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【SWEET FACTORY】

株式会社スウィートファクトリージャパンが運営する、輸入菓子量り売り店「SWEET FACTORY」は2021年に、国内の全店舗を閉店したとのこと。

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SWEET FACTORYは全国各地に店舗があり、青を基調とするポップなデザインの店内では海外のドラマやアニメに出てくるようなお菓子を数十〜百種類以上量り売りしていた。




色とりどり、そしてバラエティ豊かなグミやチョコレートは夢と希望に溢れた宝石のよう。

幼少期から学生時代の私にとって、SWEET FACTORYの店頭に並ぶそれらは非日常であり憧れの存在であった。


幼少期、家族でたまに訪れたイオンモールにもその店舗は存在した。

入れ過ぎと怒られないよう、親の顔色を伺いながら、恐る恐る、グミやガム、チョコレートを各種類を少量ずつ袋に詰めた。ジェリービーンズですら、なるべく色んな味を楽しみたくて1粒ずつ詰めていったものだ。


計量後にシールで留めた袋は中身が少ないため棒状になっていた。
家に持ち帰り、これまた毎日1粒ずつ、大切に食べた。 
最後の1つを食べるときは、惜しいような、切ないような気持ちだった。
袋に残った香りすらも楽しみたくて空の袋を机の中にそっとしまったものだ。

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大学3年。友人と訪れたアウトレットモールで偶然店舗を見つけ、懐かしさに心踊らせた。
なるほど。そこらのスーパーで見かけるお菓子と比べ、海外製だからかやや割高であることを再確認させられた。
少額のバイト代しか持たない身である。
グラムあたりの値段におじけづき、やはり1粒1粒大切に袋に入れた。秤とにらめっこしながら袋に入れるこちらには構わず、昔と変わらず箱いっぱいに詰められ陳列されたグミたちは色とりどりに輝いている。



『何も恐れず袋一杯に買いたい』



一人前に働くようになったら、
SWEET FACTORYの量り売りを、このキラキラとしたグミやチョコレートを、自分の思うままに、袋一杯に買うんだと心に誓った。

自分が食べたいものを袋につめたはずの数百円分のグミやチョコレートは、なぜか私の手元では輝きが少し濁って見える。



社会人になり、有難くも目まぐるしい日々を送った。
自力で生活できるようになったらなったで、他にも楽しいことはたくさんあった。

何気ない瞬間にふと、あの日のことを思い出したとき、それらの店はすべて閉店したと知った。






それは心に穴が空いたような感覚だった。
その穴をからっ風が通り抜けていく。


もう叶わない夢なのか。

悲しみと後悔と執念のような感情が私を包んだ。




何かこの穴を埋めるものはないだろうかと探すが、かなり遠方の競合店が数店検索にひっかかるのみ。
執念のみが増した。




『あれ?あるやん』


ネットの情報によると自宅から車で30分ほどの国道沿いにある激安スーパーに、似たようなお菓子の量り売りコーナーがあるとのこと。

私は、財布を握りしめ大急ぎで店まで車を走らせた。



夕方の帰宅ラッシュであったがそんなことには構わず車を走らせた。

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平日の夕方の激安スーパーは日常を過ごす人々がルーティンのごとく、食品を無機質な表情で買い回っている。

日常の中に毅然とそして粛々と佇むかのように、そのコーナーはあった。

なるほど、激安スーパーなだけあって、本家よりも安い商品を扱っており、グラムあたりの値段もだいぶ格安である。



私は無我夢中で、何粒入れたかなど気にせず貪るように袋にグミやチョコレートを詰めた。あれもこれも、これでもかと言う程に詰めた。
もう自由の身なのだ。誰にも邪魔はさせない。

パンパンに張った袋はずっしりとした重みを感じた。

持ち帰った私は、明日の締め切りのパソコン作業を再開し、その片手間に食べた。
袋一杯のグミやチョコは、食べても食べてもなくならない。
海外のお菓子特有の香料が鬱陶しいくらいにそこら中に、そして口の中に広がる。

あの時夢見たことをやっと実現できたのだ。

私は、口に残ったグミのかけらを水で流しこみ、天を仰いだ。


『なんか、違う』


そう呟き、私はまた作業を再開した。





(T_T)スウィートファクトリーが復活してほしいです(切実)

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