いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう 感想

*はじめに

最推し俳優、坂口健太郎さんが出演されていて、好きドラマ「最高の離婚」「カルテット」「まめ夫」などでおなじみの坂本裕二脚本作品とあって気になっていた「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」略称いつ恋。
2021末のTVerフェスの配信を期に一気見することができました。

噂で聞いていたとおり、主人公の置かれた環境は厳しく辛い場面もたくさんありましたが、心掴まれる場面や台詞が随所に散りばめられていて、良いドラマだったと思います。リピできないような辛いシーンもたくさんありますが、最後まで見てよかった作品でした。
自分なりに感じたことを駄文ですが、備忘用に残しておこうと思います。

*アスファルトに咲く花

いつ恋で印象的だったのが物語の最初と最後のシーンに登場したアスファルトに咲く花。音と練が心を通わせるきっかけにもなりました。
花壇で大切に育てられる花とは違って、窮屈で厳しい環境の中で咲く花。
いつ恋はそんなアスファルトに咲く花のように、厳しい環境にありながらも、不器用で、でも懸命に咲こうとする若者たちの話だったと私は感じました。

そんなわけで物語序盤は若者たちの置かれた厳しい環境にスポットがあたるので、辛い描写のオンパレードです。
ブラックな養育環境、ブラックな職場& 同僚、うまくいかない恋愛、叶わない夢…都会の冷たさなどなど。
ずるく生きようとする人たちのツケが、真っ当に生きようとする主役の2人に回ってくる。
逃げることもできず、真正面から搾取される不器用な2人を見ているのが序盤はただただ辛かったです。
いやいや、世の中こんな冷たい人ばかりじゃないよーもっと優しくてあったかいよーなんて思っちゃうのですが、それは私が花壇でハッピーに生きてきたから知らないだけかも。実際に困窮する若者っているんだろうな…そんなことを感じました。

*方言と本音

いつ恋でもう一つ印象的だったのが、登場人物が方言で話す場面。
芋煮会の小夏、会津出身だと明かした佐引さん、音と打ち解けた後の木穂子。本音を話す時、心の距離が縮まった時、方言が出るんですよね。
登場人物に地方出身者が多いドラマの設定が効果的に使われていたなぁと思いました。

「今までずっとな、あんとき見た空の話がしたかってん。誰に言っても、伝わらへん気して。伝わらへんかったらって思って、言われへんかったんやけどな。ほんまに綺麗やったんやで。わたしも、わたしもずっと曽田さんこと考えてた。同じやね。」

音が関西弁で話す相手が、朝陽でなく練だったというところも彼女の心の中に誰がいたのかを示していましたね。

*恋模様と名台詞

いつ恋は主役の音と練を中心に6人の若者の恋模様が描かれます。
↓は音と練の出会いのきっかけとなった音の亡き母からの手紙から抜粋。素敵ですよね。

きっと人が寂しいって気持ちを持っているのは誰かと出会うためなんだと思います。
時に人生は厳しいけど、恋をしてる時は忘れられる。恋をして、そしていつか、たった一人に出会えるといいいね。その人はきっとあなたの質問に答えてくれる。あなたの物語を聞いてくれる。あなたが生まれたことを喜んでくれる。

厳しい環境にありながら、同じ瞬間を美しいと思える音と練は強く惹かれ合っているのですが、お互い別の恋人がいたり、周りの恋愛模様も絡んで、なかなかうまくいかない。

小夏
「好きになってくれる人を好きになれたらいいのに。」
晴太
「それはこの世で一番難しい問題だね。」

若者たちは恋愛面でも不器用で、なんでそんなこと言っちゃうの?しちゃうの?ってもどかしく思いながら見ていました。
でも恋愛って当事者になると簡単にいかない、綺麗に丸く収まるための最適解を選べないもんだよねって。木穂子の言うとおりなんですよね。

「恋愛は不平等なの。奇数ははじかれるの。しょうがないの。」

ちなみに私は、音には練、練には音しかいないということが物語通じて揺らがずに描かれていたので、3話の夜のみちくさのあたりからずーっと2人を全力応援していました(ごめんね、朝陽…)。
最後は遠距離にはなったものの、2人の気持ちが通じ合えてよかったです。
2人のシーンで一番好きなのは8話ラスト、音と練の会話、そして告白のシーンでした。

「俺は最後までそこに居ますよ。多数決が何回あっても俺は杉原さんのところにいます」
「最近ずっと杉原さんのことを考えてました。何をしてても、ずっと杉原さんのことを考えてました」「杉原さん、好きです」

主題歌や劇中の音楽もとても繊細で美しく、胸に残るシーンが沢山ある作品でした。

*晴太について

最後に坂口さん演じる中條晴太について。
相関図によれば、

飄々として自由奔放。
何事にも本気になったことがない21歳。

坂口さんが演じた菅波や百瀬と同じく、晴太もまた「何だこの人は」から入る掴みどころのない人物。
なぜか練の部屋に入り浸り、人のカバンをくすねたり、小夏に怪しげな仕事を紹介したりする。そして時々核心をつく台詞を吐く。
彼が出てくると次は何を言い出すんだろうとヒヤヒヤさせられました。

「晴太って何?何か隠してる?」

劇中示された少ないヒントによれば、晴太は偽装夫婦の下で育ち、それに気づきながらも嘘をつきながら良い子を演じ、心を殺すうちにいつしか泣くこともなくなった寂しい男の子。
恋にも夢にも感情表現がまっすぐにできる小夏に惹かれ、誰よりも小夏のことを見ていたことで、彼女が震災で負った心の傷を癒すきっかけ(劇団まつぼっくり)を見出す。そして晴太もまた小夏によって救われる。

「晴太、私には嘘つかなくたっていいよ。っていうか、私は晴太の嘘もホントも全てまとめて信じてあげる」

9話から最終回に向けて晴太の心の氷が溶けていく様子は本当によかったです。

晴太については尺が短い分、その気持ちや背景を視聴者に想像させる表現が求められたと思うし、役を掴むのが非常に難しかったと思う。
坂口さんがきっと誰よりも晴太をわかろうとして演じたからこそ、私も掴みどころのない晴太のことを内面までもっと知りたいと思って最終回まで見届けることができた気がします。
6年前の作品だけど、この頃から役との向き合い方は変わってないんだなと坂口さんの当時のブログ(メンズノンノ)を読んで思いました。

最初はただただビジュアルに注目しまくっていましたが、このタイミングで晴太に出会えて本当によかったです!

*最後に

めっちゃ長くなってしまいました。
読みにくいしまとまってなくてすみません。
いつ恋、自分とは境遇が違いすぎて登場人物に共感は難しかったのですが、こうして沢山感じたことを残したくなる作品でした。
配信があり、この機会に見ることができて本当に良かったです。
不器用な若者たちが今日も花を咲かせられますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?