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引っかかれた掌~いじめの記憶

小学校3年生の時にいじめにあった。もう40年以上も前のことである。

チビでがりがり、おまけに運動音痴の子供だった。しかし読書量は半端なく、そのおかげで学校の成績だけはよかった。2年生までは同じくひよひよとした仲間とつるんでいればよかったが、3年生のクラス替えがありラスメイトには、ガキ大将然とした男の子、口八丁手八丁の女の子がいて、どんくさい私に目を付けた。

三つ編みにした髪を後ろから引っ張り、「ハイドードー」と笑う。新しい文房具は隠される。夏休みの宿題の発表をしたときはノートに「くだらない」と大書したものを遠くから掲げられた。
ある日、テストが終わったときに、ある女の子が「この子下敷き見てた!カンニングしてた」と叫んだ。その時あろうことか、教師は私に下敷きを頭上に掲げさせ、「ほらみんな見なさい!下敷きに何も書いていないでしょ」と言い放ったのだ。

鮮明に覚えている。担任はその子に謝らせなかった。「ほら二人、握手しなさい。仲直りしなさい」と無理に手を握らせた。この状況を早く収束させたくて私は彼女に手を伸ばし、彼女も手を差し出して握手と相成ったが、何か違和感がある。

彼女は握手しながら私の掌に爪を立てていた。その時のちくんとした感触は今でも覚えているものの、気持ちは思い出せない。

その後、さらにのんびりした女児が転校してきて、いじめっ子たちのターゲットはそちらへ移った。私はまたひよひよ仲間とつるみ、静かな小学生生活に戻った。

あれから心身に痛みを負うことは幾度となくあった。でもあの時の手のひらのチクンは忘れがたいものがある。嫌なこと、怒って良いことを弁別できず、ただうつむいて突っ立ってた私。戦わなかった私は今もさほど変われていない。

#いじめ
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