怪談1

高校の部活の合宿で泊まった古びた旅館での話

夕飯を食べ終えて、温泉でも浸かろうと、あ、その前に小便を、と思いトイレへ入った

(合宿旅行と言ってもなんだかんだ疲れるな~)と思いつつ
「ふぅ・・つかれたぁ・・・」と独り言を呟いた。
そして用を足して、手を洗い、トイレのドアを出て閉めようとしたとき

「ギギィ・・・」と嫌な音がした

その音とほぼ同時に聞こえるか聞こえないか
微かに

(おつかれ・・・)

誰も居ないはずのトイレから誰かの声が・・・
明らかに意思をもって聞こえた

気色が悪いのでそそくさと廊下を抜けて温泉へ向かった
温泉に浸りながらもさっきの声が気になり続けた
その晩、寝付けずいると深夜になってまたトイレに行きたくなった。

気味が悪かったが、こちらもさすがにいい年だ、勇んでトイレへ入り電気をパチリ

チラチラと蛍光灯が点いたが古いのか夕方よりも薄暗く感じた

何の意味があるのか分からないが洗面台の蛇口を捻りジャージャーと水を勢いよく流した

何か音が立っていると無いとでは違うように思えたのだろう

大便のドアは3枚、すべて閉まっている
ドアの中が異様に気になるのは夕方聞こえた”あの声”が脳内を駆け巡るからだ

さてどうしたものか、このまま大便所を背にして小便を垂れるか、それとも大便ドアを開けてからやるか

蛇口から出続ける水の音
それに拍車を掛けられるように私は威勢よく大便ドア3枚を一気に開けた

一枚目 ガチャッ!バン! 薄暗いが何もない

二枚目 ガチャッ!バン! 芳香剤の匂い しかし何もない

三枚目 ガチャッ!バン! あ・・・!?





流されぬまま便器に浮かぶうんちとちり紙


(きったねぇなあ・・・)



私は他人の大便を流し、大便の水が流れる音を背に、小便を垂れてその場を跡にしたのだった

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