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妊娠中の脳梗塞を乗り越えての出産

妊娠中の妻が脳梗塞で倒れてから3ヶ月半。
身籠った体で回復リハビリを頑張ってきた。そして、ようやく正規産である37週目に入った2022年1月19日。帝王切開により母子ともに無事に赤ちゃんを出産した。

1月19日の朝。
医師からは「朝一に帝王切開をします。」と言われていたので、熊本から来ている妻のお母さんと朝8:00過ぎに病院の1階で待ち合わせをし、2人で妻の入院している病棟へ向かった。

病棟前でインターフォンを鳴らし「面会に来たのでドアを開けて頂けますか」と言うと、インターフォン越しに看護師さんから「手術直前は面会出来ません」と言われる。

ええっ、前もって教えてほしかった。

仕方がないので控え室で待機する。
暫くすると看護師さんが来られ「脳梗塞の薬で血液が少しサラサラの状態なので、少し時間をおいた方が良いと医師から言われました。午後に再度血液検査をする予定です。そのかわりに今から少しだけ面会は出来ます。」と言われる。

本来面会はコロナの関係上、夫である私だけなのだが、病院側も色々と配慮してくれており、特別に義母も一緒に15分だけ妻と面会させてもらった。

面会すると、昨日まで「緊張している」と言っていた妻が今は落ち着いてる。
妻は腹を括っている様子だ。

面会後、手術が午後になった事もあり、義母と喫茶店へ行き朝食兼昼食を頂く。2人とも朝5時起きだったので、お腹がすいていたのかサンドイッチをペロリと食べる。

ただ私は椅子に座ると、年末に発症した椎間板ヘルニアのせいで左足の太ももの裏からふくらはぎの裏までが痺れて座っていられなかったので、食事中以外は、喫茶店の端で立って過ごしていた。かなり怪しい。


食事をとった後、控え室へ戻る。義母は椅子に座り、朝が早かったこともあり、うたた寝をしながら待つ。私はヘルニアで椅子に座れないので、廊下を行ったり来たり、ストレッチをしたりして待つ。時折リハビリ患者さんが横を通り、少し照れ臭い。

それにヘルニアの痛さもあるが、出産のことをあれこれ考えてしまって、落ち着かない。肝が据わっていない様子だ。

午後一になったが誰もこない。ただただ待つしかない。


午後2:15。ようやく看護師さんが来られ「これからですので、手術室へ行く際に、少し顔合わせしましょう」と言われる。手術室へ行くエレベータ前で、一瞬だけ妻と顔を合わす。

私と義母は「頑張ってね」という。妻は普段と変わらない様子で「うん」とだけ応える。

再び待ち時間、2人とも定位置に戻る。義母は椅子に座り、私は再び廊下を行ったり来たりする。
「どうか母子ともに無事でお願いします。神様。」と心の中で何回も祈りながら、廊下を行ったり来たりする。

手術は1時間ぐらいと聞いていたが、3:30になっても誰も来ないので、少し不安になる。

3:40に看護師長さんが来られ
「母子共に無事に出産できました。女の子です。
 生まれた時間は、えーっと、3時10分で、体重は2260グラムです」と言われる。

「やったー!!」とはならなかった。大きく「フゥーーッ」とだけ息を吐く。

お母さんに「よかったですね」と自分に言いきかせる様に言う。
「本当に良かったですね。」と。2人して同じような事を言っていた気がする。

看護師長さんから「面会できるのですが、旦那さんだけになります」と言われる。
お母さんは「私はここで待っていますから、行ってきてください」と、
私は「写真を沢山撮ってきます。」と言い、お母さんは「はい、お願いします。」と言う。

病室へ着くと誰もいない。
暫くすると赤ちゃんが運ばれてきた。2260グラムなので少し小さい。
でも手も足も顔もしっかり動いていて、とても可愛い。生命力を感じる。
「よく頑張ったね。えらいよ、えらいよ。」と涙声で言う。

5分後ぐらいに妻が病室へ戻ってくる。笑顔で泣いている。
私は「よく頑張ったね。えらいよ、えらいよ。」と全く同じことを言っている。
それも繰り返し同じ事を言っている。こういう時はこんな言葉しか出てこない。

昨年9月末に脳梗塞になってから、本当に辛いことばかりあった妻。
悲しくて辛い涙をこぼす日ばかりだったが、この日は幸せの涙で嬉し泣きだったと思う。

妻と私の2人で赤ちゃんを挟み「良かった、良かった」とずっと言っていた。
ただコロナにより面会時間は限られており15分ほどで面会終了となった。私は妻と赤ちゃんにさよなら言って控え室へ戻った。

お母さんに写真を見せ、写真を転送し、2人で改めて「良かったね、可愛いね」と繰り返し話した。2人とも疲れきっていたので、義母はホテルへ戻り、私も自宅へ帰った。

家へ着くと、心配してくれている方々へのメールをして風呂に入った。
長い1日だったが、母子共に無事で本当に良かった。

応援してくれた皆さん、病院の方々、神様に感謝します。ありがとうございます。

これから妻は麻痺のリハビリで回復病院へ転院し、私はワンオペ育児と、これから、まだまだ色んな事があると思う。それでもこの日の嬉しさを忘れず、楽しんで頑張っていきたいと思います。エイエイオー!

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