ジュリーの世界 増山実 著

増山先生6作目の長編は、京都河原町が舞台。私はそれが「かわらちょう」なのか「かわらまち」なのかも知らないくらい京都には縁のない生活を送ってきました。
京都には修学旅行で行きましたが、班別自由行動で石川くんに寺巡りを宣言され、当時神仏よりもジャンボ鶴田を崇拝していた私は、寺巡りという何の利益にもならない行為に修学旅行を潰されることにただ憤り、無言で着いていくことでささやかな抵抗をかましたのです。
石川くんの寺巡りツアーは全く印象には残っておりませんが、覚えているのは集合時刻にうちの班だけ1時間遅れ、夕飯のすき焼きを目の前にしながら先生から説教をされ、その最中に宮城くんがブッと一発屁をかまして、そのせいで先生の逆鱗に触れた結果夕飯なしとなり、お土産の八つ橋で飢えをしのいだことくらいです。
そんな京都(どんなやねん)に実在した「河原町のジュリー」と呼ばれた浮浪者を中心にしたお話です。土地勘があってもなくても引き込まれていくのは、作者さんの念密な調査に基づく事実をベースにしつつ、フィクションのテイストがいい意味で融合していく、その中に現代社会を憂う作者の主張も垣間見えつつ、絶妙なバランスがなせる技なのだろうなと思うわけです。

増山さんの本を読むと、いつかわが町のことも書いてほしいなぁと思います。僕の街はこんなに素敵なんだってのをみんなに知ってほしくなります。

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