願文 空想が現実になる世界の実現
天台宗を開いた伝教大師最澄は延暦六年(787)満20歳に『願文』を著した。これは比叡山に入り、独り修行生活をおこなった最澄が自己のありようを真摯に見つめ、深い考察のもとに純粋な理想をかかげた、格調高い文章である。
今20歳を終えようとしている私が、最澄ほどの誓願と文章を書けるとは思わない(それほど格調高い内容である)。しかし彼が『願文』を著したことで、その思想と修行の様子が桓武天皇にまで達し、宮中の役職に任命され、短期留学と共に空海と出会い、最先端の天台教学を学び、806年