表紙

【フィアスコリプレイ:閉じたる村落】⑤ ~熊伝説の村~残響

※このリプレイには近親相姦・獣姦・食人要素などが含まれております。

【残響】

灰熊により村は壊滅し、黒熊と志緒の死をもって血の儀式も終わりを迎える。
真雛と灰熊は己達の身を生贄に、円環の呪詛を行った――

■PC1:鈴鹿志緒(白2黒2)
白ダイス6 黒ダイス8 =黒2
黒2:惨状
まず手始めに癒えることのない傷。それから酷い大失敗に至るまでの間に、持ち物は切り裂かれ、吹き飛ばされ、焼き尽くされて無くなるだろう。大事なものに別れのキスを。死ぬ可能性だってあるのだから。

鈴鹿志緒:残響(死亡)
ずっと生贄としてそのうち消える運命だと思う事は、ヒロインめいた願望を叶えてくれた。それは自尊心を満たしてくれて日々楽しく生きていた。
特に疑問ももたずに高校には行かずに家の手伝いをして、
特に疑問ももたずに御熊様を敬えと言われた事に従い、
特に疑問ももたずに弟への感情を愛情とする。

何故なら私はそのうち「消える」のだからと、自分で選んで来た事を「選んでいない」と信じた。 私が犠牲になれば世界は救われるのだと思っていた。 でも、世の中そう上手くはいかなかった。
生贄として死ぬ事が幸せだと思っていたのに、そうならなかった事。
救いたかったはずの村は燃えて、村人もほぼ生死不明の状態にある事。
腹に大切に抱えていた子ともども文字通り引き裂かれて喰われて終わる人生は、まさに”惨状”という言葉が適切だった。

「村を出る」と大志が言っているのを聞いた。
直接ではない。たまたま、立ち聞きしただけ。 …だから、どういう事なのかは確かめていない。
確かめて聞きたくない事を言われるのは嫌だから、聞いたりもしない。
村にいれば安全だし、平和だし、ずっと一緒にいられるのに。
 (いつか何かが起きて、私が生贄で死ぬまでだけど)
大志が外に行っちゃったら、もう一緒に居られなくなる。

だから、橋は、落とした。
 
これですべて上手く行く。昨日と同じ明日が来る。
子供の事話したら、どうするだろう。知りたいけど知りたくないな。
…まだお腹目立たないし、考えなくてもいいか。
だって、もう何も起きないもの。また御熊様のお世話をして、ひなちゃんとお話しして、のんびりしていれば良い。
アタシはそのうち、御熊様に食われる日が来たのなら、村が平和であればいいと祈って終わればそれで良い。
 
だったのに。
 
大志は大志であって、御熊様ではないのに、これじゃあ何も救いなんてない。  何を、祈ればいいんだろう。  ちがう、何を呪えば——。


■PC2:慶(白1黒3)
白ダイス5 黒ダイス14 =黒9
黒8~9:書くこと無し
振り出しに戻る。もしかしたら昨日や明日と同じように、痛みに苦しみ、無一文であるかもしれない。しかしおそらくそこから何かを、そう次はどう上手くやればいいのか、といった事を学んだだろう。そう次こそは……。

慶:残響(死亡/ループ)
獣となった大志の咆哮と志緒の悲鳴に、闇に消失したと思われていた意識が目覚める。
身体の下には蹂躙された雛菊の姿があり。
振り返れば獣に食い散らかされたような無惨な菊臣の姿。
村人達は地面に倒れ、儀式の台座は血に塗れ、志緒は自分ではない獣に食われている。
そして真雛の狂ったような笑い声。
何が起こったのか。必死に記憶を辿り思い出したのは、
黒い獣に突き飛ばされ恐怖に歪んだ菊臣の顔だった。

慶はその場から駆けだして行く。
大志の銃弾や雛菊の小刀につけられた傷口からボタボタと血を流しながら
山を駆け、燃える木々の中に飛び込み、それでも止まらずに走り続け
かつて母が飛び降りた崖から身を投げる。
炎に巻かれた黒い身体は、落下していく途中、白い光に包まれて消えた。


―鈴鹿の家の屋根裏部屋―

熊としての寿命を感じはじめた今日この頃。体はだるく痛み、そろそろ自分の命も長くないだろう。
村人達は皆同じ顔でいつもと変わらぬ日々を過ごしている。
違って見える顔と言えば、
志緒。人形のような目。開放してやりたいが、自分が死んだところで志緒が生贄であることは変わらない。
何よりも彼女が望まない。この因習の村が変わらず続くことを平和と願う哀れな女。
菊臣。優しい目。自分を慶と呼んでくれる。彼への手紙を書く時。彼からの手紙を読む時。
ひっそりと庭で話をするとき。彼の傍では人として居られような気がする。愛しい菊臣。
殺意の目。そこにある事情は何となく察していた。それでも彼女は忌憚なく菊臣の傍にと願える。
自分が雛菊であったなら…。あの可憐な姿をいっそ…。何も知らない無邪気な女。
大志。…彼の目はよくわからなかった。姉を繰り返し犯す自分のことをさぞ恨んでいるだろう。
だがその目は雛菊のものとも違う。それが何なのか、わからない。

そんな物思いにふける。この場所ではそれくらいしかすることがない。…あるいは志緒を呼び出すか。
最近特に思い出すのは、小さい頃に世話になった真雛のことだった。
何故真雛はいなくなってしまったのか知りたい…
そこへ橋が落ちたという知らせが届く。

慶:(知らせを受け、志緒を伴い橋を訪れる。頭からすっぽりと白い布を被った姿。落ちた橋を見ても動揺することなく)「…それで、志緒。誰かが落としたというのは?」
鈴鹿志緒:(数歩後ろを従うように視線を伏せがちに歩いてくる。呼ばれると、手すりの端を屈んで手繰り寄せて切り口が見えるよう掲げ)「…此方をご覧ください。 切り口が、鋭利で。刃物で切断されたように見えました」
慶:(身を屈めるようにして差し出された切り口を覗き込む)「確かに。」(元々老朽化した橋だったが、この切り口は間違いない。志緒の言う通り何者かが切断したものだろう)
慶:「…グルル。」(思案気に低く唸る。他に手がかりはないかと辺りを見渡し、ふと地面に何か輝くものを見つけた)「…っ…」(歩み寄ろうとしたが体に走る痛みに一度歩みを止め、志緒を見る。擦れ、と)
鈴鹿志緒:「近くに刃物などはなかったので、犯人は分かりません」(首を振って再び手すりを投げ捨てて慶の動向を見守るように下がったが、此方を振り返る視線に訝し気に首を傾げた後で微かに頷いて。断りを入れてから静かに背から腰にかけて擦る)
慶:(軽く頷いて触れることを許す。無言のまま、そうしてしばらく擦られると身を起こして)「良い。」(下がるよう促し)
鈴鹿志緒:(促されると、手を止めて一礼と共にまた距離を取る。邪魔にならないようにと下がった位置で控え。何をするのか見ているが、時折、橋があった方へと視線が向いていた)
慶:(普段通りのやり取り。距離を置いて立つ志緒の様子を一度振り返って見るが、何も言わずまた背を向けて。先ほど見つけた「何か」の方へ)
慶:(そこには白い貝殻の耳飾りが落ちていた。胸がざわめくのを感じながら拾い上げる。
間違いない。これは真雛の物だ。菊臣に知らせなくてはと手の中に握り締める)
慶:(菊臣。愛する菊臣。愛おしい。とても、とても、とても、愛おしい——)
慶:(喰ってしまいたいほどに)


■PC3:和村菊臣(白2黒2)
白ダイス4 黒ダイス9 =黒5
黒5:悲惨
まず手始めに、あとのことを省みることのない勢いで痛めつけられる。そしてこれから先の落ち目の人生ずっと、今回のエピソードを思い出すことになる。学んだ教訓は重要でかつ覚めやらず、苦痛に満ちたものとなる。

和村菊臣:残響(死亡/ループ)
(夜更け、両親はもう寝静まった頃。卓上ライトの明かりだけが照らす薄暗い自室に、荒い呼吸音が響く。寝台に腰掛けた目前に、妹の白い裸体がうずくまっている)

「——……雛菊」

(名を呼ぶと目を上げるので、左手を伸ばして頭を撫でてやる。床に四つん這いになった妹の上には、黒い獣がのしかかって荒く早く呼吸しながら腰を振っている。
 妹を撫でた手をさらに伸ばして、妹を犯す獣の毛皮に触れる。出来るだけ、よく似た色の、よく似た手触りの犬を選んだけれど、村が終わった時に触れた彼の物とはやはり違う。それでも、生きた獣の体温を持った手触りは、あの時を思い出させる)

(妹が獣に犯されるのを見ながら、手淫に耽る。目を閉じると脳裏に浮かぶのは、大きな熊に犯される女の姿。熊の姿は揺らぐことなく、しかし、犯されている女が、妹なのか、生贄の巫女なのか、それとも母なのか、はっきりとしない。 短く息を吐き出して達すると、瞼を開ける。目の前で、犬はまだ妹を犯し続けている)「雛菊、俺はちょっと出かけて来るから、最後までするんだよ。後で、ちゃんとやったか確かめるからね」(16年かけて従順に馴らした妹が頷くのに目を細める。ウェットティッシュで手を拭いてから、もう一度、妹の頭に手を伸ばし、傾いた雛菊の髪飾りを直してやった)

(服を直して立ち上がる。床の妹を見下ろしながら、いつか義母が真雛のようになったらと心配していたのを思い出す。「安心してよ、義母さん。俺が熊でなく犬に欲情するように躾直したから」と、心のうちで嗤う。
 胸を焦がすのは嫉妬。あの時からずっと、狂おしいほどの嫉妬が身の内にある。僅かでも癒されるのは、鈴鹿の屋敷の屋根裏の窓を見上げる時だけ。窓の中に彼の姿を見る時だけは、親友でも構わないと思える。だから、今夜も彼に会いに行こう)

「……慶」

(誰にも届かない小さな声で名を呼ぶと、胸の奥がほんの少しだけ暖かくなる。村はまたきっと終わるのだろう。彼はまた死んでしまうのだろう。でも、どうか、それまでは——。
 そうして、妹をおぞましい欲と共に置き去りにして、暗い部屋を出て行った)


■PC4:和村雛菊(白2黒2)
白ダイス5 黒ダイス6 =黒1
黒1:凄惨
おそらく死ぬ。他人も、それもおそらく罪無き人も同様に死ぬ。そこには正義も慈悲も何もない。すべては完全に余すとこなく台無しとなる。しかもそのすべては君に責任がある。

和村雛菊:残響(生存)
“ひなちゃんは、おりこうだね”
お兄ちゃんの優しい声が好きだった。撫でてくれる手が好きだった。笑ってくれる目が好きだった。
——お兄ちゃんが、好きだった。

光のない瞳はもう何も映していない。
昔みたいに、と。
小さく動かした唇から漏れた願う声は、村中に響く悲鳴や怒声に掻き消されただろう。
 
やがて、村に静寂が戻り、山の麓から薄らと朝日が昇る頃。
少しばかりの生き残りと共に、近隣の村に保護される事になる。
正常な思考は、もう取り戻す事がなかった。
虚空を見つめてぼんやりとしたり、狂った笑い声をあげたり、おにいちゃんと呟いたり、村はずれの場所で廃人のような日々を過ごす事となる。
 
数ヶ月程度、子を孕んでいる事が発覚する。
人間よりも随分と早い期間で産み落としたのは、黒の毛並みの、熊の子だった。
ぎょろりとした双眸と視線が合うと、いつかの記憶が濁流のように流れ込んで来る。

「この村はもう駄目だ、胆が必要だ、どうしても」
「あの猟師には、女を生贄として与えて」
「喰われておくれ、村の為に」

ああ、そうだった。
自分は元猟師の原初の熊に生贄として捧げられた女であり、全てを呪いながら贄となったのだった。
あらゆる恨みと憎悪が女の全身を包んだ瞬間、産みおとしたばかりの熊が己に牙を剥く。
鋭い痛みが喉に走り、目の前が真っ赤に染まった。あの時と、同じように。
 
「全て、全て、滅びてしまえ」
 
呪詛の言葉が、風に乗って村へと響いた。


■PC5:鈴鹿大志(白3黒1)
白ダイス10 黒ダイス5 =白5
白5:陰惨
派手に満天下で侮辱され、かつての名声はいかなるものも、砕け地に
落ち恥辱にまみれた。これらの日々を思い出すときには、自ら進んで墓穴を掘りに行ったという恐怖にいつも身震いしてしまう。

鈴鹿大志:残響(生存)
――己の中の獣の猛り狂う闘争心と飢餓は、灰熊の一撃に薙ぎ倒された。
地面に叩き付けられ、毛皮を剥ぎ取られ、自分はただ無力な半人となって横たわる。
せめて、とどめをと望んだが、灰色熊は喉を割いた真雛の元へ向かい、自らの躯を爪で引き裂き、折り重なるようにして死んだ。
灰色熊が倒れる一瞬、その場が白銀の光に染まったが、それきり何も起こらず、血と肉片で赤く染まった村にはごく僅かな呻き声と泣き声だけが残った。

雪が、静かに降り積もり、穢れた地面を白銀で覆っていく。
 
村は滅び、慶は死んだ。僅かな生き残りから隠れるように村はずれの洞窟へと向かい、中に篭った。
季節は秋から冬へ、山には雪が積もり、半端な毛皮しか持たない自分は凍えるばかりだ。
鋭い爪は折れ牙も砕け失ったが、手や足は獣のそれのように丸まり、腰は曲がった。
獣の鋭敏な感覚は村の死臭と共に過去の記憶を何度も何度も鮮烈に蘇らせる。
 
志緒。雛菊。助けたかった。救いたかった。
こんなことになるなんて思わなかった。
うまくいくわけが無いのだとわかっていた。
おれは。
菊臣の光の無い眼球が闇の中から自分を見ている。慶。兄さん。おれはどうすればよかった。ただ二人が死ぬところを見守ればよかったのか。どうすればよかったんだ。

悔恨は尽きず、洞窟の中で独りきり苦しむ。子を噛み砕いた瞬間に広がった血の味を思い出すたびに僅かな胃の中のものを吐き出し、自分のしでかした事に対する恐怖に身悶える。
 
眠る時に見える夢だけが僅かな救いだった。村はいつもどおり、自分は志緒と一緒にいる。志緒は慶に呼び出される。あの時と何も変わらない、繰り返される悪夢。夢は最後には地獄へと変わり、菊臣は熊に食い散らかされ、雛菊は熊の子を孕み、自分は繰り返し兄を撃ち何度も志緒を犯して食い殺す。

苦悶と後悔の中で目を覚ますと、夢が他でもない現実だった事を何度も理解する。

知っている。何もかも理解している。
自分は未来永劫誰も救えないし救われることも無い。

地を覆い隠していた白銀の雪はやがて解ける。
春と共に、地には新たな呪いの芽が生み出され――


【残響 終了】

【舞台設定~第一幕一巡目】
【第一幕二巡目~転落】
【第二幕一巡目】
【第二幕二巡目】

・ログはまとめにあたり編集されています。
・どどんとふを使用して7日×3時間前後の合計20時間程度かかっています。

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