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【感想】ヴィンランド・サガ




一期感想



 ずっと辛かった。最初は鎖で頭を抉られたり、人に対して斧で的当てゲームしたりで「痛い」ってことに気を取られてたけど、四話あたりから面白くなってきたと同時にずっとしんどくて仕方がない。

 正直トールズが死ぬのは分かってた。そうしないと話が進まないしね。でもそれでも分かってても辛かった。

 でも一番しんどかったのは、トールズの死後、船に乗ってアシェラッドたちに憎悪の目を向けて叫ぶトルフィンの声と顔。あれはあんな幼子がして良い声と顔じゃないんだよ。あんなに楽しそうに笑っていた子があんな表情をしなくてはならないことが辛くて仕方がなかった。
 勿論、残された家族を見てるのもね。ユルヴァみたいな勝気な子が無理してるの伝わってくるからこそしんどいものがある。


 でももっと辛いのがアシェラッド。決闘はどうなるんだろうってずっと思ってはいたけど、果たされることなく終わるなんて。そもそもアシェラッドは自分と同じような結末を迎えるであろうトルフィンを止めるために何度も心を折ろうとしたり、わざと分かりやすく利用していたわけだけど……。結局トルフィンの身を案じていたわけだ。

 それにアシェラッドの目的は平和をもたらして争いを消してくれる王様を見つけることであって、クヌート王子っていうふさわしい人間が見つかったから、彼のために自分を生贄にすることに決めたわけだ。


 死んでほしくない人ばっかり死んでいく。いや、たくさんの人が死んでてその中の一人が彼らだっただけなんだけど。
 ラグナルが死んだ時もすごい悲しかった。あの瞬間文字通りクヌート王子を愛してくれる人は世界からいなくなったわけで。それにクヌート王子なら、ラグナルと誰も知らない土地で幸せになることだってできたはずなんだよ。

 そしてビョルンの言っていた通り、復讐を終えて嫌いなバイキングにまで成り下がって、何もかもを拒絶して、アシェラッドはそれで良かったのか? 
 アシェラッドのことを本当に慕ってくれていたビョルンとやっと友人になれた瞬間にビョルンは死んじゃうし、ビョルンが死んだ時、アシェラッドはクヌート王子と同じように世界に一人ぼっちになってたと思う。
 食いついてくるトルフィンの心も拒絶して文字通りポッキリ心を折ったわけだし。


 トルケルがいるならきっとクヌート王子は大丈夫だろうけど、この先トルフィンはどうするんだろう。今更村に帰るのか……それも良いかもしれないけど。
 てかトルケルデカすぎ! 存在はアニメを見る前から知ってたけど、何メートルあるんだ? しかもめっちゃ強いし。斧を人薙しただけで何人もの人が真っ二つになるし、トルケルが軍にいるかいないかで勝ち負けが大きく変わるレベルだよ。

 にしても本当にアシェラッドが死んだのがショックすぎる。
 あと気づかなかったけど、アシェラッドの死亡シーンの演出がトールズの死亡シーンと一緒らしい。言われて気づいたけど、鳥肌たった。

二期感想


 とりあえず言わせてほしい。この作品は素晴らしい。神作品と言わざるを得ない。

 暴力と戦争、奴隷制度の醜悪さを、それらを丁寧に描くことによって伝えている。二期は一期に比べて戦闘描写が少なかったり、そもそもトルフィンがもう暴力は使わない。それは最後の手段だと決めている時点で見るのをやめてしまった人も多いらしい。原作でもファームランド・サガ(二期のこと)はつまらないと言われているらしい——絶賛してる人もいて二極化している——けど、私はめちゃくちゃ好きだった。何なら一期よりももっと好きだった。


 今までたくさんの人を殺してきたトルフィンの後悔。本当の戦士とはなんなのか……きっとヴィンランド・サガという作品はトルフィンがヴィンランド……つまり北アメリカに戦争のない国を作り老いて死んでいくまで終わらないんだろうな。

 レイフに関してもなんて義理堅い男なのか。もう何十年も奴隷市場でトルフィンを探し続けて。一期では彼の優しさがトルフィンの心を動かすには至らなかったけど、二期で無事再会できて本当によかった。一期では心に響かなかったというより、第二の父親であるアシェラッドのことが心配だったんだろうけど。

 まず、エイナルやトルフィンを買った領主様——ケティルがいい人でよかった。自分を働いて買えっていうのは、ある種の詐欺のようにも聞こえるけれど。少なくともこの農場では無理難題を押し付けられたり、理不尽なことはしていないし。
 だからこそケティルのことは残念で仕方がない。彼は優しい人ではあったけど、弱かった。それは力的な強さではなくて精神的に。

 勿論、泥棒にクヌートに反抗的なオルマルにアルネイズの逃走に散々な目にあっていることには心底同情するけれど。身重の体であるアルネイズのことを思いっきり殴りつけて、木の棒を思いっきり腹に突き刺した(殴った?)時は本当に見ていられなかった。気持ちはわからないでもないけど、あの時のケティルは正気じゃなかった。


 弱さ故に全てを失ったケティルに対して、オルマルの成長は素晴らしいものだった。最初はプライドが高く、自分の実力も理解していない若者だったけど、自分の弱さを受け止めて芯の強さを手に入れた。オルマルならきっと立派な領主になれると思う。
 にしてもケティルの妻は最初から最後まで嫌な人間だったな。あいつだけ殺されてもよかったもん。でもああいう女って現実でもいるよね。ウザすぎる姑。


 んでもって蛇ね。本名を「グリムの子ロアルド(ロアルド・グリムソン)」最後にエイナルとトルフィンに本名教えたの激アツすぎて本当に泣いた。
 そもそも蛇はいい男すぎる。普段は飄々とした様子だが、義理人情に厚く、剣の腕も立つリーダーでおまけに教養もある。で、奴隷に対しても平等に接してる。そんなん好きになるしかないじゃんね!

 スヴェルケルとの関係もすごい良かった。本当はお互いに大切に思ってるんだなってところが、スヴェルケルが畑で倒れた時、畑を譲るって言った時に表れてて本当にこの関係最高。

 エイナルもずっといい人。考え方とかが現代の人間に最も近かったように感じた。戦争を良しとしなかったりね。アルネイズと結ばれるのかとばかり思っていたけど、まさか話の途中に彼女の旦那さんが現れるなんて思わなかった。アルネイズは最初から最期まで男に振り回される可哀想な女性だったね。

 彼女の旦那さんであるガルザルは本当に……後悔の権化のような男だったね。でもこの時代、周りと同じように戦に憧れて後悔の中死んでいく男の人はすごい多かったと思う。
 彼が登場して、死んでいくまでずっと泣いてた。まるまる一時間は泣いていたかも。これは大袈裟。実際は日を跨いでるから。でも本当に悲しかった。

 ガルザルの死亡シーンはアニオリがたくさん入っていて、原作勢からは不評の声もあったみたいだけど、私はこのアニオリ素晴らしいと思ったな。ガルザルの当時の思いと今の後悔を丁寧に書いていて、痛いほどそれが伝わってきた。まあ原作勢から、何かしらの文句が出てくるのは仕方がないことだからね。


 ガルザルのもそうだけど、トルフィンの後悔と葛藤も丁寧に描かれていて素晴らしかった。トールズとアシェラッドという二人の父親を失って、生きる目標も失っていたトルフィンが自分の罪を見つめ本当の戦士になるまでの過程が本当に良かった。筆舌に尽くし難いとはこのこと。

 兵士に殴られても抵抗せず、第一の手段として暴力を使わなかったトルフィンは、間違い無く本物の戦士だった。
 暴力と言っても、誰かを守る時にはやむを得ず使っていたけど、その時にアシェラッドが出てくるのも本当に良かった。やっぱり第二の父親なんだよ。アシェラッドが出てくるたびに泣いちゃう。


 クヌートも、まるで最初の頃とは変わって未来の大多数の幸福のために現在の非力な人を犠牲にするようなやり方に、アシェラッドの求めていた本物の王の姿はこれなのかって思っていたけど、最後にトルフィンと会話をすることによって正しい方向に持ち直して良かった。王冠の呪いからは解放されたんだ。


 史実ではトルフィンのモデルとなったソルフィン・カルルセフニはヴィンランドに辿り着いて建国をしようとするものの、先住民との抗争もあり数年でヴィンランドを放棄しているらしい。
 そりゃそうだ。誰もいない土地なんてないもの。実際そこはどうするんだろうって思ってた。あと、クヌートに関しても史実ではもっと残忍らしい。
 仕方がないな。その時代ではそれが求められていたってことだ。


 なんにせよヴィンランド・サガっていう作品は本当に素晴らしかった。これからもっと面白くなるらしいのでアニメ三期が楽しみで仕方がない。やるのかどうかは知らないけど……。

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