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ヤマシタ君、ソープランドに行く

僕はヤマシタ。2度目の留年が確定した大学4年生。もう二か月近く研究室に顔を出していなくって、かなり絶望的な状況。

もうなんか、どうでもいいや。

そう思ってた時に道で拾ったソープのチラシ。料金がちょうど僕の全財産とピッタシ同じ。もう運命感じちゃうよね。もちろん行きますよ。どうでもいいんだから。

入り口には笑顔のお兄さん。学生証見せてお金を払ったら、僕の左手に赤のマジックで64と書いて「ここで待ってて」ってパイプ椅子に案内してくれた。

しばらく待ってたら、奥のドアが開いて若い女の子が出てきた。

やあ、かわいいな。ソープっておばさんばっかだと思ってたから、かわいい女の子だとうれしいです。

女の子は僕の64って書かれた左手を引いて今出てきたドアのほうに歩いていく。ドアの向こうにはピンク色の廊下がずっと続いていて、トリックアートみたいな変な気分。

ピンクの廊下を手を引かれ歩いていく。壁に空いた無数の穴からは砂糖水が垂れていて、歩いているだけで甘い匂いにくらくらしてくる。

「ソープランドまでどれくらい歩くの?」

女の子に尋ねたけど返事なし。日本語通じないのかも。

半日くらい歩くと、右手がだんだんフワフワしてきて、目をやるともう泡になってた。左手に数字を書いたのは、体の右側から泡になるからかな?

結局ソープランドまで三日くらい歩いた。もう左手以外全身泡々ですよ。

ソープランドの入り口で泡々の門番に手の番号を確認してもらったら、もう左手も用なし。女の子が左手にチュッてキスして、本当に全身泡になっちゃった。

中に入るとソープキングのお出迎え。でっかい泡の塊で、泡ってよりも入道雲みたい。

「ソープランドに入りたいって?」

ソープキングが聞いてくる。

「はい」

もう人間なんてまっぴらごめん。これからは泡として生きていくんだ。

女の子がソープキングに何かを渡す。
それを見てキングが「GPA2.2じゃあ、ソープランドは厳しいね」って。

そういや受付で学生証見せたっけ、教務に成績照会したんだろうか。

奥からキングのお付きの泡が出てきて、女の子にうやうやしくシャワーヘッドを渡す。

女の子はシャワーヘッドをキュッとひねって僕にお湯をかけてきた。

お湯がかかった部分の泡がはじけて消える。やめてよもう全身泡なんだから。

でもやめてくんない。

シャワーーーーー

やめてよー。

まずは右手から、だんだん体の左側に。

ああ、消えちゃう。アワワワワワワワワワ ワ   ワ  ワ ワ        ワ。

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