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発明論

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発明とは何か。発明の意義を考察する。
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2022年5月の記事一覧

【なぜ発明?】ただ「なぜ」を突き詰めたいだけだった。

 なぜ発明論を構築しようと考えたのか。それは既存のシステム(ルール)への自覚に由来する。 1. 昇華された時  2020年のパンデミックは私に「科学とは何か」を問わせてきた。失われる人間性、社会の不安定性。ただ「なぜなのか?」を問うには科学では狭過ぎた。その時になってようやく、根深く複雑な社会問題に気付かされた。  そんな中出会ったのがまず技術論と科学哲学であった。技術への問いかけは理性への過信を明らかにし、技術それ自体の凶暴性を露わにした。科学哲学は科学の枠組みを提示

願文 空想が現実になる世界の実現

天台宗を開いた伝教大師最澄は延暦六年(787)満20歳に『願文』を著した。これは比叡山に入り、独り修行生活をおこなった最澄が自己のありようを真摯に見つめ、深い考察のもとに純粋な理想をかかげた、格調高い文章である。 今20歳を終えようとしている私が、最澄ほどの誓願と文章を書けるとは思わない(それほど格調高い内容である)。しかし彼が『願文』を著したことで、その思想と修行の様子が桓武天皇にまで達し、宮中の役職に任命され、短期留学と共に空海と出会い、最先端の天台教学を学び、806年