多色刷り同人誌に憧れてレトロ印刷さんにお願いした話
2022/7/23発行の二次創作同人誌の制作記録です。
多色刷りやったことないッピ…とかレトロさん使ってみたいけどデータ作りよく分からなくて見送ってる…という人なら何か役に立つ…かどうかは分かりませんが雰囲気を感じられるかもしれません。
1. はじめに
これは、初めてレトロ印刷さんに二次創作同人誌を依頼した時の記録です。データ作りを含め、あまり無い経験だったので、備忘として残します。
以下の情報は「こういう者が作ったんだな」という参考です。
何もかもが不慣れですが、過去にどんなデータを取り扱って同人誌を発行してきたか、参考になれば…
ペイント系ソフトよりドロー系ソフトのほうが、文字がくっきり見える気がしたので、全部イラレで作業してます。今回は少し小さめ?の本なので…
2. 多色刷りの同人誌を作りたい
小説本のオフセット系セットだと、表紙は単~多色刷りが基本になっていることが多く、いつかは多色刷りに挑戦したい…!と常々思っておりました。
装丁で色々やりたいことは多いのですが、今回は装丁について、以下の仕様に挑戦したい!と試行錯誤しました。
や、、やりたいことが多い…!!
毎回なにかしら初めてのことに挑戦しているので今更です。
貪欲に楽しむことを決意します。
しかし……
不慣れなIllustratorデータの作成、ページごとのファイル管理、混色のデータ作り、初めてのロゴデザ……
欲張り過ぎた結果、再録なのに編集で2ヶ月半近くかかる地獄が始まるとは、2月半ばの頃には思ってもみませんでした。
3. 多色刷りって、データ作るの無理すぎん?
最初にぶつかった壁です。
当初はレトロさんではない、別の印刷所さんで多色刷りを検討していたのですが、ここの壁はずっと変わりませんでした。
いわゆる多色刷りというのは、K(黒)のみのデータを使用する色ごとに用意するわけですが(正しい定義は別途調べて頂いた方が正確だと思います)、『色+色が重なり合った部分の仕上がりが想像しづらい』
『データを黒一色で指定するので、濃淡でしか仕上がりが想像できない』
といった問題があります。
文章だと限界があるので、例を挙げます。
これが重なると…
これになるわけです。
いやこんなん一発で分かるか?!?!!(無理~~)
正直、全部がK100%のみの指定だったらふ~んて感じで終わるんですが、色刷りの魅力は…濃淡表現にもあるから…グラデーションとかも挑戦したいじゃん…!!!というチャレンジ心から、初めての多色刷りにもかかわらず、ドMへの道を進むことになりました。
※欲張らなければもっと簡単にできます
ちょうど直前に白版を活かしたアクリルキーホルダー制作に初めて挑戦していたこともあり、そこでの経験も活きました。
4. 試し刷りをしよう
データのみで想像できる人なら良いのですが、完全にキャパオーバーだったので試し刷りをお願いしました。
とはいえKのみ指定ができる、かつそこそこお値段がお手頃な試し刷り印刷可能な印刷所さんがなかなか見当たらず…
※試し刷りはオンデマンド印刷がほとんどで、オンデマは版を作らないので当たり前
色々探して、試行錯誤しました。
この時点で、クラフト紙+マットPP+白印刷+金で箔押し、の仕様を検討していました。
▶サンライズ
オフセットの色刷り表紙の試し刷りサービスがあります。
(今回は見送りましたが、最終手段で考えていました)
取り敢えずは白版のイメージを掴むということで、色版部分はカラーでデータを作成。オンデマンド印刷で試し刷りをお願いしました。
▶プリントオン
特殊紙の種類が豊富。オンデマ+白版可。
▶プリンパ
特殊紙の種類が豊富。オンデマ+金銀インク・ネオンピンク・白版可。
※プリンパさんは白版が下地印刷にのみ可 →スペシャルカラーについて
5. 試し刷り第一弾が届いた!
第一弾としていますが、プリオンさんとプリンパさんにお願いしているので実質2回です。
裏表紙を、香水のボトル&ムエットの雰囲気っぽいグラデのデザインにして、いろんな組み合わせを色版と白版で探してみよう! …というお試しです。この時点で表紙の雰囲気をPhotoshopを使い、PSD形式でカラーで作成しました。
基本的に白版は下地としての指定になっているので、白版の上に色が載ります。
【プリントオンさん】
ここからイメージに合うものを選び、配置していきます。
【プリンパさん】
裏表紙の白版のイメージを掴んでから、表紙のイメージを作成。
金の箔押し部分に金インクを使ったイメージで、プリンパさんにお願いしました。
デザイン上、白が見えるようにしたい部分は、色版から白が乗る部分を刳り抜いています。
※何処かに紛れてしまい、実物の写真がありません…
と、ここで…
オンデマカラーがめちゃくちゃテカりまくるのが気になり、やはりオフセット…?と考えていたところに、レトロ印刷さんの試し刷りサービスを思い出しました。
【レトロ印刷さん】
レトロさんは孔版印刷という版画のような手法を使っています。
イメージ的には単色の上に単色をのせる印刷なので、多色刷りのイメージがお安く分かるのでは?!という完全に下心でした。
レトロさんのインクの特徴は「全色がオフセット印刷の特色」のイメージです。
そこでお願いしたのがこちら。
め、、、めちゃめちゃ可愛いが?!!?!!!
全くテカらないしグラデがイメージ通り…!!
どうせなら(?)マットPPをかけて金インクのイメージも試したい!
でも下地の紺を、上に乗る色部分でヌキにした方が良いのか、混ざった方がいいのか、金の下に白を入れた方が発色が良いのか分からない…ので、3パターンをお願いしました。
それがこちら。(インクは上/中/下の順で乗っています)
どれも可愛い…そして3色刷りはけっこうズレる!というのを身を以て知る…
……と、この時点でレトロさんでお願いしようと決意。
6. レトロ印刷さんに決めた!
今まで憧れていたけど使ったことがなかったレトロさん。
イベントで数冊、レトロさんで刷られた御本を手にすることがあり、感動した思いもあり…いつかは!と思っていたので、今回初めてお願いしました。
何故今までお願いしたことがなかったのか?というと、完全に自分の作品の特徴からNGが出ていたからです。
今回、どうせなら本文も文字だけじゃ寂しいし、SS・掌編・短編を集めてるので章扉にロゴとか表紙っぽいものをデザインしよう!と思い立ちます。
しかも、マットPPのモニターを募集しており、ちょうどクラフト紙にマットPPを使いたいところだったので渡りに船!という状況でした。
このように、レトロ印刷さんはかなり仕上がり・仕様が特徴的です。
「あそびかたろぐ」という印刷見本や混色見本を一度取り寄せて頂くと、もっとイメージがしやすくて楽しくなるかもしれません。(あそびかたろぐは試し刷りと一緒に注文もできます)
「レトロ印刷トライアル」というポストカードも、混色の雰囲気の見本として素敵な作品が多いので、見てみると面白いかもしれません。こちらは、フォロワーさんに教えて頂きました!
https://jam-p.com/?mode=srh&keyword=%A5%EC%A5%C8%A5%ED%B0%F5%BA%FE%A5%C8%A5%E9%A5%A4%A5%A2%A5%EB
このあたりは、HPをぐるぐる歩き回って読んでみるほうがイメージが掴みやすいかもしれません。
こちらのnoteも参考にしました。
7. お見積もりをお願いする
レトロさんの(個人的な)ハードルが高かった理由のひとつとして、お見積もりが必ずメールフォームで問い合わせというところでした。
いつも装丁の仕様を4案くらい考えているので、自分であらかじめ価格表を見たり自動見積で何度も何度もウーンウーンと作り直したりしているオタク。都度お見積もりを依頼するのは、ちょっと緊張する。
でも今回は正方形本作るし、何も聞かないと分からん…
台割表を作成し、検討中の紙やインクの種類・数を記載したものを見積時に送付して依頼しました。
齟齬無く伝われば良いので、以下は自分の送った表の参考です。
レトロさんは紙の価格、刷り色の数ごとの価格もHPに記載が無いので、絶対に問い合わせないと正確な価格が分かりません。例として挙がっているものは、自分の本と仕様が異なり過ぎてあまり参考にならず…
お見積もりのやり取りで、色々試行錯誤してしまうので、紙について価格表など可能であれば提供頂くことはできますか?と問い合わせたところ、
……とのことでした。
な、、なるほど~~~……!!
ちなみに、紙の価格は紙の紹介ページの上が低コスト、下にいくにつれ高コストになる、という目安も教えて頂きました。
そして「金インクの価格は冊数によって変動するため一概に算出ができない」とのこと。本当に複雑で、手作りなのだなあ、、と納得。
やりたいことと単価、頒布価格のバランスなどに困っていたところ、色々アドバイス頂きました。
やりたいこと全部伝えて普通に聞いたほうが早いですね(当たり前)
ここでほぼ仕様を決定します。インクは金などの特殊なものでない限りは価格が同一なので、使うインクは仮で考えました。
同人の印刷所さんでは本文の紙を替えるとなると、紙代+作業費がかかることが多いですが、レトロさんは紙代のみ!やりたいことがあった&使いたい紙があったので、色々妄想します。
8. 孔版印刷用のデータを作る
色々やるうちに具体的にどうしたいのかが見えてきたので、製本の試し刷りを依頼します。
製本の試し刷りといっても、印刷したいページは一部だけで他は白紙OK、といった方法で試し刷りをしました。
章扉のデザインをするのに四苦八苦し、とりあえずグレスケ(K)でデータを作ります。
本文は、Wordで作成→PDFで保存(PDF形式はトンボが不要なので、PDF出力すればそのまま提出できます)
レトロさんは「1データ=1色」なので、よくある印刷所の指定方法のように1データの中にレイヤーで箔押しや白版指定…といった方法は不可になります。
かつ、「1ページ=1データ」です。つまり、1ページに3色ある場合はデータが3つ必要になります。
データの作り方ページを熟読しました。
全体のデザインを作ってから、それを色ごとに分ける…という作業をしました。分けてから濃淡をつけるなどの調整もしました。
例に挙げた水滴のデザイン、何故そんな地獄みたいなデザインにした?ってくらいわけがわからなくて混乱しました…完成したデータを見ると呆気ないものですが…
9. 試し綴じ到着~最終調整まで
変形裁断だったのですが、裁断済みの状態で届きました!
それがこちら。
可愛い(T-T)
正方形本初めてだったり何だりで、嬉しくて何度も捲ってました…。
1部かと思いきや4部送られてきたので、ここで仕上がりの個体差も見えてイメージが掴みやすかったです。
色の載り具合や濃度など、細かい部分をここで確認します。
視認性に不安があったページもここで確認し、修正します。
→ 修正後(届き次第比較画像載せます)
→ 修正後(届き次第比較画像載せます)
10. 入稿
そして……部数アンケを終え、入稿しました!
実物が届いたらまた色々写真を追加しようかな~と思います。7月のオンリーの後にお披露目になりそうです。なかなか落ち着かないので…
備忘録なのでこのタイミングで?!という感じではありますが…もしなにか参考になれば、というメモでした。