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SPAC $QS QuantumScape:ビルゲイツ、VWがバックアップするEV向け次世代型固体リチウム金属電池開発会社

注目ポイント

・VWが3億ドル出資し、合弁会社も設立している
・2010年にスタンフォード大発のスタートアップ企業として設立
・電池に関して約200の特許を保有
・ビルゲイツがバックアップ

企業概要

EV向け次世代型固体リチウム金属電池の開発

化石エネルギーの枯渇や環境汚染軽減といった問題対応のために今後市場の急拡大が期待されるEV向けに、次世代型の高機能な固体リチウム金属電池の開発を行なっています

まずはじめに固体電池とは?

全固体電池とは、電流を発生させるために必要でこれまで液体だった「電解質」を固体にした仕組みの電池のことです。

全固体電池に共通する特性
構造や形状が自由。薄型など、柔軟な電池が実現
小さな層を重ねることで小型・大容量化が可能
固体なので丈夫。寿命が長くて熱や環境変化に強い
高速充放電が可能

引用
https://www.sbbit.jp/article/cont1/37046

※半固体電池に対し、全固体電池があります。単に固体電池と呼ぶ場合、普通は全固体電池を指すという理解で良いかと思います。

固体電池の課題:急速充電が難しい

そもそも固体電池自体をつくるのが難しいのですが、それに加え高速充放電が難しいという課題があります。
この課題は原因の究明自体が難しいものであり、原因究明自体が研究対象となっています。

参考
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20181123/pr20181123.html

QuantumScapeの固体電池

高いエネルギー密度
黒鉛/シリコン負極のホスト材料を除去することで、体積エネルギー密度と重量エネルギー密度を大幅に向上させている。

急速充電(固体電池の課題を克服している)
負極ホスト材料のリチウム拡散ボトルネックを解消し、15分未満の急速充電(0~80%)を可能にしている

長寿命
アノード界面での容量損失を排除して寿命を向上

高い安全性
有機物のセパレーターを排除ており、固体分離器は不燃性である

低コスト
負極ホスト材料や製造コストを排除し、低コスト化を実現ている

ソース
https://www.quantumscape.com/

2020/12/8のプレスリリースにて、固体電池が次の4つの要件を同時に満たすのは難しいとしています。
①高エネルギー密度(1,000Wh/L)
②急速充電(すなわち高電流密度)
③長いサイクル寿命(800サイクル以上)
④広い温度範囲での動作
QuantumScapeは同時にこれらすべての要件を満たすことに成功し、それは報告例のないことだとしています。

参考
https://ir.quantumscape.com/news/news-details/2020/QuantumScape-Releases-Performance-Data-for-its-Solid-State-Battery-Technology/default.aspx

VWとのパートナーシップについて

VWはQuantumScapeと2012年から協力しており、2018年にはVWが1億ドルを出資し、VWグループ向けの固体電池の量産化を目指して合弁会社を設立した。当時の発表では、全固体電池の実用化目標を2025年に置いていた。...

現在のLiイオン2次電池の電池パックと同じサイズの固体電池を使用すると、電気自動車(EV)が従来のエンジン車と同等の航続距離を実現でき、充電時間を大幅に減らせるという。VWグループは2050年までにカーボンニュートラル達成を目指しており、EVの普及はその実現の重要な要素となる。固体電池を実用化できれば、その目標に大きく近づける。

引用
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/08158/

 

量産化

2024年からVWとの合弁会社で全固体電池を量産するとしています

支援者・支援企業

競合状況

Tesla
Teslaは低コストなリチウムイオン電池の内製化にめどをつけたことを発表。2020/9/22のBatteryDayでの固体電池に関する発表が期待されたが発表はなかった。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01393/00012/

Samsung
Samsungが作ったバッテリーは500マイルの航続距離があり、1000回以上の充電が可能
https://www.caranddriver.com/news/a31409442/samsung-solid-state-battery-revealed/

BYD
電池パックの構造が最適化されているため、従来のリチウム電池と比較して、電池パックのスペース利用率が50%以上向上している。
https://www.byd.com/en/news/2020-03-30/BYD%27s-New-Blade-Battery-Set-to-Redefine-EV-Safety-Standards

所感

競合は多くあり、各社それぞれの環境、条件での結果であり比較は非常に難しいと思いますが、私が調べる限りでは、やはりQuantumScapeがあげた4要件を満たしいる固体電池は発表されていないように思われます。

固体電池が満たすべき4要件

①高エネルギー密度(1,000Wh/L)
②急速充電(すなわち高電流密度)
③長いサイクル寿命(800サイクル以上)
④広い温度範囲での動作

そしてこれらは明らかにいづれも重要です。
このように非常に強いプロダクトを持ち、また世界中が一気にEVに変わっていこうとしているために外部環境は非常によく、そしてビルゲイツやVWといった強力なコネクションがあります。また、VWが位置する欧州は瞬間風速では中国を超えるEVの巨大市場であり、通年でも世界一のEV市場となることができる市場です。
私は非常に期待できる銘柄だと思います。

参照
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ00067_X01C20A2000000

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