人間で女で妻で歌を歌う私はそれぞれの欲望があり向き合う時間が必要。

「やりたいことをやる」「なりたい自分になる」

そのために進めている諸々はなかなか大変、泣いたり困ったり考えたりしながら少しずつ進む。
大人になったのは心だけじゃなかった、体もちゃんと大人になっていて以前と少しだけ変わっている。それは数字になって現れる。

母親になりたいってずっと思っていた。今も思っている。今までの悲しみや寂しさはまだ見ぬ子のためにあるんやとそう思って生きてきた。2年前に作ったアルバムはいつ歌うのをお休みしてもいいように、悔いがないように、その思いで作った。このアルバムがあれば生きていける。

そんな私、30歳、不妊検査を受けている。
お母さんになりたいから!自分の体をちゃんと知らなあかんと調べているところ。あといくつか検査を受ければ終わり。今のところ異常はなく、少し低い数値があるけどそれは気にするほどでもないものと言われた。

血液検査もあるけど、もちろん性器に器具を入れる検査もある。今日やった卵管検査は性器から綺麗なお水を注入し卵管が詰まっていないかを見る検査だった。事前に友人から「めちゃくちゃ痛かった」と教えられていたし、インターネットで調べたら激痛やという情報もあった。実際痛かったし苦しかったしカーテンの向こうが見えへんからめちゃくちゃこわい、強ばる体、頭の中で流れるKPOP、目をつぶって早く終われと何度も祈る。
「あー、もう無理や〜〜」っていうところで「大丈夫ですかー。はい、終わりましたよ。消毒しますね。」

先生は嫌な人じゃない、とても穏やかな人で今時珍しいアナログなお医者さん。パソコン一台置いてない。「不妊症」「排卵障害」などの病名が書かれたハンコたち。壁を覆い尽くすカルテ。
この病院は産婦人科やのにピンク色じゎないし、オルゴールアレンジのBGMが鳴ってるわけでもない、女の人が読むような料理雑誌や美容雑誌が置いてあるわけでもない。区の検診のお知らせのチラシや難しいそうな本、あとウォーターサーバーがあるだけ。そこが気に入っている。

子どもの時によく見てもらった病院を思い出す。

受付の人もいつも優しくて「お大事にしてくださいねー」と柔らかい言葉をかけてくれる。卵管検査は第一の難関と言われているから、余計優しかったのかもしれない。病院を出たとき、思わず涙が出た、いつもそう、内診の後は必ず泣いてしまう。自分の意思で行っているのにやっぱりいつもこわい。自分の求めていないものが自分の中に入ってくる感覚、いつもこわい。あの台に乗って足を開くのもこわい。ただの検査やのに。

もうちょっとで終わる。

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