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vs讃岐(3/13)A レビュー【2022松本山雅】

・A讃岐戦レビュー

後半アディショナルタイムでの劇的ゴールで逆転勝ちした山雅。
プレビューで述べた通り、トレーニングマッチが飛んでいる分苦戦し、想定通り勝ち点1を取りに行く試合になるかと思われたが、前半終了間際の横山のゴールで風向きが大きく変わった。
約半年ぶりの勝利の味を噛み締めながら振り返りたい。

・スタメン

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山雅は4-2-2-2と表現するのが適切であろうか。
後述するがSHの役割が通常の4-4-2と異なっている。
守備時には4-4-2でブロックを組む。
メンバーとしては、米原の起用が情報が出ていなかったため、サプライズ。コロナでコンディションが整わない影響もあったか。

讃岐は3-1-4-2でラインナップ。
いぬねこ的注目選手青戸はベンチスタート。
新卒時代山雅に加入する噂があった松本孝平とユース卒ルーキーの小山が2トップ。両サイドの臼井と内田はそれぞれ関学・国士舘からの大卒ルーキー。

・山雅のベース戦略

攻撃時には大きく可変するが、一定の形を意識している訳ではなく、原則的な位置関係を作り出すための可変だった。

基本的に最終ラインに降りてヘルプするのは米原。
利き足の関係で、常田の横に降りてくることが多かったが、中央・右にも降りてくることが多かった。(パウリーニョは中央からあまり動かず、バランスをとっていた。)
そのため、左SBの下川が早めにワイドの高い位置を取り、左SHの佐藤が内側に位置取る。

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この三角形を中心に、その先で的になるルカオ、裏に走る横山、内に寄ってくる龍平という構図ができていた。
これを両側で簡単に図式化すると3-1-4-2のような形になり、当初用意していた形との親和性がより強く見られる。

また、可変があるからと言ってパス回しにこだわる訳では無い。
FWにはフィジカルの強い面々が多くそろうこともあり、ロングボールで相手を押し込み、セカンドボールを回収することで2次攻撃に繋げることが出来ていた。
このセカンドボール回収においても、中央の枚数が厚く、中央にバランスを見て動くことが出来る選手がいるという可変のメリットを活かすことが出来ていた。

・リスク管理という課題

そして、そのような可変には穴がある。
そもそも4-4-2というフォーメーションはそのままでバランスがいい反面、ズレを作り出そうとすると自分達が大きく動き、バランスを崩す必要があるということ。
今回の山雅で言うと、2CBが可変後に晒されることになり、その脇を突破されると非常に危険だった。

そして、失点はボールロストからその脇を使われた形。

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失点前の配置を図式化すると、右SBの前が中央まで来ているのが分かる。
そうすると後ろに残っているのはパウリーニョと2CB。
讃岐の21番臼井に対して山本が追走していたものの、宮部としては小山とどちらを見ればよいのかが難しいシーンを作られてしまった。

このシーンのリスク管理としては、フィールドを横断して動いた穴をどう埋めるかを徹底することか、横断しないということに尽きる。
露骨に埋めに行くと可変の意味が薄れるし、かと言ってインナーラップした選手の行動制限をすることは合理的ではない。
今節において、シンプルな解決策がインナーラップしない状態にすることとはなったが、構造としてどのようにリスク管理していくかひとつ課題を持ち帰ることが出来た。

・SHの役割とキャラクター

前述の失点シーンからもわかる通り、右サイドでは少し違った形の変化を実行していた。
もちろん米原が遠いサイドではあるため、ボランチが落ちてきて捌く役割をそのままSBの前が実行していたこともあるが、左利きの山本が外にポジショニングすることが多く、前が外の高い位置を取ることが少なくなっていた。
その代わりに前が内側の高い位置を取ることがあり、失点の一連の流れの中でも前が左サイドまで出張している。

そして後半開始から山本に変えて菊井を投入。
菊井の特徴として、中央でパス交換しながらの突破や、ヌルヌルとしたドリブルが見られたが、状況に合わせて内外の広いエリアを1人でカバーすることができていた。
その事で前はより外の高い位置を取ることが可能になり、それが後半の攻勢に繋がったと言っていい。

上記のことから、SH1人のキャラクターが違うだけでローテーションの仕方を臨機応変に変化することが出来るという可能性を見ることが出来た。
今日の試合に関しては相手が2トップであることも手伝い、よりSBがシンプルにリスク管理しながらプレーできる可変がハマったが、対戦相手によって異なるだろう。

このSHのキャラクター分類を大雑把に3種類に分けてみると、

①シャドータイプ
②インサイドハーフタイプ
③ウィンガータイプ

に分けることができると考えている。
讃岐戦で言えば、菊井はシャドー、佐藤はインサイドハーフ、山本はウィンガーのように振舞っていた。(ただ、基本は山本にも菊井にもインサイドハーフのような振る舞いは求めており、ベースはここにあると感じた。)

結果的に山本に対して名波監督が求めているタスク自体は見えづらかった試合にはなったが、相手が4バックの場合には幅をつくり相手を広げるための有効な手に感じた。
ここには田中パウロや村越も該当してくるだろう。
表原は菊井と同じ役割(ポジショニング等)を山田・住田あたりは佐藤と同じ役割をすることも可能であるように感じる。

また、SHの属性に伴い、相性のいいSBが存在するようにも感じた。
例えば山本とのコンビネーションであれば、内側を使いやすい浜崎の方がスムーズになるだろうし、原則通り大外を開けてくれるのであれば吉田・安田・外山あたりも面白い。この3人を利き足と同サイドのSHに配置することも可能だ。

今後の試合もメンバー構成から、どのように攻めていきたいのかを見ることができるのは、ひとつ楽しみである。

・匂う流れからの得点

今節ではセットプレーから2得点となったが、流れの中からでも十分得点の匂いを感じることが出来た。
ただ、そこまでアタッキング3rd侵入に対して形をこだわっているようには見えなかった。

多く見られた形としては、FWがワイドに流れて深さを作り、戻しを貰ったところからクロスというパターンだが、中央でのパス交換もあり、ミドルシュートゾーンへのマイナスの折り返しもありと多彩な攻撃を見せてくれた。
セットプレーを軸とし、流れの中からも得点をすることが出来れば、より相手にとって脅威となり、有利に試合を運ぶ展開を作りやすくなるだろう。

・大所帯の調理が楽しみな結果に

最終盤に外山を投入した段階で、3CBにしていた事にリアルタイムで気づいていた人はそう多くないだろう。
1枚キャラクターを変える事で、それほどスムーズに役割分担を変え、原則を維持することが出来ているのは、現時点での完成度としてはかなり順調に来ているのではないかと感じた。

まだ個性的な選手もベンチ外に控えており、試合ごとに様々入れ替えていくことも可能。現実的に可能性が高いのは最終ラインのキャラクターを変え、3バックベースで可変をしていくパターンになるか。
また今節は、個々のコンディションはバラツキがあるように感じたが、徐々に戻していくことが出来ればよりパワフルな山雅を見られるかもしれない。
昨シーズンのようにけが人が(現時点で)出ているわけではない事も好材料。
おそらく戦術選択・メンバー選考において対戦相手の特徴等を踏まえて能動的に実行できる状態を維持していくことが理想になる。特に本稿でも述べている通り、キャラクターによってローテーションをいじる事が出来る強みを失いたくないシーズンになりそうだ。

原点回起