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FARFETCH 2020.Q3決算補足 Earnings callから今後を読み解く

先日、FARFETCHの2020.Q3決算の解説記事を書きましたが、今回は決算発表後に行われたEarnings call(アーニングスコール)での会社側のコメントから、投資家にとって重要だと思われるものをピックアップしました。

決算書には記載の無い話もあり、今後を見通す上でも有益となる情報が含まれているので、FARFETCHへの投資に興味がある方は是非目を通して欲しいと思います。因みに、Earnings callのスクリプト自体はこちらのThe Motley Foolというサイトに掲載されています(英語版のみ)。


パラダイムシフトとFARFETCHユーザーの属性

まず、ラグジュアリー消費のパラダイムシフトに関する話がありました。実店舗の営業の再開後もオンライン消費の勢いは衰えず、FARFETCHの新規顧客に対する調査によると、45%が今までよりも多くオンラインでショッピングを行うと答え、23%がほとんどのショッピングをオンラインで行うと答えたそうです。

Bain & Companyの最新の調査によれば、今年2020年の個人向けラグジュアリー製品市場は、前年比23%の減少となっているにも関わらず、オンラインのシェアは前年の12%から23%へと倍近く増加しており、急速なデジタルシフトが起きていることが分かります。因みに、やたら23%という数字が多いですが、筆者の間違いではありません。

また、ユーザー属性に関するデータについても言及があり、FARFETCHの顧客の約2/3をミレニアルとGeneration Zが占めており、その割合はラグジュアリー業界全体と比較しても高いとのことです。

Bain & Companyのレポートによれば、2025年には、この二世代がラグジュアリー市場のおよそ55%を占めるようになるという見通しですが、FARFETCHは現在で既にこの数字を上回る割合のミレニアル、Generation Zの顧客を抱えていることになります。将来に渡り市場の牽引役となる層の顧客が多いことは強みの一つですね。

さらに、デバイスについては、GMVの内50%以上がアプリでの購入によるもので、デスクトップユーザーよりも高いエンゲージメントを記録しており、2020.Q3においてはアプリとモバイルでの購買が75%以上を占めるとのことです。

実店舗→オンライン、PC→モバイルという消費者行動の変化が如実に見てとれますね。


2021年、2022年は非常に重要な年に

こうしたパラダイムシフトが起こる中、来年2021年、そして2022年はFARFETCHにとって非常に重要な年になるはずです。注目すべき点は、「業績の黒字化」と「アリババ、リシュモンとの提携がもたらす効果」、この二つです。

ガイダンスでは、次の2020.Q4で、四半期として上場後初のadjusted EBITDAレベルでの黒字見込みとなっています。また、来年2021年は、通年での黒字化が見込まれていて、実際に達成できるかどうかは投資家の行動に影響を及ぼすはずです。

但し、これは各四半期全てにおいてadjusted EBITDAが黒字になるということではなく、あくまで通年での黒字見込みであるという発言が今回のEarnings callでありました。したがって、来年は1つの四半期が赤字になったからという理由で安易に狼狽売りしないように注意が必要です。

そして、何と言っても一番気になるのは、やはり、先日発表されたアリババ、リシュモンとの提携がもたらす効果でしょう。

まず、リシュモンに関してですが、「提案できることが沢山あり、対話を続けていく」とのコメントがありました。具体的には、傘下のブランドのFARFETCHのプラットフォームへの流入や、FPS、STORE OF THE FUTUREといった事業でのサービス提供が想定されます。

また、アリババに関しては、来年中にTmall Luxury Pavilionへの出店を完了させ、2022年にはその成果が数字となって完全に表れてくると述べています。これらの発言から、2021年、2022年はFARFETCHにとって大きな飛躍が期待され、非常に重要な年になるはずです。


Tmall Luxury Pavilionでの勝算

さて、Tmall Luxury Pavilionへの出店には非常に期待がかかりますが、既に多くのラグジュアリーブランドがTmall Luxury Pavilionには出店していて、そうしたブランドの商品は同じプラットフォーム上でバッティングするのでは?という疑問を抱くかもしれません。

実際、筆者もこれに関しては少し不安に思っていたのですが、Luxury PavilionのシステムとFARFETCHの優位性について、そんな不安を払拭するような説明がありました。

どうやら、Luxury Pavilion内の商品在庫は全て中国内(実店舗も含む)に在り、Luxury Pavilion専用の在庫としてストックされているようです。そして、このシステムは明らかにリスクが高く、且つオペレーティング・コストも高いとのことです。そのため、Luxury Pavilionに各ブランドが供給できる商品数(在庫数)は少なくなるのが想像できます。

対してFARFETCHは、Luxury PavilionにFARFETCHのプラットフォーム上にある莫大な数の商品(在庫が中国に無いものも含む)を供給できるようにするつもりで、これによりLuxury Pavilion内の商品数は3倍にも増加するとの発言がCEOよりありました。

商品の数やバリエーションに優位性があるならば上記の不安は問題になりませんし、FARFETCHやLuxury Pavilionに出店する側のブランドにとっても、FARFETCHは圧倒的に魅力的なプラットフォームとなることを意味しています。

したがって、Luxury Pavilionに出店しているブランドの商品が、バッティングによりFARFETCH上で売れないということは考えにくく、むしろ、Luxury Pavilionに出店していない小規模なブランドの商品を含めた圧倒的な商品数(在庫数)で、多くのユーザーを惹き付けることが可能だと考えられます。

このLuxury Pavilionに関する動向には、今後も特に注視していく必要がありそうです。

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