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○●2023年度ベストアルバム15枚 総括●○

毎年恒例の2023年ベスト総括、2023年の名盤アルバム15枚!
昨年よく聴いていた音楽アルバム15枚を順不同で発表!


【各アルバム解説】


★『ムーンライトストリート』/うさぎのみみっく!!

『ムーンライトストリート』/うさぎのみみっく!!

2014年に結成し福岡を中心にライヴ活動していたものの、断続的な活動が続き紆余曲折ある中で、某ウィルス蔓延という受難も経て、遂に2023年に本格的な始動となったアイドルグループの念願のデビューアルバム。

ファンタジックでコンセプチュアルかつとびきりポップで聴きやすくまとめられた完成度の高いアイドルポップアルバムの大名盤!

特に7分48秒におよぶ「シンメトリック」の多重構造で展開されるポップの震え立つカタルシスは何度聴いても鳥肌が立つし、20年代に刻まれるアイドルポップスの名曲であることは確実。

ライブも一切MCは無く、月に住むウサギに「擬態(Mimic)」し、ライブパフォーマンスで地球征服を目論むというコンセプトで曲を淡々とこなしていくストイックさも一環としていてとても良い。


★『UNFORGIVEN』/LE SSERAFIM


『UNFORGIVEN』/LE SSERAFIM

存在を知った頃には既に話題になっていて、紅白には2回も出演している、日本人2名を交えた5人組K-POPグループのデビューアルバム。

K-POPのグループにハマったのは実に少女時代以来なので、10年ぶりくらい。
昨今のK-POPはサブスクの普及により北米チャートも席巻するほどの影響力を持っていて、もはや言語の壁を越えたパフォーマンスと楽曲のクオリティで勝負できるジャンルになっている中で、それを冷ややかに見ていた筆者であったが、このグループは何故か刺さるものがあり、デビューアルバムを聴いて一気に好きになった。
推しメンバーはチェウォン。黒髪に戻して欲しいです…。

去年、お台場冒険王のイベントで30分のライブステージを観ることが出来たが、MVやTVのライブ映像で観るとバキバキにキマりまくっているが、生のライブで観ると等身大の女子という感じでより好感が持てた。そして8~9割の観客が10~20代の女性でピオナおじさんの筆者としては大変肩身の狭い気持ちであったが、本物を観られた喜びがそれを勝った。


★『Camellia』/RAY

『Camellia』/RAY

筆者のベスト総括ではもう常連のシューゲイズを根幹としたオルタナティブアイドルグループの3rdアルバム。
別に好きだから贔屓してるわけじゃなくて、毎回毎回こちらの予想を軽く飛び越えて凄い曲、アルバムを出してくるんだからしょうがねえだろ!
そんなん選ばずにいられね~んだよ!
逆に言えば「これは違うでしょ」という曲を出すようになったら離れます。

2ndアルバムから1年しか経っていないにも関わらず前作と同じことはやらないぞ!というような気概を感じつつ、グループの根幹からずれていない楽曲の幅の広げ方は流石だし、「シューゲイズだけやらないぞ」というグループの今後の可能性をひしひしと感じる。

特に3曲目の「フロンティア」はシューゲイザーを越えてマンチェスターレイヴムーヴメントのような、ドラッグやらなくても頭真っ白になるような、いつまでも聴いていたくなる飛翔したくなる高揚感が本当に凄まじく、ライヴでも大きく盛り上がる重要曲としてフロアを沸かせている。

ちなみに推しメンバーである内山結愛さんはnoteで音楽アルバムレビューを投稿しているがそのチョイスがアイドルが気軽にやってるレベルじゃないので、是非とも併せて読んで欲しい。


★『RYUTist ACOUSTIC LIVE』/RYUTist

『RYUTist ACOUSTIC LIVE』/RYUTist

筆者のベスト総括ではもう常連の新潟を中心に活動する3人組アイドルグループ初のアコースティックライヴアルバム。
別に好きだから贔屓してるわけじゃなくて、(以下略)

このグループはとにかく楽曲が異様にクオリティが高いポップスを放ち続けており、歴史に残る大名盤「ファルセット」については筆者のnoteでも12,000文字でその想いをつづった。そして次作、あまりにも挑戦的かつ先鋭的でアヴァンギャルドでアンビエントな要素も匂わせた、ポップスの早すぎる未来を伺わせる、その先へ生き急いだ「(エン)」など、放たれるアルバムのクオリティは毎回毎回目が離せない。
昨年、グループのリーダーであり推しメンバーでもあった佐藤乃々子が卒業してもやはりその活動を追っている。

そんな中で、昨年11月に東京で初めて行われたアコースティックライヴの実況録音である本盤。このままMTVアンプラグドで放送してもいいんでないかい?と思うくらい、全編上質なポップスでまとめられていて凄いし、聴いてて心地よい!
配信だけじゃなく、CDでも出した方がいいですよ…。

★『リビングデッド』/きのホ。

『リビングデッド』/きのホ。

本当につい最近なにげなく知った京都発信の5人組のアイドルグループ。
デビュー時はジャンプ漫画の「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」などで人気の原作者うすた京介がビジュアルデザインを担当していたというのは知っていたのだが、そこの手も離れたらしく、SNSのTLでMVが流れてなんとなく気になって曲を聴いてみたら気になって、気づいたらYouTubeでMV観まくったりライヴ映像観まくったりしていた。

ロックを基調とした音楽ジャンルは、メンバー5人それぞれの声質がはっきりと違っているのが聴いてて楽しい。
「渋滞」などヒップホップの要素も含んでいて、凝ったMVも併せて良い。

ライヴでも大きく盛り上がる「DANGER!」の爆発力も凄いしこの曲で終わるからアルバムとしてとても締りが良い。

CDだけのシークレットトラックでメンバーの小花衣こはるのアコースティックの弾き語り曲がちょっとビックリするぐらい良い。彼女の歌唱の表現力はグループの大きな強みというのが音数が少ない中で伝わる。


★『SAI』/眉村ちあき

『SAI』/眉村ちあき

彼女のアルバムは筆者のベスト総括ではもう毎年毎年アルバムを選出している。
毎回期待や予想を超えてかつ、ポップにまとめてマニアックな方向に行かず、あくまで全方位的な一般層に届くような音作りのアルバムは選出せずにはいられない大きな理由である。

本作は、アニメの主題歌「マルコッパ」やタイアップ曲「未来の僕が手を振っている」などマスレベルでもその表現力を十二分にその才能が発揮されていて、ひとつのジャンルに特定されない幅広さはちょっと他のJ-POPではなかなか類を見ないレベルだと思う。

なにより壮絶に凄まじいのが最後の「十二支のアマゾン」だろう。十二支に併せてわずか6分の中で曲が12転調するという頭のおかしい名曲。しかもこれをライヴで再現していて、その挑戦的な表現を観ていて「マジですげえな…」と、5年以上前に初めて生で観た時と同じフレッシュな感情をずっと抱かせてくれる稀有なアーティストの名盤。


★『THE MAGICAL TOUCH』/松木美定

『THE MAGICAL TOUCH』/松木美定

その素顔は隠しつつ、配信を中心に、とてつもなくジャジーでポップで耳心地の良いまろやかな歌声を聴かせてくれていた男性アーティストのデビューアルバム。

複雑なコード進行の中に含まれる絶妙なアレンジと独特なメロディと美しいボーカルと、アルバム1枚に集約されることでよりその才能を堪能できる多幸感に包まれる1枚。

デビュー時の中村一義のように、人前に出るライヴ活動は行っていないのは非常に残念。このアルバムの音が生で表現されたらどんだけ凄いんだ?!と想像するのも楽しいJAZZ POPな名盤。


★『一夜のペーソス』/Lamp

『一夜のペーソス』/Lamp

00年に結成され、マイペースな活動を続ける3ピースバンドの5年ぶり9枚目のアルバム。ブラジル音楽、ソウル・ミュージック、ソフト・ロック、フォークのジャンルを展開しつつ、滲み出る「和」のテイストをゆるやかに穏やかに織り交ぜ、1曲1曲丁寧に作られていることを感じる実に75分にも及ぶ大作。
このサブスク全盛の時代、きょうび1枚75分のアルバムを聴くという行為自体避けられている中で、つい聴いてしまう心地よさのある、芯のある強さをもった名盤。

歌詞は完全に日本語だし、本当に何故だか理由がわからないのだが、このバンドは海外リスナーの間で急激に人気を高めているらしく、Spotifyの月間リスナー数は230万人を超え、「海外から支持される日本のアーティスト」と注目されているらしい。


★『The Ballad of Daren』/blur

『The Ballad of Daren』/blur

英国で90年代半ばに音楽カルチャーのムーヴメントとなったブリットポップの代表格とも言えるバンド、活動停止、再始動を繰り返し、前作から実に8年振りとなる新作スタジオ・アルバム。

全体的にはびこる雰囲気は、ギターのグレアム・コクソンが脱退していた時に発表されたアルバム「THINK TANK」のような、タイトル通り、バラードが続くような、おだやかな構成の音作り。しかしこれがまったく退屈せず飽きさせない。
そして最後の曲「The Heights」では穏やかな曲調から、徐々に強烈なフィードバックノイズが流れる中で突如プツっと音が切れる。

バンドのメンバーも年を重ねることによって奏でられるそれぞれの楽器の鳴りにもやさしさ(Tender)があるような気がする。
このバンドで20年経っても今でも聴き返すのがこの「THINK TANK」だったので、繰り返し聴けるアルバムがまた1枚増えたようで嬉しい。

2023年にはサマーソニックで久々の来日公演も行ったが、2024年4月のコーチェラフェスティバル出演以降また活動休止期間に入るとのこと。地道にまだまだ続けていってほしい。


★『Jonny』/The Drums

『Jonny』/The Drums

元々バンドとしてデビューしていたが、現在はジョニー・ピアースのソロプロジェクトとして活動しており、ソロとしての3枚目の新作。

80年代的ニューウェーヴ、シンセポップ、サーフポップ、ドリームポップなどのジャンルの曲が並べられていて、ボーカルの美声も相まって、とにかく耳心地が良くて聴き続けてしまう。

これまでこのアーティストを知らなかったが、その強烈なジャケットを見て気になって聴いてみたら、一聴して気に入り、過去作もまとめて遡って聴いたりしている。

ちなみに、サブスク上でのジャケットはパッと見、当たり障りのない、ジョニーという青年が全裸で椅子に座っている写真だが(でも全裸)、CDやVINYLのフィジカルのジャケは背中を向けた全裸のジョニーの生尻がフィーチャーされており、人によっては不快感を与える危惧がある挑発的、挑戦的な写真が使われている。(詳しくは検索せよ)

これは、ジョニーのセクシャリティ(ゲイ)を断固として認めない父親(両親は保守的なクリスチャン)のオフィスで撮られた写真だそうで、つまりただ単に露悪的な演出ではなく、タイトルからして自分の名前だし、その全身をもって強固な意志を音と写真に込めていて、恐れ入った。


★『Jumbo Pets』/Babaganouj

『Jumbo Pets』/Babaganouj

2011年から活動開始した、オーストラリア・ブリスベン発のインディーポップバンド。男性と女性ボーカルが混ざり合うコーラスワークによる極上キャッチーなメロディによるバンドサウンドが聴いてて楽しい。
そんな彼らが、これまでシングルやEPをリリースしてきたものの、10年以上経ってようやく発売されたデビューアルバム。

筆者もEPを集めた日本独自編集盤を2016年に買って聴いており、アルバムリリースを心待ちにしていたが、流石に7年も待たされるとは思っておらず、ほぼ存在を忘れていたところ、サブスクでアルバムがリリースされていたの知り、大慌てで聴いたらこれがもう何も変わっていないインディーギターポップで、「え、今199何年ですか!?」とスピーカーに向かって思わず問いたくなる永遠の90sギターポップ的な音がブレてない。すぐにVinyl購入。

現在ライブ活動行っているのかわからないが、音がヘロヘロだったりするんだろうか。凄く観たい。だが、Spotifyのフォロワー数が1,734人とあまり知られてないようなのが残念。

★『Flora and Son (Soundtrack From The Apple Original Film)』/V.A.

『Flora and Son (Soundtrack From The Apple Original Film)』/V.A.

『once ダブリンの街角で』『はじまりのうた』『シング・ストリート 未来へのうた』に続く、ジョン・カーニー監督の最新作!…だのに劇場公開されずApple TVのみでの配信という不遇な扱いを受けている大傑作の音楽映画『フローラとマックス』のサウンドトラック!

映画の内容については別記事の2023年映画ベスト総括で挙げるとして、本記事ではサウンドトラックにのみ言及したい。
まず、ジョン・カーニー監督の過去3作の慣例どおり、映画を観たらサントラを聴きたくなってしまうというほど劇中で流れる楽曲が物語とリンクしており、観終わった後に再度聴き返して余韻に浸りたくなる。

本作で流れる音楽ジャンルとしてはギターの弾き語り、ラップ、EDMなどそこまで広くは無いが、作品を観ているとそのキャラクターがこの音を奏でる必然性があるので、サントラとしてはとても自然である。

そしてすべては『High Life』という1曲に集約され、ラストのこの曲の高揚感が本作をより極上の音楽映画と昇華させている。

★『Guardians of the Galaxy Vol. 3: Awesome Mix Vol.3』/V.A.

『Guardians of the Galaxy Vol. 3: Awesome Mix Vol.3』/V.A.

現状2023年で興行収入的にMARVEL作品最後の成功作といえる本作のサントラ。
劇中にかかる音楽と本編のカットの相乗効果を見せるのが上手なジェームズ・ガン監督だけに、サントラありきの物語とも言えるくらいのシンクロ度合いなので、そりゃ流れる数々の音楽も良いに決まってるし、それをまとめた手腕も流石としか言いようがない。

何と言っても1曲目からRADIOHEADの「CREEP」のアコースティック版というひねくれ度合い!最高!

全体的にサウンドのジャンルも年代もバラエティに富んでいて、かつ本編カットと音が完璧にハマっているのが本当に凄い。このサントラから色々と興味を持って聴いていくのも楽しい。

それでいてラストに1作目オープニングに流れていたRedboneの「Come and Get Your Love」が再び起用されるという、いちいちくすぐってくる選曲たまんねー!

てなわけでMARVEL作品史上でも屈指の愛されシリーズとしてこれからもこのサントラは聴かれ続けていくことでしょう。

★『BLUE GIANT [オリジナル・サウンドトラック] 』/上原ひろみ

『BLUE GIANT [オリジナル・サウンドトラック] 』/上原ひろみ

漫画の絵だけでまるで音が伝わってくるような人気ジャズ漫画原作のアニメ映画のサントラ。本作はもはやジャズ界では大御所の風格さえ漂わせている上原ひろみによる作品。

映画自体については別の記事で詳細に後述するが、本アルバムは劇中のジャズバンドJASSの演奏ほか劇伴曲も収録されており、作品を追体験するという意味でこれ以上無いくらい楽しめるサントラ。

劇中を観てジャズという音楽ジャンルに目覚めた筆者のような人間にふさわしい入門的な内容であることは間違いない。


★『OPEN THE WINDOW』/RHYMESTER

『OPEN THE WINDOW』/RHYMESTER

結成35周年を迎えて、名実ともに日本を代表するヒップホップグループであるライムスターの最新作であり、予想の上をいく現状の最高傑作アルバム。

本作の特徴として全体の7割をフィーチャリング楽曲で占められており、それが上手くバラエティ豊かなアルバムとしてまとめられているということ。

長いキャリアを積み上げてきているRHYMESTERに集まってきている年代問わないミュージシャンが集結したコラボレーションの数々が1枚で楽しめる作品。

これまで聴いてきた人たちはもちろん、日本のヒップホップアルバムの入門としても、「2000なんちゃら宇宙の旅」をはじめとして、10代から聴ける内容になっているキャッチーな間口の広さは特筆すべき点。


以上、2023年度BEST ALBUM1枚総括でした。
次は、2023年度柴デミ~賞の発表です!


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