この恋が運命に変わるまで~Hside~④神さま、お願いします!


突然、同じプロジェクトチームの女性に
映画の券を、しかも2枚、渡されてしまった。

これは、僕にどうしろと?

頭が混乱している僕に女性は話しかける。

これで、好きな女性を誘って行ってください。
いつもお世話になっているので、差し上げます。

いや、自分で使えばいいのに。
そう僕が言うと、

私には必要ありませんから。
そう言って、去っていった。

なんだ?なんだ?
これは一体、どうしたらいいのだ?

好きな女性。
そう言われて、パッと思いつくのは彼女の笑顔だ。

いやいやいや。
彼女を誘えるはずもない。
こんなおっさんに誘われて
若い女性が喜んで行くはずもない。

いや、よしんば、
映画に魅かれて、喜んで行ったとして
どんな対応をしたらいい?

いや、その前に、どうやって誘うんだよ。
付き合っているならまだしも
この関係で誘っていいものなのか?

いや、その前に、僕はもう恋愛はおあずけのつもりなのに。

見ているだけでいい。
ひっそりと彼女の幸せを見守ろう
そう思っているのに。

なぜ、僕を舞台にのぼらせようとするんだ。
あの人は何を考えているんだ。

いや、たまたま、余り物をくれただけだろう。

落ち着け、俺。
落ち着くんだ。

いかんいかん、冷静さをなくして
言葉遣いが悪くなってるぞ。

一人称の『僕』が『俺』になるくらいテンパっている。
頭を抱え込む僕を、周りのみんなが心配している。

やばい。
仕事どころじゃないくらい、取り乱してしまっている。

なんてものを与えられたんだ。

そうだ!自分の中で賭けをしよう。

最近、彼女は、僕が忙しいのを理解してか
さっぱり、僕の部署に顔を出さなくなっている。

もし、もしもだ!

今週中に、彼女がぼくのところに来てくれたのならば
勇気を出して誘ってみよう。

勇気が出ればの話。
うん、そう。

第一に、彼女が僕のところにやってきて
第二に、僕に誘うだけの勇気が出たらば
そしたら、誘うことにしよう。

軽くさらっと、何の意図も目的もなく
ただ、いただいたから、行かないか?
と、誘うのだ。

うん、そうしよう。

いや、もう、それにしても心臓が持つ気がしない。
なんだ、この緊張感は。

この歳になって、童貞でもあるまいし。
何をこんなに慌てふためいているのだ。

彼女に、来てほしいような、来てほしくないような。

なぜか、信じもしない神に
どっちの願いなのかわからないまま、
神さま、お願いします!と祈っていた。

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