日本酒は自由だ!
はじめに
日本酒は本当に美味しいし、日々を豊かにしてくれます。日本酒を気軽に、より多くの皆さんに楽しんでいただけることを願っています。季節ごとに、料理ごとに、気の向くままに、日本酒を楽しんでいただく人が1人でも増えてほしいと思います。本稿では、日本酒を季節と味わいの観点で整理してみます。なお、感想や味わいなどについては全くの主観です。これを読んで「違う」とお感じになることは自由ですしそれはむしろ本望です。季節
(1) 晩夏~秋
晩夏に稲が茶色く色づいて、秋にかけて酒米が製造されます。
(2) 晩秋
晩秋くらいから新酒が出始めます。この頃は、生酒、生原酒が酒屋さんに並び始めます。一番早いのは、新潟の五郎八、〆張鶴でしょうか (15年くらい前..最近はどうなんでしょう)。わたしにとっては、新酒は、冬の訪れを認識する恒例行事です。生酒とは、加熱殺菌していないお酒です。搾りたての牛乳を思い浮かべていただけるとわかりやすいですかね。原酒とは、搾った後、水を足していないお酒です。「原酒」とのみ表記されていると、火入れされていたり、醸造アルコールの添加がされていることはあります。火入れは、加熱殺菌ということです。火入れとは、詳細はよくわかりませんが、その作用効果は、加熱して酒の発酵を止めることなのだと思います。
(3) 冬~春
冬から春にかけては、新酒が続いて並ぶ感じでしょうか。春は、微発泡のにごり酒も目立つ気がします。にごりとは、オリが残ったものです。オリとは、「細かくなったお米や酵母などの小さい固形物」です。微発泡と言っても二酸化炭素を足すのではなく、発酵の過程で自然に炭酸が含まれるようになります。
(4) 夏
夏は、少し炭酸のある日本酒が出てきて、飲み手ののどを爽やかにしてくれる印象です。春のお酒よりは味わいは軽い気がします..
(5) 秋
そして何と言ってもわたしが待ちわびているのが秋の「ひやおろし」です。ひやおろしは、冬に搾った後、火入れ (加熱殺菌) をして夏まで寝かせたお酒です。通常、日本酒は、搾った後と、出荷前とで2回火入れされます。ひやおろしですと、搾った後に火入れした後、2回目の火入れをせず、お酒を晩夏まで寝かせます。このようにして味が乗るようです (詳細不明)。なお、搾った後火入れをせずに寝かせた後、出荷前に火入れするお酒を「生貯蔵酒」といいます。ひやおろしは本当に大好きで、暑い夏を、これを楽しみに耐えしのいでいるようなものです。
(6) その後
ひやおろしでは終わらなくて、醸造後1年経った後、更にお酒を寝かして熟成させることは珍しいことではありません。こういうお酒は、味がどんどん乗って、深みが増していきます。お燗で美味しいことが多いですね。
(7) 通年商品
上記に加えて、搾り、火入れの後、通年で回るお酒も多くあります。味わい
需要者のニーズ、蔵元の方針によるところが大きいと思いますが、日本酒の味わいは多岐にわたるかと思います。味わいは、個人の主観ですので、絶対的な尺度としてああだこうだ言うことは難しいと思います。料理との合わせ方、楽しみ方は無限の可能性があると思います。個人的に、下記のように分けられるかなぁと思っています。
(1) いわゆる「端麗辛口」
新潟等、北陸で生産されるお酒は「端麗辛口」との括りで表現されることもあるようですね。「端麗辛口」と言われると、「香りはほどほど、味も強烈ではないけれども、お米の味がほのかにする」という印象です。「辛い」といっても辛子や山葵のように辛いわけではありません。「甘くない」と表現した方がしっくりきます。甘く感じるお酒は明らかにありますが、一般的な意味での辛さを感じるお酒は無いように思います。自分の経験上、下記は「端麗辛口」と言えるんじゃないかと思います:
景虎 (新潟)
久保田 (新潟)
八海山 (新潟)
鶴齢 (新潟)
満寿泉 (富山)
緑川 (新潟)
立山 (富山)
早瀬浦 (福井)
伝心 (福井)
越前岬 (福井)
出雲富士 (島根)
まつもと (京都)
(2) 香り系
華やかな香りがする日本酒もあります。吟醸酒に多い気がします。「フルーティー」とも称されますかね。吟醸酒とは、お米を所定割合 (40%) 以上削って、お米の芯に近いところを使って醸造したお酒です。50%以上削ったお米で造られたお酒は大吟醸酒と名乗れるようです。お米の回りの部分はタンパク質を含んでいる等、日本酒にとっては雑味になるという考え方があるようです。自分の経験上、下記は「香り系」と言えるんじゃないかと思います:
出羽桜 (山形)
特に、「一路」という大吟醸酒は甘みも凄いです。
獺祭 (山口)
栄光富士 (山形)
十四代 (山形) ? あまり飲めないのでわからず..
正直、苦手なジャンルです。甘さや香りが立ってしまって、締まらないのがどうも..
(3) 少し甘くて少し酸味のある系
端麗辛口系ほどは角が立っていなくて、少し甘みがあって、ほのかにヨーグルトのような酸味があるお酒も多いと思います。自分が最近好んで飲むのはこのジャンルですね。バランスはいいです。酸っぱいというのは、酢のような酸っぱさではなくて、甘さを締めてくれるほどよい酸っぱさです。レモンとまでは言いませんが..語彙力が欲しいところです。具体的には下記でしょうか:
伯楽星 (宮城)
貴 (山口)
綿屋 (宮城)
浦霞 (宮城)
一ノ蔵 (宮城)
阿部勘 (宮城)
墨廼江 (宮城)
乾坤一 (宮城)
米鶴 (山形)
大信州 (長野)
寳劔 (広島)
高清水 (秋田)
(4) 少し甘くて米のうまみが出てあまり酸っぱくない系
(3) より酸味が弱くて旨味 (甘み) が出ている感じのお酒もあるかと思います。味わいも香りも酸味も一番バランスのよいところがこのカテゴリに入るでしょうか。
十四代 (山形)
開運 (静岡)
天青 (神奈川)
醴泉 (岐阜)
飛露喜 (福島)
廣戸川 (福島)
能登誉 (石川)
会津中将 (福島)
醸し人九平次 (愛知)
(5) 柑橘系
甘さが控えめで、柑橘系の酸味が爽やかなお酒もあります。香りがさほどではありません。わたしの観測範囲では、どういうわけか、山形-秋田県のお酒にこれを感じます。
山本 (秋田)
春霞 (秋田)
天寿 (秋田)
栗林 (秋田)
(6) 芳醇系
(4) より味わいがもう少し重くて、お米の味が強く感じられるお酒もあるかと思います。温めても面白いと思います。例えば..
戦勝正宗 (宮城)
奥能登の白菊 (石川)
会津娘 (福島)
常山 (福井)
玉川 (京都)
東一 (佐賀)
(7) どっしり系
(6) よりもう少し酸味が入って、お米の味がさらにどっしり感じられるお酒があると思います。このジャンルのお酒は温めて飲むとさらに旨さが冴えると思います。お酒を搾ってからすぐに出荷せず、寝かせている品種も多いのではないでしょうか。例えば..
菊姫 (石川)
天狗舞 (石川)
手取川 (石川)
竹鶴 (広島)
神亀 (埼玉)
丹沢山 (神奈川)
秋鹿 (大阪)
長珍 (愛知)
義侠 (愛知)
奥播磨 (兵庫)
香住鶴 (兵庫)
(8) 変わり種
こんな分類はもしかしたら失礼なのかもしれませんが.. 不思議な味わいのお酒もあります。不思議な甘さなんですが、全然くどくなく、すいすい飲めてしまいます。例えば、高知県、アリサワ酒造の文佳人というお酒です。大好きです。料理
日本酒は、お酒だけで飲んでも美味しいのですが、料理との相性もよいのではないでしょうか。和食と日本酒は相性が良いと言われることがありますし、それは自分の感覚とも合います。お寿司、おでん、煮物などなど。日本酒は、和食以外にも割と合う気がしています。自分は洋食をあまり食べないのですが、例えば、お肉系には、上記だと (1)、(6)、(7) のお酒とかは合うんじゃないでしょうかね。
個人的には、寿司が好きなのですが、寿司だと、立山、鶴の里 (菊姫の限定酒)、戦勝正宗、伯楽星、常山等、上記の (1)、(3)、(4)、(6)、(7) のお酒を合わせたくなります。好み
(1) 自分の移ろい
自分が好きなお酒を時系列で並べてみます。
A. 20-30代
菊姫の「にごり」、出羽桜の「桜花吟醸」でこの道に足を踏み入れました。漫画「美味しんぼ」の日本酒特集にも影響されました。旨味一本で、「生原酒」が好きでした。毎年冬は菊姫の「山廃純米生原酒」を楽しみにしていました。12月頭に出てきます。アルコール度数も約19%と高く、旨味満点で大好きでした。以前は、「大人のヨーグルト」と勝手に称して楽しんでいました。今では飲み疲れしてしまうので、買っていません。菊姫については、直営の飲食店が新橋にあったのですが、少し前に閉店してしまったようです。残念です。
B. 30代
「伯楽星」が大好きでした。バランス満点で飲み飽きしません。あと、旅行で訪れた輪島で飲んだ「能登誉」「白菊」、他、「もすごく美味しくて印象的です。
C. 40代
生原酒のような重いお酒を買うことは減りました。最近飲んでいるのは味わいほどほど、香りほどほど、酸味ほどほどといった飲み飽きしないお酒です。酒屋さんで気になる銘柄があると、「香りきつくないですか?」「甘すぎませんか?」という質問をして買っていることが多いように思います。香りがきついと米本来の味を邪魔している気がして嫌です。甘いと、飲んだ後、口が締まらないので嫌です。例えば、ケーキにコーヒーを合わせるとき、和菓子にお茶を合わせるとき、コーヒーとお茶に砂糖が入っていると、個人的には締まらないのと同じです。
(2) 季節の移ろい
A. 冬
近所の酒屋さんに並ぶ新酒を気の向くままに買っています。ポイントは、1升瓶で買うことです。時間とともに味が乗って、飲みきるまで味の変化を楽しむことができます。もっとも、1升瓶で買うのは季節によりませんが。冷蔵庫のスペースを食うのですが、奥さんにはもう諦められているようで文句言われることはありません。以前は下記を買うことが多かったです:
・菊姫 山廃純米生原酒
・黒龍 垂れ口
・貴 純米生酒直汲み
・あたごのまつ おりがらみ (伯楽星)
B. 春
基本的には冬と変わらないのですが、ちょっと軽めで微発泡の生酒を飲むことが多い気がします。以前は下記を買うことが多かったです:
・貴 純米吟醸生酒直汲み
・黒龍 吟十八号 (生吟醸酒)
C. 夏
暑い時期なので、さっぱりしたお酒が好きです。例えば、貴の「夏純米」です。軽く濁っていて微発泡が心地よく美味しいです。あとは、京都の玉川の「Ice Breaker」です。酒そのものはしっかりとした純米酒で米の味が溢れているのですが、ロックで飲んでも全然味が薄くなることなくとても美味しいです。
D. 秋
お待ちかね、秋はひやおろしです。20年以上飲み続けているのが静岡の「開運 ひやおろし」です。穏やかな香りで、味わいがとても乗っています。1升瓶で買うと、日が経つごとに味わいがどんどん乗ってきます。以前、ジュネーブ駐在の知人に、9月の出張の際にこのお酒を持っていったらとても喜んでもらえました。この時季、開運は毎年必ず買うのですが、その他は酒屋さんと話しておススメされるがままに買っています。このほか、黒龍の「純米吟醸三十八号」も買っていました。香り抑え目ながら、旨味が静かに凝縮されている感じです。語彙力欲しいです。最近は無いみたいですね。
(3) 個人的なおすすめ
下記は個人的なおすすめです。偏っていると思いますのでご参考までに。
・出羽桜 吟醸桜花
少し華やかな香りはしつこくなく、ほどよい甘みがいい感じです。「日本酒なんて..」という方は、このお酒から試してみるとよいかもしれません。冷たくして飲むと美味しいと思います。
https://www.dewazakura.co.jp/item/cat03/oka.html
・伯楽星
ほどよい酸味は食卓を豊かにしてくれると思います。
https://niizawa-brewery.co.jp/item/167/
・菊姫 鶴の里
菊姫の中でも酒米の質がさらに高いお米を使った山廃純米酒です。温めるとさらに真価を発揮するように思います。寿司との相性が抜群だと思います。https://www.kikuhime.co.jp/products/%E9%B6%B4%E4%B9%83%E9%87%8C/
・能登の白菊
美味さあふれて美味いです。蔵元のHPはないみたいで残念です。
・会津娘
香り控えめで米の味わいたっぷりで好きです。以前、季節限定の純米吟醸がほんとに美味しかったです。最近はないんですかね。
https://aizumusume.co.jp/products/list-mujyn
・竹鶴 純米 秘傳
どっしりとして美味いです。竹鶴にしては優しいです。昔は2000円ちょいで買えましたが、今は税込み2970円ですか。ずいぶん値上がりしましたね。
https://www.taketsuru-shuzou.co.jp/products
・戦勝正宗
余計な香りが無く、濃厚で旨味たっぷりです。
https://www.katsuyama-shop.jp/fs/shokuhan/846
・立山
辛口で味もあってすごく好きです。寿司に合わせるのがぴったりだと思います。私見ですが、安い銘柄ほど旨いという魔性のお酒です。
https://www.sake-tateyama.com/product_category/th-tateyama1800/
・文佳人
何とも変わり種で好きです。
https://www.tosashu.com/menu/tosashu/li-arisawa.html
以下、季節のお酒を冬から。
・あたごのまつ 純米吟醸 ささら おりがらみ生酒
冬を告げる酒です。まさにフレッシュです。おりがらみでいい感じの雑味がアクセントになります。
https://niizawa-brewery.co.jp/item/480/
・米鶴 純米かすみ酒
きれいで味もあって外れない新酒です。
http://yonetsuru.com/product/
・あたごのまつ ひと夏の恋
柑橘系の酸味がぎっしりで、夏に最高の1本です。ネーミングセンスも秀逸だと思います。
https://niizawa-brewery.co.jp/item/177/
・貴 純米本生スパークリング
微発泡の刺激が心地よく、味もしっかりして美味しいです。
https://www.domainetaka.com/products/products-251/
・玉川 Ice Breaker
夏にロックで飲むと、米の味もしっかりするのに最高です。
https://www.sake-tamagawa.com/prd_post/overseas06/
・開運ひやおろし
味が乗っていて秋の名作です。わたしの分が無くならない程度に、ぜひ皆さんに飲んでいただきたい1本です。
https://kaiunsake.com/item/163.html
・黒龍 秋あがり (純米吟醸)
黒龍の冷おろしです。昔は本醸造の冷おろしも、純米吟醸の冷おろしあったのに、ちょっと寂しいですね。
https://www.kokuryu.co.jp/brew/kokuryu/akiagari.htmlまとめ
日本酒って、いろいろあって、一言で表現できるものではないと思います。上記いろいろうんちく垂れましたが、わたし個人の一感想であって、これを読んで違和感を覚える方がいらっしゃって当然です。日本酒はそれほどまでに自由なんです。ですから、ああすべきだ、こうすべきだ、勝つとか負けるとか言ってないで、気の向くままに、日本酒で美味しいお料理を楽しんだり、仲間との場を楽しんだりして、人生を豊かなものにしていったらいいんじゃないですかね。乾杯! (おしまい)
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