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あいみょん「愛の花」レビュー ~雲が隔てる2つの世界間で会話する名曲~

NHK連続テレビ小説『らんまん』の主題歌として話題のあいみょん「愛の花」。
かなりのペースでシングルを発表しながら、そのいずれもがヒットするあいみょん。
「愛の花」は、優しく温かい雰囲気を持つ至極のバラードだ。アコースティックギターやピアノ、ストリングス、鉄琴等の音色がすべて繊細に響く3拍子の名曲に仕上がっている。

そして、注目したくなるのは、楽曲が描く世界観である。
この楽曲には、おそらく2人の主人公がいて、1番と2番、Cメロから大サビ前半、大サビ後半でそれぞれ主体が入れ替わる。
きっと男女2人の愛の交換を描いているのだろう。

それでいて、どちらが男でどちらが女かという概念すら、聴く人によってどちらとも捉えられるように作っている。

まずは、1番で描かれるのがこの世に愛する人と夢を残して、あの世に行ってしまった主人公を描く。
そして、この世で涙を流してくれる愛する人との間を隔てる雲を見下ろしながら、空が晴れたら再び愛を伝えてほしいと願う。

2番では、この世に残った方の主人公があの世とを隔てる雲を見上げながら、あの世の主人公に、空が晴れたら逢いに来てほしいと願う。

Cメロから大サビ前半では、今度はあの世の主人公が心境を語る。その中で誰もが気になるのは、疑問符が付きそうにないところに疑問符「?」が付いていることだろう。
「大切な人を失う未来なんてこないで?」
この世に必要な人だから失う未来は来てほしくないのだけど、それだとなかなかあの世で一緒になれないから、という相反する想いが行き来しているのかもしれない。
それでも、あの世の主人公は、最後にはこの世の主人公の夢が実現することを願う。

そして、大サビ後半では、この世の主人公がまだ悲しみに暮れながらも、あの世の主人公に花のような愛のメッセージを送るのだ。

雲が隔てるこの世とあの世の間で愛の交換をする2人の男女の熱い想い。

この曲を聴いて、私は、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」やCHAGE and ASKAの「no no darlin'」を思い浮かべた。どちらも、2人の男女の愛の交換を歌っているからだ。

きっとこの曲も、男女の愛の交換を歌う、2023年を代表する名曲として、後世に語り継がれるだろう。

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