【条項解説】 "改良"発明に関する謎条項

ソフトウェアライセンスであればライセンス対象物のバグフィックスやバージョンアップがあることから"改良"ソフトウェアの帰属、費用負担、ライセンス条件を定めておくことが一般的である。他方、一部の契約書に未だみられる特許発明の"改良"や"改善"に関する条項は、何を意図しているのか?ソフトウェアライセンス契約の悪しきコピペ以外に実務的な意図はあるのだろうか?

経済産業省および特許庁による研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書の共同研究開発契約書v1.0(「モデル共同研究開発契約書」)は、第7条12項が次のように改良発明について規定している。

12 甲および乙は、本発明または本研究の開始以前から甲が保有する別紙●●に定める特許権に係る発明に改良、改善等がなされた場合、その旨を相手方に対して速やかに通知した上で、本条の定めを適用して当該改良、改善等に係る成果を取り扱うものとする。

→ 「改良、改善等」としているが、では例えば「改悪」した場合はどうなるのか?「等」に依拠するのか。「改良、改善等」には含まれない共同研究における別の発明がなされた場合はどうなるのか?

このように「改良、改善等」とした場合は漏れが生じ得る。このため、共同研究開発や特許ライセンス契約においては、「改良、改善等」にかかわらず、契約期間中において共同研究開発または特許ライセンスの対象製品や対象事業に係る当事者が保有することになる一切の特許権について、その帰属条件、出願条件、ライセンス条件を定めておく必要がある。 

対象とする期間については、共同研究開発の遂行期間中に限定するのか、終了後○年間の特許および特許出願も対象とすることなどが交渉のポイントとなる。


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