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子宮体がん7_全身麻酔について

子宮体がんで、子宮と卵巣・卵管を摘出するための手術で、私は始めて全身麻酔というのを経験した。
前日、麻酔についてのレクチャーがあり、ほぼ大丈夫ではあるが、万が一麻酔から目が覚めないということもあるので、それを理解したサインをするように促される。

私の場合はさらに、
甲状腺の腫れが気管をグニャリと曲げていて、気管が一部細くなっている。
今回の内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」の腹腔鏡手術では宙づりじゃないけど足が上に頭が下に傾いたまま手術を施すので上半身がむくみがちでプラス甲状腺で気管が細くなっているので、息苦しくなる恐れがあるという。

さらに…、
私は風邪をこじらせて入院していたので…(COVID19が日本でも流行する半年前の話)、麻酔中酸素の管を喉に通しているがそれを引き出したとき、痰がのどに詰まるかもしれないと脅かされた(これは脅しではなく、現実のことになったのだが…)。

「それでもサインしてください!」と言われて
『絶対、嫌じゃん!って思うけどサインしないと手術もできないのだろうな…』と迷っていたら、少し時間をもらえることになった。
すると、主治医のナンバー2の先生が慌てて走ってきて「今回手術しないと、次いつできるか分かりませんよ~」と脅してきた(これは本当に脅しだと思う…)。
私だって、バリバリ手術する気満々で入院しているから、手術しないで帰る気はないけど…。
「死んでもいいので手術してください!」とサインする気にはなれない…。
結局迷った時間は一瞬で「手術お願いします」ということにはなったのだが、全然納得はしていなかった。

このやりとりで、甲状腺の腫れや風邪の痰のことから私の命を親身に考えてくれたのは、麻酔科の若い女医さんだけだな…と思い、彼女が夜に同意を聞きに来たときは「〇〇さんを信じます!手術お願いします」と彼女の手を握ってサインをした。

手術前から主治医の先生は回診でもムッとした顔でサラッと「どうですか?」というだけで信頼関係を築けていなかったし、おつきの先生たちも私じゃなくて主治医のことしか見てない感じだったので、私が自分の命を懸けたのは、新米の(もしかしたらインターン?)若い麻酔科の女医さんだった。

手術当日は、麻酔科の先生はベテランの女性と前日の新米先生の二人が担当された。
ベッドに横になって「麻酔入りまーす1.2.3」で私は雲の中に吸い込まれるようにスーッと記憶を失っていった。

術後、名前を呼ばれて目が覚めるあの瞬間…、半世紀生きてきて一番気持ちのいい瞬間だった。
それこそ、モクモクの雲の中から、ヌーッと浮き上がってくるような浮遊感の快感は今も忘れられない。

しかし、喉から酸素を送っていた管を抜かれてからは一気に地獄に落とされたのだった・・・。
「ぐ・ぐ・ぐるじ~~」痰がのどに詰まって息ができなくなってしまったのだ!
「死ぬ死ぬ死ぬ~~~!」「痰が苦し~~」と叫ぶ私に、周りの先生が騒然として痰の吸引が始まった。

腹腔鏡手術といっても傷口があるのに、身体をくの字にしてゲホゲホゲホ、全力のカーッぺッ!と痰を吐きだしたとき、『えっ、人前で全力のカーッペッ!痰出し…恥ずかしすぎる!、そして術後すぐに腹圧かけまくり…、いいの?いいの??私の傷口大丈夫なの???』と思いながらもあまりの息苦しさにパニック状態だった。
最終的にゼーゼーした状態で「あとはこのくらいの痰は我慢して」と言われ吸引もやめられた。さらにベテランの麻酔の先生にPHSで次の現場への移動の催促の電話がかかってきている様子を察知して、喉が痛くて声が出ないのに、目も明かないのに「先生…先生…ありがとうございました」と麻酔の先生の手をまさぐって握手をして先生を送り出した。息できなくて死にそうなのに礼儀は欠かさない自分に笑ってしまったり、こういう端々に人間性がでるのだなぁと俯瞰する自分もいた。

HCUでうつらうつらしていると、ベッドで運ばれて来るなり「カーッペッ」と激しい痰出しをするおじいさんがいて、他人事でも自分の状態を思い出して血圧が上がった。
『おじいさん大丈夫かな?息できるかな?』と思いつつ『やっぱりカーッペッやる人いるんだな…』と少し安心する気持ちもあった。

全身麻酔を経験して言えることは「風邪ひいた状態で手術はしない方がいい!」ってこと。
次は無いと決めているから、周りで誰かがそんな状態の時は入院や手術を先延ばしにすることを勧めようと思っている。

だけど…
コロナ禍、次がいつできるか分からない・・・そういうことも人生あるから…、やっぱりできる時にしたほうがいいのかな? 

「手術前は風邪をひかない!」よく言われていることだけど、これが正解だ。


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