ポケモンカード投資、その危険性

私は趣味で投資をしており、様々な相場を見てきた。
そして今、ポケモンカードへの投資がここ1、2年程で賑わい、価格の高騰を見せている。
私は今起こっているこのポケモンカードの高騰はバブルであると考えている。

この記事では、私がポケモンカードへの投資は絶対に行わない理由と、ポケモンカードがバブルである理由を書いていく。

・モラルの問題

ポケモンカードは、発売日は取り合いになり、客同士の喧嘩に繋がった例がある。
そして、メルカリで未開封ボックスと謳い、レア抜き後、未開封に偽装されたボックスが販売され、騙される人が増えた。更に未開封偽装が可能な綺麗な状態のボックス空箱が単品で取引されるようになった。詐欺前提の取引が公で平然と行われるようになった。
安全と謳われたPSAの鑑定品ですら偽物が出回るようになり、注意喚起のツイートが拡散されるようになった。

モラルの低下から、バブルを読み解くこともできる。

仮想通貨詐欺。
過去2回起こった仮想通貨のバブルにおいて、詐欺師に「今仮想通貨は熱いです!儲けられます!」と謳い文句で騙された人は少なくないという。
実際に値段は上がっており、それが詐欺であると認識できなかった人達が騙されるのを防ぐのは、かなり難しいことだと私は思う。
詐欺に合わない為には、詐欺を防ぐ為の事前知識、直感的に怪しいと思う洞察力、もしくは金銭に対する欲や不安を捨てることが必要であるからだ。

バブル中に頻発したその話題はバブルが終わると同時に鳴りを潜める。
バブルとは、人々の熱狂が起こす瞬間的な値段の高騰現象のことである。
バブルにより熱狂し、冷静な判断力が失われている状態は、詐欺師にとって騙しやすい環境が整えられている状態と言い換えても問題無いと思う。
ポケモンカードは今まさにその渦中にいるのではないだろうか。

・実質的なギャンブルの胴元の存在

ぶっちゃけ例のカードショップ。

値段が弾け飛んだエクバリーリエ

エクストラバトルのリーリエ(通称エクバリーリエ)が、3300万円から600万円程に価格が低下し、その後数日で1000万円程まで回復した話があった。
600万円まで下げた時には「あぁ、ポケカバブルそろそろ終わりかぁ」と思っていたが、その数日後に相場がV字回復するような買取を実施していたので、胴元はまだ商材として使うつもりらしい。

扱う商品と元手が多い会社は、市場操作が可能である。
商品を買い占め、市場に出回る数を調整することで、価格の吊り上げが可能だからだ。
市場にある商品を全て買い占めた後、相場より高い値段で出品し、身内で購入して販売実績を作ってしまえば相場の操作が行えてしまう。
エクバリーリエがTwitterで販売告知後数時間で売れるのは、市場操作も関与していると思っている。
普通、1000万の商品が数日未満で売れるなんてことは有り得ないと思う。
「よほど金が余っている人が買ったのだろうか…?」と楽観的に考えるよりは、私はこの方が納得行く。
(仮に本当に顧客が買った話だったとしても、雲の上の話であり指標にするのは危ないと思う)

またPSAの鑑定が終わり、鑑定品が市場に出回るタイミングで価格操作を行い、相場を下落させれば商品の回収も可能となる。
バブルというのは恐ろしい物で、一度成功体験を得てしまうと、「この相場はお金をつぎ込めばつぎ込むほど利益が得られる」と自分の所持金以上の投資をクレカや金を借りてまで行ってしまう人も出てきてしまう。
(私も過去に仮想通貨バブルに乗り、お金を賭ければ賭ける程儲かる相場だと勘違いし、上記の発想に至ったことがある。流石に危険だと思い行動には起こさなかったが…)
こういった目前に金銭的余裕のない人は、短期間内に返済する金を準備する必要がある。
その為、値段が回復することを待つこともできず、泣く泣く安価で投資商品を手放さざるを得ないのだ。これを胴元が回収する。
これは実際に2023年6,7月にかけて行われた手法だ。

ちなみに、株で同じことをすると真っ先に逮捕される。

私には無法地帯としか思えない。

価格操作が可能な胴元が存在する相場で投資を行う。
これはとてつもないリスクが伴う危険な行為だと私は思う。

・希少性のみで裏打ちされた価格

投資対象となるポケモンカードの価値は、基本的に希少性にのみ担保されている。
その担保は非常に脆く、投資家からそれを欲しいと思う心理が無くなった瞬間、カードの価格は崩壊する。
誰も欲しがらなくなったカードの最後の価格は数百円~数十円となることも少なくない。
そして、ポケモンカードを購入する人は、ポケモンカードに興味がある人のみで、それ以外の需要は存在しない。

投資には様々な種類がある。
株式投資、不動産投資、債券投資、貴金属、仮想通貨…。
これらには、それぞれ意味があって値段が付いている。
例えば株、不動産、債券はそれだけで富を生み、意味を持つ。
仮想通貨も一見ギャンブルに見えるが、よく調べると元々は送金や決済、開発に使用されることを想定した商品で、需要があるからこそ値段が上がりバブルが発生したことが分かる。本当にギャンブル的側面としての価値しかないのならば2度もバブルなんて起こらないし、今頃二束三文で取引されている筈だと思う。
貴金属については、希少性という意味ではポケモンカードに一番近い性質をしている。
しかし、金の価値は希少性だけではなく、電子回路上では金でしか為しえない部品というのも存在する。このように、工業的にも一定の需要がある。
長い事取引されてきた投資対象の多くは、様々な方面からの需要があり、決して希少性にのみ裏打ちされて価格が付く訳ではない。

ポケモンカードの価格の付き方は、他の投資対象と比較すると非常に不安定であることが分かる。
大手のカードショップが「この値段で買い取ります」と表明すれば、それが相場になる。鶴の一声で、その商品は天国行き、地獄行きどちらの切符にもなり替わる。
例え短期的には利益を上げられたとしても、根本が不安定な状態であることから、手を出すのは非常に危険であると私は考えている。

以上が、私がポケモンカードの投資を行わない理由と、ポケモンカードがバブルであると思う理由である。

・投資とは

私が思うに、投資とは長期的に利益を得るために特定の商品への出資を行うことであると考えている。
私が一番好きな投資は株式投資で、その理由は企業が儲けることが出来た時、その儲けの分け前を株の所有者全員で享受でき、出資者全員が幸せになるからである。不幸になる人間が一人も存在しないのだ。
(全員不幸になるパターンもあるが、一旦さておき)

どんな投資でも、何かしらの理由があるからこそ投資は行われ、基本的にその交換は双方にとってのwinトレードである。
短期的な投資は常にギャンブルであり、誰かが得をした時、誰かは損をする形になっている。

私は、誰かを蹴落とした上での幸福は成立しないと考えている。
自分が巨額の富を得て生活に困ることは無くなったとしても、その富を得る為に多くの犠牲があったら、きっと私は罪の意識に苛まれ幸福に暮らすことは無理だと思う。
ポケモンカードを取り巻く環境がやっていることはそれと変わらない。
私によっぽど金銭の余裕が無かったとしても、誰かを蹴落として生きる生き方だけは絶対にしたくない。

・ポケカ投資の正解と不正解

ポケモンカードへの投資は、基本的に希少性にのみ担保されている。
その為、基本的に価格の担保が脆いという話を書いたが、昔のカードで投資を行うことだけは唯一成功してもおかしくないと考えている。

そもそも、カードゲームのカードがコレクションを目的に扱うことが増えたのはごく近年であり、それ以前は遊ぶ為の商品として扱われることが多かったと思っている。
PSA鑑定サービスは1991年から存在していたという。
しかし、私がこのサービスを知ったのは2018年頃の話であり、なんなら知った当時も「そんな需要があるんだ」と対して興味も持たなかった。
TCGプレイヤーとして活動していた当時、周りにもカードをコレクション目当てで買う人はほとんどいなかった。

遊ぶ為のツールとして扱われたことで、状態が良い昔のカードは滅多に現れない。
そんな中で状態が良い物が現れればそのカードの価値は飛躍的に高まる。
利点である希少性が飛び抜けて高くなるからだ。
例を挙げると、かいりきリザードンやポケモンイラストレーター等が分かりやすい。
逆に、最近のカードはPSAの鑑定数を見るとあまりにも数が多い為、希少性としては正直そこまで高くない。
(例として、かいりきリザードンのPSA10は世界に8枚しか存在しないが、25周年記念版のリザードンのPSA10は現在16000枚程存在している)

とはいっても、あくまで趣味で集めることが望ましいと私は思うが。

・この環境での私の後悔

長々と語ってきたが、私はたまたま投資に対して興味を持っていただけの一般人で、失敗も数多く重ねてきた。
元々MTGのプレイヤーであった私は、コロナウィルスによる外出自粛等々をきっかけにPTCGO(海外のポケモンカードのオンライン対戦ソフト)を触っていたことがある。
その時に以下の2枚のカードが気に入った。

当時の価格は上のカードは6、7000円程度、下のカードは1万数千円程度
(現時点で出てくる過去のメルカリ相場参照)
コレクション目的で近い内に買おう、なんて考えていたらバブルが始まり、あれよあれよという間に気軽に手を出せない値段にまで跳ね上がってしまった。(現状上:20万円程度 下:5万円程度)
早く買っていれば…と思ってしまうのは、やはり人間の性なのだろうか。
(ちなみに、どちらもPSA鑑定数はそこまで多くなく希少性も高め)
「悩む理由が値段なら買え、買う理由が値段ならやめとけ」という言葉があるが、今後は意識して生きて行こうと思う。


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