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変われば変わるもので

会社員の頃、一生着ることはないだろうと思っていた色が、ピンク。
ソフトで甘い色が似合わなかった。
着るのはスーツか、シンプルなデザインのワンピース。
ふわふわゆらゆらしたシルエットの服も似合わなかった。

それがどうしたことか、会社員を離脱した後の今は、スーツが似合うとは思えない。カチッとしたスタイルがまるでしっくりこない。
スーツ姿でなければならない機会もないので構わないけれど、変われば変わるもので。
ふわゆらのソフトなシルエットのものが好きになり、着る色の幅が広がった。ピンクだって抵抗なく好んで着てしまう。

会社員の頃は、ぬいぐるみや人形の類は一切、部屋に置かなかった。
掃除魔としては、ああいうものは埃を吸うので嫌だった。
たまにプレゼントにいただいたものは、ビニールの袋に入れたまま押入れの中。整理魔でもあるから要らない物が溜まっていくのも嫌で、引き取ってくれそうな人に半ば押し付けるようにもらってもらう。
おっきいキティちゃんは誰のところに行ったんだっけ?

それがどうしたことか、ある日やって来た一匹のクマちゃんが次々に仲間を呼んで、今では15匹。
すっかりクマちゃん好きになっている。

ほとんどのクマちゃんがいただきもの。
コレクターする気はないのに、いろんなクマちゃんがやって来る。

以前は、ぬいぐるみは“物”でしかなかった。
可愛くなくはない。
けれど、それらは“物”。
だからビニールの袋に入れたまま、押入れに仕舞い込んでおけたのだ。

人間、変われば変わるもので。
クマちゃん好きになってからというもの、クマちゃんを置いている店や売り場に行くと、目が合う。
たくさんの中から一匹だけ、強烈に目が合って引き寄せられる。
ビビビッ!と来る。
そうなると困ったもので、置いていけなくなる。

銀座を歩いていたら、クマちゃんワールドな店の前を通りかかった。
ウィンドーの中でクマちゃんたちがミシンをかけたりお裁縫している。

*<Cuddly Brown(カドリーブラウン 2011年に閉店)>

考える間もなく、ふらふらと店内へ。
可愛いクマちゃんがいっぱい。
でも、強烈に目が合う子はいなくて、ちょっとホッとした。
一階のフロアをひと通り見て店を出ようと思ったが、足がふらふらと二階へ続く階段へ。
二階も可愛いクマちゃんがいっぱい。
それでも強烈に目が合う子はいなくてホッとしかかったそのとき、目の前に、ウサさん。青い目のウサさん。

「ダメダメ。行こう、行こう。」

ペットショップで動物に魅入られた客のような必死の抵抗。
その場をあとに階段へ向かおうとするも、
「ほんとにいいの?」
足まかせに店内を歩く私に付いてきていた友人が後ろで言う。
振り返ると、青い目のウサさんが、遠くなってもこっちを見てる。
で、ウサさんの前へすごすごと戻って見合ってしまう。
「ダメだよ~、ダメダメ。」
「ほんとにいいの~?」
生きもののペットと違って餌がかかるわけではないが、ここのところ無駄な物は買わない体制でいるのだ。
なのに、なのに、
手に持ってるじゃないか!

連れて帰ってきた。
自分で買おうとしたら、友達がプレゼントしてくれた。

ありがとう。

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おとなしい子です。


20110806


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