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株式投資:東証スタンダード市場の奇妙な銘柄


はじめに

2024年1月22日に「株式投資:東証スタンダード市場の奇妙な銘柄」という記事(有料版)を公開しました。ネタとしても少し古く感じたので、今回は全編無料にしました。
 
有料版の時には無料部分では銘柄を伏せておいて、ヒントだけを教えるような形式にしましたが、全編無料にしたので、銘柄の答えを教えると「住石ホールディングス(証券コード:1514)」です。
 
さすがに、奇妙な銘柄だけあって、下図のように株価が想像を超える大きな動きがありました。

住石ホールディングスの株価

緑の矢印部分が記事を公開した時の株価で、2ヶ月も経たないうちに3倍も上昇しました。公開日あたりで住石ホールディングスの株を購入した人は超儲かったと思います。
 
その後は「山高ければ谷深し」で公開日の株価よりも低くなりましたが、奇妙な銘柄だけに、もう一波乱あるような気がします。
 
ここから先は2024年1月22日に公開した「株式投資:東証スタンダード市場の奇妙な銘柄」の文章をそのまま載せたものです。

もう読んだ方は特に新しいことが書いてあるわけではないので、読んでも面白みがないと思います。読んだことがない方や無料部分しか読んでいない方はあまり見かけることのない銘柄なので、読んでもらえればと思います。 


(注意事項)
・2024年1月22日に公開した有料記事は混乱を招くといけないので削除しました。
・本文では有料部分と書かれている箇所がありますが、全部無料です。

 
--------------ここから本文--------------

東証スタンダード市場はカオス市場

東京証券取引所の市場区分はプライム市場、スタンダード市場、グロース市場に分かれています。日本取引所グループは各市場を図1のように説明しています。

図1 東京証券取引所の市場区分

多くの投資家は日本取引所グループの市場区分の説明は正しいとは思わないでしょう。なぜなら、新規上場基準は厳格ですが、上場維持基準は緩いため、上場さえすれば、業績が悪化しようが簡単に上場廃止にならないからです。
 
グロース市場は上場10年経過後に時価総額が40億円以上(2024年1月時点)でなければ上場廃止になるため、成長できない会社は上場廃止になることがあります。逆に、企業規模が拡大すれば、スタンダード市場やプライム市場に区分変更することもできます。
 
しかし、プライム市場やスタンダード市場は債務超過(純資産がマイナス)になっても、猶予期間で債務超過が解消されれば上場が維持されるため、上場廃止の基準が甘いです。
 
他にも流動性やガバナンスの上場維持基準がありますが、それほど高い基準ではありません。特に、スタンダード市場は流動性やガバナンスの基準が低いので、資産を切り崩し、お金を稼がない会社も存在します。

スタンダード市場はグロース市場から高成長を達成した会社が入ってきます。また、プライム市場の上場維持基準に満たさなくなった会社も入ってきます。

図2 スタンダード市場のポジション

スタンダード市場は良い会社と悪い会社が入り混じった「カオス市場」といえます。


奇妙な会社

有料部分ではスタンダード市場にある奇妙な会社を紹介したいと思います。無料記事しか読まない人のためにどの会社を紹介するかヒントを教えます。

その会社の株主構成が図3になります。

図3 株主構成(2023年9月)

大株主に井村俊哉が書かれています。芸人から億り人投資家になったので知っている人も多いと思います。
 
そして、筆頭株主には麻生と書かれています。正式名称は株式会社麻生です。この名前の通り、元内閣総理大臣で現職の大物政治家である麻生太郎とつながりのある会社です。

麻生 太郎

株式会社麻生は会長が実弟の麻生泰、社長が甥の麻生巌が務める麻生一族の会社です。

図4は株式会社麻生の株主構成です。

図4 株式会社麻生の株主構成

大株主には「学校法人麻生塾」、「麻生泰」、「麻生巌」、「麻生健」、「麻生興産株式会社」と麻生だらけです。もちろん、麻生太郎もしっかり大株主に入っています。
 
その麻生一族とつながりのある奇妙な会社をここからの有料部分で紹介します。

--------------ここから先が有料部分であった箇所--------------

株価の大暴騰

奇妙な会社は「住石ホールディングス(証券コード:1514)」です。(以下:住石HD)
 
石炭の輸入販売のほか、人工ダイヤ等の先端素材の製造販売、砕石の採取、加工、販売の3事業を展開する持ち株会社です。
 
ホームページを調べても、投資家に不親切なほど、会社説明がほとんどありません。上場企業ですので、四半期の決算は見ることはできます。

2023年1月から2024年1月までの株価推移を見てみます(図5)。

図5 住石HDの株価

2023年9月頃から株価が急激に上がり始め、数ヶ月で株価が300円台から1900円を超えました。ちなみに、2008年に上場してから一度もこのようなことが起こったことがありません。だいたい、株価は200円以下であまり動かず、2022年頃から株価が上昇傾向になってきました。

「これはバブルなのか?仕手筋なのか?」と思ってしまいますが、自分には判断しにくいところがあります。決算は大きな増益ですが、内容が気になります。
 
また、2023年末に株式会社麻生が住石HDの株を大量に購入しているのも奇妙に感じます。ただ、奇妙なだけで、疑しいことをしていると断定しているわけではありません。


決算内容

表1は住石HDの過去10年の損益計算書(P/L)です。

表1 住石HDの損益計算書(P/L)

2023年(予想)は2013年と比べると営業利益、経常利益、純利益は10倍以上です。特に2021年以降は大幅な増益です。ちなみに貸借対照表(表2)も見てみます。

表2 住石HDの貸借対照表(B/S)

毎年、着実に純資産を増やしています。2021年以降の大幅な増益により、純資産も大幅に増加して、自己資本比率も高いです。2023年が予想通りの決算内容であれば、自己資本比率は90%台になります。
 
財務が健全で好決算であれば、2023年のEPS(一株当たりの純利益)は108.52円なので、株価が2000円ぐらいになってもおかしくないです。
 
では、なぜ2021年以降に大幅な増益が続いているのでしょうか。ましてや、売上が上がり続けているわけではありません。
 
その理由は子会社である住石マテリアルズ株式会社が保有している豪州の炭鉱会社であるワンボ炭鉱の配当受取額が2021年以降、増えつづけているからです。


決算内容が決まるほどの配当金受取額

ワンボ炭鉱の詳細な情報はわかりませんが、2021年から住石HDのIR情報にワンボ炭鉱の配当金受取額が開示されるようになりました。それらをまとめたものが表3になります。

表3 ワンボ炭鉱からの配当金受取額

半期ごとに受け取るようになっており、配当金受取額は増大しています。

また、表1の住石HDの純利益を表3に加えました。見比べると、住石HDの純利益とワンボ炭鉱からの配当金受取額が似ていることがわかります。
 
すなわち、ワンボ炭鉱からの配当金が住石HDの決算を決めるといえます。
 
ちなみに、住石HDの業績予想はワンボ炭鉱からの配当金受取額が分かった後で修正されます。2024年3月29日に高額の配当金受取額があれば上方修正すると考えられます。
 
しかし、図6の石炭価格の推移を見てください。2022年をピークに2023年初めから石炭価格は大きく下落しています。

図6 石炭価格の推移(月次)

自分はワンボ炭鉱についてよく知らないのですが、ある情報によると、ワンボ炭鉱は石炭バブルが起こる前に石炭の売価をヘッジしたため、2022年の石炭バブル時に大きな収益をだすことができませんでした。
 
その後、石炭価格は大きく下落し、バブル前に戻ろうとしているので、押し下げ要因が減ることで、収益が上がり、配当金が上がったようです。


株式会社麻生の株の大量買いは何を意味するのか

住石HDの筆頭株主は株式会社麻生であることは書きました。株式会社麻生は2023年11月末までに何度も有価証券大量報告書を提出しました。内容は住石HD株の買い増しで、9月末の保有比率19.3%から42.84%も増やしています。
 
ちなみに、井村俊哉は9月末の保有比率5.3%から3.88%に減らしています。
 
株式会社麻生が住石HD株を大量に買い増しするということはワンボ炭鉱の高配当が持続すると確信しているのだと考えられます。


何かありそうな感じを抱く

有価証券大量報告書は株を保有した時点で提出します。購入依頼時期とは時間のズレがあります。個人投資家が証券会社で株を買うと購入後の2営業日後に保有することになりますが、大量に株を購入する場合、数か月後に保有することが一般的です。
 
例えば、8月1日に証券会社にA株を1000万株買うことを依頼します。証券会社が購入者にA株を1000万株売り、購入者が保有した日にちが11月30日だとします。有価証券大量報告書の提出は8月1日ではなく、11月30日になります。
 
株式会社麻生が有価証券大量報告書を提出したのは2023年11月ですが、それより数ヶ月前に証券会社に購入依頼をしていると考えられます。
 
そうなると、住石HDの株価が300円代で大量購入した可能性もあり、2024年1月時点では6倍以上株価が上がっているので、数百億円規模の含み益があると思われます。お金持ちのところにはお金が流れるということなのでしょうか。
 
以前から住石HDの筆頭株主なので、ワンボ炭鉱から高額の配当金を受け取れることを開示される前から知っていて、購入依頼をしていたのではないか。もしくは、麻生一族とワンボ炭鉱に何かつながりがあるのではないかと週刊誌のような思惑を抱いてしまいます。

どちらにしてもインサイダー取引に触れるので、絶対にないということにしておきます・・・。
 
2024年1月時点で、株式会社麻生が住石ホールディングスの株式保有比率を下げたという有価証券大量報告書の提出はありません。
 
今後の住石HDの株価はワンボ炭鉱の半年毎の配当金受取額と株式会社麻生の株式保有比率の増減の2点で決まると思います。今後も大きな変動で株価が動くと思いますので、短期投資家にとっては面白い銘柄だと思います。


-おわり-


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