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舞う

フィクションです。

アタクシの近所に大きな廃墟ホテルがある。
詳しくは言いませんが、映像作品の撮影に使われたりしているみたいでちょっとした有名な廃墟になっているみたいで大変驚きです。

そのホテルはゴルフ場に建てられていて、確かアタクシが小学生六年生だった頃からゴルフ場の開発が始まったと記憶しております。
野山を駆けずり回って遊んでいたサルの様なアタクシ達の遊び場にならないわけもなく、人目を盗んでは軽トラやバックホウ等を勝手に運転して転がしてしまったり、勝手に穴を掘ってみたり、時にはバックホウの誤操作で友人の頭にバケットをぶつけてしまってあわや大惨事になりかけたりと、今考えるとブチ殺されても仕方ないような事を平気な面をぶら下げてやっていたのです。
楽しい事への想像力や行動力は無限にあったけど、それによって生じる問題には全く想像力を使わなかったのでしょう。
とんでもないクソバカガキです。アタクシがアタクシの親ならば力いっぱいグーでぶん殴っている事でしょう。

さて、そんなクソバカ共はその日も意気揚々とゴルフ場へ続く山を登り、誰も居ない事を確認しまたイタズラに精を出すのでした。
その日はアタクシと友人達の中でもトビキリのイタズラ名人の2人で出勤し、もはや恒例となっている軽トラの運転をして日が落ち始めるまで遊んでいたのだが、軽トラの運転も流石に飽きて来ており、今日はもう帰ろうぜーとなったのです。
しかし、友人が遠くを指挿してこう叫んだのです。
「イヌちゃん!ジープある!ジープ!あれ絶対ジープ!」
「うえ!まじ?!どこどこどこ!!ジープどこ!」

昭和生まれのおちんちんが付いている方なら、この興奮の坩堝に包まれてるクソバカチンパン2人の心境がお分かりでしょう。
ジープと聞いて興奮しないガキなんぞ居なかった時代です。アタクシも達は一目散にジープに駆け寄りました。
そこにあったのはまさしくジープ。
屋根のない本物のジープを見つめるアタクシ達の瞳は夕暮れのゴルフ場を照らすほど輝いており、これはもう運転するしかねえ!と運転席に乗り込んだが鍵なかった。

んむむ〜折角ジープを運転出来る大チャンスなのにまさかのお預けを食らったのだ。
だがしかし友人の瞳から輝きが失われていなかった。むしろ瞳にアマテラスが降りてきたのかと思うくらいバッチバチに輝いており、友人はイグニッション辺りのカバーをバゴーン!と外し直結し始めたのだった。流石イタズラ名人と言ったところであろうか。
そして、アタクシが流石に無理だろ〜かかんないよ〜と言った刹那なんとエンジンがかかってしまったのです。
かかってしまったらこれはもう仕方ない。水を得た魚。ジープを得たクソガキ。
行くぜ何処までも!地の果てまで走るぜ〜!とクソバカ2人は奇声を上げながらジープを走らせたのだ。
しかし、少し走ったところでジープが宙に舞った。ポーーーーンと。
時間にしたら多分1秒にも満たないくらいだったと思うが感覚的に本当にポーーーーンと宙を舞ったのだ。
うぎゃあああ!と叫んだ次の瞬間にはジープは着地先に埋まっていた。
オリンピックの種目に、チキチキ上手にスタック出来るかな選手権があったならば間違いなくゴールドメダルだろうなってくらい綺麗な埋まりかたをしていたのだ。

埋まったジープから後ろを振り返って見てみると、大人になってから分かった事だが極太な暗渠排水菅に乗り上げポーンとしたらしかった。
もう時間的にはほぼ日が落ちており、運転していた友人も暗渠菅に気づかなかったらしい。
さて、もうどう頑張っても動く訳ないし、体は痛いしで呆然としていたが、友人がこう言うのだ。

「イヌちゃん指紋拭いて帰ろ!」

アタクシ達は来ていた服を脱ぎ、その服で隅々まで拭いて帰りました。まさかこんなに事になるなんて思いもしなかったし、その夜は中々寝付けなかった記憶があります。
その後、そのゴルフ場を開発していた会社はバブルが弾けると共に弾けてしまい、建設途中のままのホテルが今現在巨大廃墟として存在しているのです。

まあそんな話ですまる

フィクションです。

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