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変な人(2/2)

ある日、アタクシはチヒロちゃん宅で起きるとキッチンにある椅子に座り、ほぼ無の状態でタバコをプカプカと吸っていた。
すると先に起きていたチヒロちゃんがアタクシの対面に座りアホ面でタバコをモクモクさせてるアタクシに、こう告げたのだ
「あのね、私イヌ君の事好きだけどミユちゃんの事も好きでさバイなんだあ」
そう、ミユちゃんとはシェアハウスしてる女の子である。

アタクシは何を言っているのか最初わからなかった。
ミユちゃんが好き?ん?友達として?いや待てバイって言ったよな?バイ?え?何だこれ3Pチャンスか?バカ!違う違う!ミユちゃんもブランキージェットシティが大好きな彼氏いるし!え?ははーん4Pだな!いやでもなんか恥ずかしいなあって絶対違う!えー?!なんだこれ?
てな感じであった。

そして、アタクシは何か言葉を発さねばならぬと思いチヒロちゃんに聞いた「ミユちゃんとはす、す、、するの?」
なんとも間抜けな問いかけであるが、その時のアタクシには精一杯の言葉だった。
するとチヒロちゃんは「たまにね」と。

た・ま・に・ね。
何だおい、たまにねって?週イチかニか?俺は毎日オナニーするけど、オナニーするの?って聞かれたら「たまにね」って言うからその「たまにね」なのか?いや待て待て待て!するってえとミユちゃんもバイじゃないか!くー!俺は知らないうちにとんでもないピンク魔境に迷い込んでしまったのかよ!?と様々思いが駆け巡ったが、変な所でポジティブ思考になるアタクシが導き出したアンサーは「まあ良いんじゃないそんな彼女でも」で、今考えると麻痺した瞬間だったのだろう。

まあそんなちょっとした爆竹レベルのカミングアウトをされても、へこたれるようなアタクシではないのでそれからも至って普通に過ごしていたのだが、またもチヒロちゃんはアタクシにカミングアウトをしてきたのだ。
今度はダイナマイトレベルである。
嘘くせえ!と思われるかも知れませんが本当のお話です。

それはある日の夜、事を致して終わりアタクシはタバコをンパンパ吸いながらチヒロちゃんを撫でていた。
するとチヒロちゃんがこうアタクシに告げたのだ

「あのね。びっくりしないでね。私ね。始めての人がお父さんなの」

ピンク魔境だったのが一気に暗黒魔境になった瞬間である。

アタクシは何も言葉が出なかった。ハタチそこそこの音楽とバイクと女体の事しか考えてなかったクソガキからはなんも言葉が出なかった。
だが、頭の中は様々な感情で埋め尽くされていた。

まじであるのかそんな事が?えー何?なんて声をかければ良いのわからん!つうか今すぐチヒロちゃんの実家に行ってぶちのめしてやりてえ!ああああ!なんだどうした!?こんな時どうすりゃあ良いんだ!わかんねえよ!となりアタクシの口から出た言葉は「うん・・そっか・・そっか・・」だけでチヒロちゃんの手を強く握る事しか出来なかった。

そんなアタクシを見てチヒロちゃんは「ごめんね。一応言っておかないとて思ってさ。あのねもう過去の事だしさ私はもう大丈夫だからさ、イヌ君も気にしないで」と。

もうだいぶ脳内のブドウ糖を消費していたアタクシは、ほほ〜気にしないでとな?んむむ〜気にしないでと言うなら気にしないでおこう。何処か遠くの国のお話しにしちゃおう!うん!そうしよう!それがお互いにとって良い事なんだ!あはははははははは・・・・・
またも、麻痺した瞬間である。チヒロちゃん恐るべしだ。

まあだからと言って嫌いになるわけでもなく、険悪になるわけでもなく日常を過ごしていたのだが三度チヒロちゃんから衝撃的な言葉を聞くのだった。
今度はナパーム弾のような特殊な爆弾である。

その日もチヒロちゃん宅に泊ったアタクシ。
昼前に起きるとなんだか口の中が気持ち悪くて仕方なかったので、台所で洗い物をしているチヒロちゃんとミユちゃんにおはようと声をかけ、お風呂の前にある小さな洗面器で歯をガシガシ磨いていた。
はふースッキリしたぜ!と歯ブラシを洗い、口を濯ごうと洗面器にあった見慣れない湯呑みに水を入れ口につけようとした瞬間、チヒロちゃんが口に泡をしこたまつけたアタクシにこう告げたのだった

「あ!それオシッコ飲むヤツだからだめ!」

んむむ〜・・・はたして、湯呑みを手に持った状態でそれオシッコの飲むヤツだからダメと注意された人間などこの世にアタクシ意外に存在するのでしょうか?
「見慣れない湯呑み=オシッコ飲むヤツ」がワールドワイドな常識でたまたまアタクシが知らないだけだったならばアタクシに非があるでしょうが「見慣れない湯呑み=オシッコ飲むヤツ」なんて常識や方程式を俺は教わってないし聞いた事もないよ?
そもそもオシッコは飲み物ではないはずだ。いやね頑張れば飲めるだろうし、プレイ的な事で言うならば飲んでる人はいるよ。つうか何故にオシッコを飲むんだ?ん?という事はオシッコを飲んだ口と俺はチューしてんのか?知らないうちに間接飲尿プレイしてたのか?
とまたも様々な感情が駆け巡ったが2つの爆弾処理を済ませているアタクシの口から出た言葉は

「オシッコ美味しいの?」だ。

これは強い。
今考えても飲尿をカミングアウトした人に向ける言葉の中では恐らく3指に入る言葉だ。

だか更に上を行くお方がいた。
そう、台所で洗い物をしているチヒロちゃんである。
飲尿マスターチヒロちゃんは、アタクシからの問いに間髪入れずにこう言った

「美味しくはないかな?イヌ君のも飲んであげよか?」


完敗である。
「美味しくはないかな?」の後に「イヌ君のも飲んであげようか?」なんて尋ねてはいけないのだ、そんな使い方したらいけないのだ。

アタクシは、そっと湯呑みを置き手でいつものようにブクブクベーしてタバコを吸うしかなかったが、「何故オシッコ飲むの?」と聞いた。
するとチヒロちゃんは「ダイエットだよーTVでやっていたからやってみたの」とあっけらかんと言うのだ。
いやーピンク魔境から暗黒魔境になったかと思ったら今度はちょっとしたSMクラブになっていたとは流石のアタクシもビックリしたが、あまりにもチヒロちゃんがあっけらかんとしてるので、アタクシはまあ誰にも迷惑かけるわけでもないし〜俺が許容すれば良いだけだし〜まあいっかあ〜となり、またも麻痺した瞬間である。

それからは特にカミングアウトはなかったが、チヒロちゃんに好きな人が出来たとの事でフラれてしまいチヒロちゃんとはそれっきりになってしまいました。
グッバイおっぱいアディオス湯呑み。


さて、麻痺とは言って来たがアタクシにとっての麻痺とは拒絶反応を麻痺させる事でもある。
人ってのは色々な背景があって様々な好みや思考や思想があるだからそれらを否定する事なくまずは受け入れてみてから判断をしないと、面白い事が隠れているのに見逃してしまったり、自分にない思考や思想に気づかなかったりと大変勿体ないなと気づかせてくれた素敵な変な人でした。

あ、そうだ。
お宅に見慣れない湯呑みありませんか?
もしあったなら色々と話しを聞いて見ると変な話が飛び出してくるかも知れませんよ。

終わり

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