて…ということになってしまいそうです.

2. データではなく,データ処理をもらう

このような心配があるので,請求管理部門から「データをもらう」のはあまり得策ではありません.もちろん,もらったデータからシミュレーションに適したレコードだけを取り出して分析を行うことは可能ですが,分析対象レコードがどうしても少なくなってしまうのと,データ分析の記事でご説明したように,データを解きほぐす手間が少なからずかかってしまうという問題があります.

ではどうするかというと,「データをもらう」のではなく「データ処理をもらう」です.

請求管理部門の user1 さんは,前回の「顧客別割引金額計算(株主優待入り)」JOB を作成して動かしています.この JOB を,ALZETA の JOB 共有機能を使用して,事業企画部門の user2 さんに共有します.この場合,JOB 共有機能の使用手順は以下のとおりです.

1) user1 さんは,前回も使用した JOB コピー機能で「コピー先フォルダ」をグループ(ALZETA の正式名称では,ロール)フォルダ(今回は "CompanyA")に指定して,コピーします

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2) すると,「JOB一覧」画面で,所属グループに "CompanyA" を指定すると,共有した JOB が表示されます

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3) user2 さんがログインして,「JOB一覧」画面で,所属グループに "CompanyA" を指定すると,同じくその JOB が表示されます(自分がコピーしたものではないので,ゴミ箱ボタンがありません)

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4) user2 さんは,JOB コピー機能で,この JOB を個人フォルダにコピーします

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5) user2 さんの個人フォルダに JOB がコピーされましたので,あとは user2 さんが好きなように JOB を操作できます(前回ご説明したように,コピーした JOB を編集しても実行しても削除しても,オリジナル JOB には全く影響がありません)

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3. 自分の目的に合わせて手を加える

さて,次は検討にあたって必要なデータを引き出していきます.まずなんと言っても,全顧客に対する割引金額が,現在トータルでいくら位になっているかを調べ,ルールの変更によってどのくらい影響を受けるかが知りたいところです.

また以降では,株主優待を無視して全顧客が標準割引に従った場合のシミュレーションをしていくことにします(もちろん他のケース設定も可能ですが,今回,担当者はそう決めました).この場合,下図赤枠のように,標準割引計算フローの「演算」(各会員への割引額が計算されるところ)から新たに「キー合計」に矢印を引き出し,全レコードについて「割引金額」を合計します.

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この合計をプレビューすると,以下の結果が得られます.全顧客の2021年3月の割引金額は,21,340,802円でした.

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では次に,今回焦点となっている「最大割引単価」のパターンを変えて適用してみましょう.この場合も前回工夫した,「データでデータ処理をコントロールする」手法が役に立っています.

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入力ファイル「割引単価設定テーブル」をダブルクリックして,シミュレーション用に作成したテーブルと挿げ替えながら,プレビューを行ってみます.

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パターンA は,利用額 80,000円以上の部分 (#5) だけ単に 5円→8円 と変更しています.
その結果,トータル割引金額は 21,340,802円 → 25,361,825円 となりました.12倍して年額にすると,約 4,800万円の増額です.

パターンB は,パターンA で飛んでしまった感のある #3,#4 の割引単価をそれぞれ 3円→4円,4円→6円 と変更してみました.
その結果,トータル割引金額は 21,340,802円 → 28,253,396円 となりました.年額でいうと,約 8,300万円の増額です.

パターンC は割引額レンジの納得性を上げつつ,トータル割引金額も抑えたいということで,金額レンジの段数を一つ減らしたものです.
その結果,トータル割引金額は 21,340,802円 → 24,574,710円となりました.年額でいうと,約 3,900万円の増額です.

まだまだいろいろパターンはあり得ると思いますが,なんとなくパターンCを選んでみたい気になりますね!(利用額 20,000円〜30,000円のユーザーだけが負の影響を受けてしまいますが…)

4. 根拠が説明できるシミュレーション

先の章では,非常に単純な観点(割引金額の合計)でシミュレーションしてみました.この他にもいろいろ検討する観点があると思います.たとえば,ルール変更によって影響を受ける顧客数などにも興味がありますが,それも ALZETA でシミュレーションが可能です(もっとも簡単なのは,各パターンで一旦全顧客の割引金額を作成してしまい,後で別の JOB でそれらを比較する,というやり方でしょう).

大事なのは,事務データについて,その出自や生成ロジックも理解した上でシミュレーションができているということです.そのために,事務データの処理 JOB を丸ごと,しかもそれをデータフローの形で「どの処理対象をどのように処理しているか」が最上にわかりやすい形で入手しています.今回の場合,通常割引金額の部分から矢印を分岐してシミュレーションをしたので「株主優待やその他期間限定割引制度は除外し,全顧客に通常割引を適用した時の実績データを元にシミュレーションしました」と,なんの不安もなく報告できると思います.

まとめ

ALZETA によって事務データ処理を有機的に事業戦略に結びつけることが可能であることをご説明しました.

「データ連携」ということがよく言われますが,「データ連携」で入手したデータというのは実に脆い,あやふやなものです.データは,その出自,加工履歴を知って初めてその性質が理解できるものです.たとえば「売上金額」という項目名を見ただけでは,それが各決済で発生した売上なのか,月単位の集計なのか,海外顧客のものであるのか,2020年のものなのか…,判断が出来ないでしょう.データの由来を知る方法として,各種文書を添付して伝承してもらうという方法があると思いますが,さて,その文書は確実にデータ加工の仕様を表現しているでしょうか?また,加工の方法にどこかのタイミングで変更が発生した場合,その変更は確実に文書に反映されているでしょうか?

ALZETA を使った JOB 共有を利用することによって,そういった不安を解消することができます.またそれで足りない場合には,自分で JOB に手を加えてデータを動かすことによってデータの性質,出自を特定していくことも可能です.


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