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ヒラエスの向こう側を愛し続ける

私は田舎も田舎、学校に行くのもスクールバスに乗らないととてもじゃないと行けない距離にあるし、小学校と中学校が合体してる感じの田舎がふるさとです。
一回事情があって徒歩で学校から帰ったら行方不明者扱いになってしまって捜索隊が出動しちゃったことがあります。
まあそれくらい田舎。

父の勤務先の福利厚生としてロッジがあるんですが、そこの住み込み管理人してる時に生まれました。
私より1歳年上のセントバーナードがよく子守をしてくれて、自然の中でのびのびと育ちました。

小学校3年生になる前に不景気の影響でロッジは取り壊しが決定。
別の県に引っ越して、そこで父が定年になってそのままそこが実家となりました。
私は山に帰りたくてずっとどうしたらいいかを考えていました。
導き出された結論からいくと、故郷の県の大学に受かってそこで一人暮らししたらいいじゃん、と言うものでした。

勉強は大変でしたが、無事に合格。
小学校の頃の友達に連絡して、遊ぶ約束とかもしたんですが、離れている時間が長かったせいか、あんなに会いたかった友達と一緒にいても違和感。
と言うか、全員他県に行ってしまったので全然会えない。
ずっと田舎にいたからそりゃ都会に行きたいよね。気持ちはわかる。

ロッジは私の中では生家だけど、取り壊されてもうない。
唯一変わらないのは、セントバーナードお墓があることくらい。
毎年ゴールデンウィークに慣れない高速に乗ってお墓参りに行きます。
寒い地域なので、この時期に行くと梅と桜が同時に咲いているし、
お墓を見守るような位置に生えてる黄色い水仙も花が咲く頃。
水仙ってお店で入手するには12月〜1月なんですけど、5月に咲いてます。
毎年そこにセントバーナードの好物だった食パンを置いてこの1年の報告をしてます。
このお墓には生前の交代人格たちの髪とか、形をもてない私たちが生きてるうちに何かしら一緒に埋めてます。
私はまだ何も埋めてないですが、どこかのタイミングで歯科矯正で抜いた歯でも埋めておくか?と考えています。
1年の報告のあと、恒例となっている音楽を流すと、急に風が吹いてきて、桜の花びらが注がれます。
偶然だと思ったんですが、毎年こうなので、あの土地にいる誰かが喜んでいるのかもしれない。
一通り話をしたら、ソシャゲのガチャ画面をお墓に見せて、このキャラが全然出ないから出して!!って話をいつもしてます。
これが欲しいを力説した後に墓前で引くと何故か来るんですよ。
パワースッポットすぎる。

そんな私のふるさと。
でも、帰りたかった景色はもうありません。
タイトルに書いたヒラエスは帰ることができない場所への郷愁や哀切の気持ちという意味のウェールズ語です。
このヒラエスという言葉、好きな言葉です。
毎年私はお墓参りをしながら現実とヒラエスを重ねて、戻ってこない故郷の姿を感じています。
ヒラエスになってしまった大好きな故郷。
今はまだ遊んだりしたいので同じ県の都市と言ってもいいところに住んでいて、推し活とかしてるけど、定年して都市部にいなくてもいいかなって思った時は、故郷に転居したいです。
重要なところがヒラエスの側に行ってしまったとはいえ、あの土地は、地域は、生涯愛することをやめられない、私たちの帰るべき場所なのです。

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