前世の約束10

1997年春。僕らは3年生になった。泉とは違うクラスだ。泉は僕と同じクラスがよかったらしいが僕は同じクラスになると常に泉の視線が気になってしまうので違うクラスになって内心ほっとしていた。未だに僕は泉に周りの友達や後輩に付き合っている事を言っていいと言われていない。だがいい加減、周りもだんだん気付いていた。そしていつものように僕は僕の家で泉を待つ。
泉 「おまたせー違うクラスになって残念だね!」
伊緒「そうだね。それよりさー周りも気付き始めてるしそろそろ俺らの事言っていいんじゃない?その方が一緒に帰れるし、周りに気使わないですむじゃん?」
泉 「そうだね。もう言おっか?」
泉はあっさりOKしてくれた。言ってみるものだ。これで学校から一緒に帰れる。
泉 「もう3年生だねー。伊緒は進路決めてる?」
進路は正直かなり迷っていた。僕の親は離婚して僕は母親と住んでいるが、父親から僕には頻繁に連絡があった。その内容は父が経営している電気の会社を次いで欲しいとの事、そのためには高校を卒業したら電気の専門学校をでて欲しいという内容だった。昔は父の事が嫌いだったので父の言葉は無視して高校を卒業したら適当に働こうと思っていた。だが泉と付き合う用になってか心が成長したせいか、僕はだんだん親のために何かしたいと思い始めたのだ。その気持ちは母に対しても同じ事だった。そこで僕は働くか進学するかをかなり迷っていた。
伊緒「進路か。泉はどうするの?」
泉 「私は短大行く。」
僕の高校の偏差値は低かったが学年で1位2位を争う泉は短大くらいなら推薦で入れる実力を持っていた。
伊緒「いいなー泉は頭いいもんな。」
泉 「まだ進路決めてないの?」
伊緒「まぁ多分、俺の頭じゃ働く事になるよ。」
泉 「働いたら今より全然会えなくなるね・・・・。」
確かにそうだ。泉と会えなくなるのは辛い。でもそんな事も言っていられない。僕らはもう3年生だ。進路も決めなくては・・・・。
泉 「部活も1学期で終わりだね。」
伊緒「そうだね。」
僕は進路よりも残りの高校生活と1学期に終わってしまう部活に力を入れる事にした。次の日いつもよりバドミントンの練習に力が入る。
拓 「気合い入ってるじゃん!」
伊緒「あーもうすぐ出来なくなるからな。」
拓 「俺、始めは女目当てで入ったけど、部活楽しかったな。でも俺もお前も結局この部   活では彼女できなかったな。」
伊緒「俺は泉と付き合ってるよ。」
拓 「はぁー!?でも何となく気付いてたよ。良かったな。」
拓にしてみれば随分大人な返答だ。僕はもっと驚く事を期待していたが。
でも泉は別にしても部活に入って良かった。
伊緒「拓ーお前は卒業したらどうすんだよ?」
拓 「俺は働くよ。」
伊緒「そうか。」
学校のほとんどの奴は就職する。これといって目標をもたない奴が集まっている。僕もその中の一人だ。僕の通っていた高校はそれが当たり前なのだ。泉のようなタイプが珍しかった。その夜、僕は自分の実力を考え真剣に進路について考えた。僕はいずれ多分、いや絶対、泉と結婚する事になるだろう。高校卒業で就職した所で泉を幸せにする事が果たして出来るだろうか?今のままでは99%出来ないだろう。このまま目標を持たずに、就職出来るところに就職し、バイトと同じ用に何も考えずに与えられた仕事だけをやっていても自分自信、長続きもしないだろう。やはり電気の専門に行こうか・・・気付けば僕は夢の中にいた。進路はまだ決まらないけど、とにかく目標がほしかった。
進路の事で悩んでいる時期、父親から連絡があった。
父親「進路どうするんだ?電気の学校行ってくれるのか?」
伊緒「今かなり迷ってる。」
父親「今仕事も沢山あってどうしてもお前の手を借りたいのだが・・・・でもお前の人生だ自分の好きなようにすればいい。」
この時この父親の言葉が僕の進路を決める決定打になったのだ。父親のために何かしたい。
泉を幸せにしたい。なにより僕自身のためにも。
伊緒「分かった。電気の学校行くよ!」
僕の進路は高校卒業したら、電気の学校に行く予定になった。予定というのは、もちろん僕自身、私立の学校に行けるお金などなかったし、いくら親のためでも親にだしてもらうのも嫌だったし、勉強して県立の学校に合格したかったからだ。当然勉強もしてない僕が今の段階で県立の学校に行ける可能性はゼロだ。勉強して県立の電気の学校へ行くという目標ができた。僕はすぐに泉に電話した。
伊緒「ようやく進路決まったよ。」
泉 「うそー何するの?」
伊緒「親父が手伝ってほしいって言ってるから電気の専門行く。」
泉 「そっかー良かったじゃん!」
伊緒「でも金ないから県立の学校行く。そのためには勉強しなきゃ。」
泉 「そっか大変だね。」
泉は僕の進路が決まって安心そうだった。翌日、早速僕はその事を担任に相談した。
担任「まさか伊緒が進学とはね。でも貴方も二年上がってから学校来るようになったし、今から頑張って勉強すれば無理じゃないわよ。」
伊緒「そう。」
担任「専門のテストは国語、数学、一般常識。倍率は4倍くらいかなー。」
伊緒「えっ!4人に一人は落ちるって事?」
担任「そう。もしよかったら一学期で部活終わりでしょ?二学期から放課後、各先生に私から頼んであげるから専門用の勉強してみる?」
伊緒「ありがとうございます。」
僕は二学期から放課後残って勉強することにした。

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