犬のピピの話 301 砂で体を冷やす犬
ジャングルジムの向こうでひかるピピのふたつの目を見すえつつ、それでもわたしはあきらめずに、じわじわ、じわじわと追いかけます。
ピピはぴょんぴょん逃げますが、さんざん走ったあと、またまた逃げているうちに、すっかり暑くなってしまいます。
そこでピピは、雨にぬれてほどよく冷えた砂の上に
「どたん!」
からだを投げ出すのです。
いっけん無防備に倒れながら、ピピの顔は用心深く、抜かりなく、わたしの方をキラリと向いています。
じつは、わたしだって汗だくの、へとへとの、ホカホカなのですが、ここであきらめると飼い主の沽券(こけん)にかかわるので、おごそかな威厳(いげん)をたもち、まだまだ鬼モードで近づいてゆきます。
するとピピは
「ぱっ!!」
小鳥が飛び立つみたいに立ち上がり、また耳をひらめかせて逃げていくのです。
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