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犬のピピの話 292 桜の木の近道をする犬

 こうして、ピピを散歩させるわたしと、ちびいぬを散歩させるピピは、家の前をくねっていく黒いアスファルトの古い道を東へ進み、三軒ほど過ぎたところで、南の山へつづく白いあたらしいコンクリートの細道をのぼっていきます。

そのままつづくコンクリートの階段と、また少し坂道をあがったら、今度は、古い古い石の階段です。
階段の両側には、桜の木々がトンネルをつくるように、こんもりとたくさんの緑の葉っぱをしげらせています。
この道は、金毘羅(こんぴら)様のお堂、といっても本当に小さな小さなものですが、昔、このあたりが船や人でにぎわっていた頃、海の旅の安全を祈る大切な場所だったのでしょう、そのお堂につづいているのです。 

階段をのぼりきると、古い、まるい、おおきな石の水盤(すいばん)が座っていて、その中には透明な雨水がたまり、木の葉が浮いていました。
わたしとピピとちびいぬは、そこで金毘羅様を離れ、山のふもとあたりをずっと平行にはしっているコンクリート壁の上の草地をいくのが決まりです。

それで、わたしは石の階段をおりて引き返すのですが、ピピはいつでも
「ざざざっ!!」
 桜の木の下の草むらを、たのしそうに笑ってとんで、近道をするのです。

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