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『WOW WAR TONIGHT』ばかり聴いている時期があった

きっかけが何だったかはわからないけれど、h jungle with Tの『WOW WAR TONIGHT』ばかり聴いている時期があった。


コロナ禍になって家にいるとき、昔のお笑いを掘ろうとして、やすしきよし師匠の伝記本を読んだり、ダウンタウンの昔の漫才やトークを見たりしていて、その流れで「浜田さんって曲出してるの?でもメロディは聴いたことあるな…」で聴き始めたんだと思う。たぶん。

朝家を出て仕事場に向かう時や、お酒を飲んだ帰り道や、いろんなときに聴いているうちに、いつのまにか、この歌のことがめちゃくちゃ好きになった。カラオケでも、スナックでも、自分の番を躱しきれなくなると、この歌を歌うくらいには。

この歌には、世の中の波に揉まれながら走り続けようとする人たちへのエールと、照れ隠しのような言い回しが込められていて。だから好きなのかも。(照れ隠しから生まれる軽薄さ、みたいなものを本当に愛おしく思う。)そこには、思い出してはニッコリしてしまうような歌詞がいくつもあった。好きな一節をあげるとキリがないけれど、ときどきふと思い出す歌詞がある。

「思えばラブソングなんて歌ってみるとき、必ず目当ての誰かがいたような」

というもの。そんなこと意識したことは無かったし、しばらくカラオケでラブソングなんて歌ってないけれど、確かに心当たりがあるな……

文字で見ると普通のことでも、普通のことを言っている歌詞こそいつも心に残る。

舐達磨のBUDS MONTAGEも、フックでもなんでもない場所にあった「実力は努力の数」という言葉が残って、「めちゃよくないですか?」と先輩に話したことがある。その時は「いいけど、なんかピュアだな」と返された。僕は「ピュアじゃい!」と思った。ピュアと言われて「なにがあかんねんピュアで!!!」と思えるほどの癇癪の火薬は持ち合わせていないけど、「じゃい!」くらいの抵抗感はやっぱりある。29歳にもなってピュアでいいのだろうか。


WOW WAR TONIGHTの歌詞も、よくよく聞いてみればピュアな部分がたくさんある。

『全然暇にならずに時代が追いかけてくる 走ることから逃げたくなってる』

とか

『流れる景色を必ず毎晩見ている 家に帰ったらひたすら眠るだけだから』

とか

『自分が動き出さなきゃ何も起こらない夜に何かを叫んで自分を壊せ』

とか。


がんばって走っている人から漏れ出る「おれ、よくやってるよ…」の気持ちと、真っ直ぐにそんな話をするのもなんだから、ちょっとでも「こういうシーンもある」なんて情景の話にして。

温泉に行こうと話すことも、窓に映った自分の顔を眺めることも、たとえ話だ。きっと違う形をして、自分の生活の中にもあるんだろうな。

何を見ても何かを思い出すし、何を見ても誰かを思い出してしまうときがある。29歳になってもそうだし、何歳になってもそうなんだろうな。

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