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グロース株は、どうやって見極める? -Part.1-

〜この記事でわかること〜

・グロース株の見つけ方が、わかる
・どんなグロース株が資本成長に最適か、わかる

〜初っ端から結論〜

・コーポレートライフサイクルの成長期にある会社を買え
・資本成長を狙う投資家が狙うは「4番」である

✴︎本編✴︎


投資銘柄を選定する際に、「バリューか、グロースか?」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?

これから株価が上がるかどうかを考える際の基準として、よく2台巨頭のような感じで語られます。

ざっくりいうと「バリュー株」とは
「企業の本来の価値に比べて、株価が割安になっている "お買い得" の株」

株価が適正価格の3分の1という、破格のInternational Seaways

一方、「グロース株」とは、
「必ずしも割安ではないが、今後の成長が大きく見込まれる成長株」のことを指します。

年初来飛ぶ鳥を落とす勢いで上がり続けるNVIDIA。明らかに割高ですが登り続けています。

株価が上がるメカニズムとしては
バリュー株の方は、"いつか"正当な企業価値が認められて価値が上がる (回復する)
グロース株は、市場成長率よりも企業の成長率が著しく高く、投資家の期待を背負って株価が上がる、というものです。

バリューVSグロース、結局どっちが上がるの?

で、結局どっちの方が上がるんでしょうか?
バリューとグロース、どちらにも株価が上がる可能性はありますが
どっちが上か?というと「なんとも言えない」が今の私の、正直な印象です。

短期的にはグロースの方が上がる可能性が比較的高いかもしれませんが、長期ではバリューに軍配が上がるかもしれません。バリュー株だったものがグロース株に変わったり、あるいはその逆もあり得ます。

ですが、比較的現代の投資家ほど、グロース投資を支持する声が多いように思えます。ですので今回はグロース株の見つけ方をまとめていきたいと思います。

バリュー株の見つけ方については、以前の記事『株式投資、いつ買うか?』を参照ください。


グロース株を見つけよう

さて、グロース株の第一回は、「グロース株投資の父」とも言われるトーマス・ロウ・プライス Jr. の手法をまとめます。

名前が長いため、今回はトーマスで
彼が10万ドルで始めた会社は、いまや1.7兆ドルを運用している(約1500万円→約230兆円)

1. 目的を明確にする

トーマスはまず、投資の目的を明確にすることから始めるべきと主張しています。
その3つの目的とは
① 資本保全
② 高い利回り
③ 資本成長
です。
あなたは、どれに当てはまるでしょうか?

資本保全は、もともと投資した金額を「絶対に減らさない」ことを目指します。「20年かけて子供の養育費を貯めたい」「一家の遺産を後世に残したい」というようなニーズに向いています。

高利回りは、投資した金額から「定期収入を得る」ことを目指します。
「数億円を元手に、毎年必ず数百万円を老後の生活費にあてたい」などのニーズに向きます。

資本成長は、「投資した金額それ自体を増やす」ことを目指します。
「数百万円の資本を投資し、株価が3倍になったタイミングで売却し、売却益を得たい」というようなニーズに向いています。

そして、3つ目の「資本成長」を目指す者にとって、最も適した投資手法が
「グロース投資」であることを強調しています。

2. 「成長フェーズ」の会社を見つける、その名の通り

人間と同じく企業にも一生があります

コーポレートライフサイクルの図

生まれて、成長して、ピークに達し、成熟していきます。
・生まれたばかり=企業したてのスタートアップ
・成長期=他社を侵食 or 新市場を生み出し、シェアを拡大
・成熟期=売上高の成長率が鈍化し、市場が飽和状態に

グロース投資では、この成長期にある会社を狙います。
そして、いまその会社が成長期にあるかどうかは財務を見ることで、ある程度測定することが可能です。

(i)売上高成長率が、年平均10%以上の高い水準をキープしている
(ii)純利益も、一定かそれ以上のペースで上がっている
(iii)設備投資費が、一定かそれ以上のペースで上がっている

成長期にある会社なので、売上と利益をどんどんあげ、さらに積極的に設備投資を行い将来の収益を生み出そうとしている、というわけです。

今回も、ジェネラルエレクトロニクス(GE)社に再登場してもらいましょう。
長い歴史を持つ同社の代表的な成長期は、ジャックウェルチCEOのもと大きく拡大した1970〜1990年。金融事業や海外市場への拡大に成功し「世界で最も尊敬される企業」として名を馳せました。

当時のCEO、Jack Welch

この間の売上高・純利益・設備投資費をみてみると

全てが右肩上がりなのが分かります。もちろん株価も…

一方、成熟期と言われる2010年代以降はどうでしょうか?

全て右肩下がりです。株価は…

前半調子良かったですが、赤字が株価下落のトドメを指す形となりました。

グロース投資のまず第一歩は「成長期にある会社」を買うことです。ぜひ財務分析から、成長性のある会社を探してみましょう。
成長フェーズにある企業を選ぶことで、利益の可能性が高く、資本損失のリスクが低くなります。

3.グロース株のタイプを見極める

先程までの分析で成長期にある企業を特定しました。ですが成長期株といってもいくつかの種類があります。トーマスは安定型と景気循環型、一流と二流、という2つ指標で4種類に区別しています。

それぞれの要件は以下の通り、

1. 安定型一流グロース株:
過去10年間、少なくとも7年は連続して1株当たり利益が増加している
過去10年間、配当金が減少したことがない
過去10年間、1株当たり利益が少なくとも3倍に増加している
直近の1株当たり利益が過去最高を更新している

2. 安定型二流グロース株:
一流グロース株と同様の要件を満たすが、企業の業歴が浅く、財務状況が脆弱である

3. 景気循環型一流グロース株:
直近の好況期における1株当たり利益と配当金が、前回の好況期を上回っている
直近の好況期における1株当たり利益と配当金が、前回の不況期を大幅に上回っている
1株当たり利益と配当金の成長率が、長期的に見て上昇傾向にある

4. 景気循環型二流グロース株:
単一または少数の製品やパターンに依存している
財務状況が脆弱である
製品やサービスに対する需要が高い
ブランド価値が高い
売上高が急速に増加している

そして、この中で高利回りを狙う投資家は1番を、資本成長を狙う投資家は4番を狙うべきだと結論づけています。

私個人の意見も含めると、半年〜1年のスパンで売買を比較的頻繁に行い、毎年ポートフォリオを組み直す短中期グロース投資家にとっては4番がオススメ

5年、10年、あるいは一生持ち続けて数百倍のリターンを狙う、長期グロース投資家は1番がオススメということだと理解しています。

4. 定性情報をとりにいく

ここまででグロース株のタイプを推定したら、最後は定性情報を取って仕上げましょう。

ここでは、グロース株にとって好都合な真実と、不都合な真実をそれぞれカンニングシートとしてまとめました。

これらの定性情報の取得は、SimplyWall Streetなどのアナリストプラットフォームや、アメリカのOpenworkみたいな中途採用サイトGLASSDOORが便利です。

実際に元・現社員が、会社をどう評価しているのか、情報を得ることができます。


最後に、定性情報をとりに行く際の注意点を紹介して終わりましょう。

定量情報は数値で表すことができる客観的情報ですが、定性情報は「経営陣が革新的かどうか?」などの、必ずしも数値化できない情報が大半です。

ここで注意してほしいことは1つ、「自分に都合の良い情報だけを集めないこと」です。公正に集めているつもりでも、人間には無意識のうちに自分に都合の良い情報だけ集めるという習性があります。
これを「認知バイアス」と言います。

自分が投資している、あるいは投資を検討しているからといって、ネガティブな情報から目を背けるのはやめましょう。
敢えて「この会社はやばいらしい」という前提で情報収集をする、くらいがちょうど良いと思います。

その態度で望んでも、どうみても良い銘柄にしか思えない。
欠点を探すのが難しい企業こそ、あなたが生涯と資産を賭けるに値します。

人生の伴侶となるような株式を探しましょう


〜トーマスからメッセージ〜

投資信託会社を創業した当時のトーマス

"The best growth stocks are those of companies that have something of importance in the works. This is what creates value." 

ー最良のグロース株は、重要なプロジェクトを進行中の企業の株である。これが価値を生み出すのだ。ー

"If you're right about a company, you can have a conviction about it. You don't feel you have to watch the price fluctuate every day."

ー企業について正しい判断をしていれば、その企業に対する確信を持つことができる。毎日の株価の変動を見守る必要はない。ー

"The growth stock theory of investing requires patience, but is usually more rewarding in the long run."

ーグロース株投資の理論には忍耐が必要だが、長期的にはより報われることが多い。ー

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