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103号室 らっきょう便

(2020/6/1)

月が変わって久々の出勤。
在宅勤務になったのがまだ曇ってたりすると肌寒くもある4月の上旬だったから、いきなり夏のオフィス街にほうりこまれたという感じがする。仕事は楽しいし全然ストレスもないんだけど、昼休みに職場近くの公園で弁当を食べているときに見知らぬ人々の嫌な会話が耳に入ってしまって消耗した。

僕は誰かに起こることは確率や程度の差こそあれ自分にも起こりうることだと思っているから、自分かわいいということを出発点として差別とか、偏見とか、死刑制度とかには断固反対で、しかし僕も別の場面では同じように人を蔑んだり不用意に傷つける言葉を発してしまうことがあるということも自覚していて、自分自身の偽善にイライラしたりもしている。ともかく、最近は端的に悲惨なニュースが立て続いて、なんかそういうことに対する抵抗力が落ちていたんだと思う。本当は今こそきちんと言葉で戦いたいのだけど、それも少し休んでいる。まあとにかくそういう積み重ねもあって、見知らぬ人への苛立ちのあと、ちょっと心が萎れてしまった。

久々に街に出てきたので帰りに本屋かギャラリーに寄るのを朝から楽しみにしていた。こういう日は本屋に限るので、toi booksに寄る。次来るときに買おうと決めていた『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』と、あと詩の本を2冊ほど。店主の磯上さんに大変ですね、と言うと、頑張りましょうね、と言って小さいガッツポーズをふたつ、ぴょこぴょこっと作ってくれた。
「ぬいしゃべ」をこんな日に読むことになったのは出来すぎた偶然という感じもするけど、そんなこととは関係なく(なくはないけど)登場人物たちはあまりにも自分の中に「いる」と思った。


この前パックで買ったらっきょうは炒め物や浅漬けにしてだいぶ減ってきたんだけど、傷んだり芽が伸びたりしてきてちょっと消費ペースを上げる必要が出てきたので、てきとうにレジ袋に小分けして101と203のドアノブに引っ掛けておいた。あとは庭に植えてみようかとも思ったけど、猫が来るのでなんかあると寝覚めが悪いなと思ってやめた。自炊に関しては多少マメになってきたものの、本格的な漬物に手を出すほどにはまだ自分を信用できない。

(クリタ)

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