「天罰方式」について個人的な考え
お久しぶりです。
タカシです。
久しぶりのテキスト投稿になります。
現在タカシは遠方の飼い主さんなどを対象にネットでの相談業務も行っております。
その際に「あ、この相談は直接トレーナーに診てもらった方が良いな」と感じた場合は「トレーナーに依頼する事を検討してください」と伝えています。
先日「吠え」について相談を受けました。
この「吠え」は相談内容的から「警戒吠え」と「威嚇」に近いと判断したためアドバイスの最後に「トレーナーに依頼する事を検討してください」と付け加えました。
今回はその後のお話です。
ー「天罰方式?」ー
アドバイスした飼い主さんから「トレーナーに依頼しました、ありがとうございました。」と後日報告がありました。
「良かった。」と感じましたが「吠えた時には犬に気づかれないように、大きな音を出すように言われました。」との事でした。
「天罰方式?」
天罰方式自体が悪いとは思いません。
「自分が行きます」と言わなかったのでそのトレーナーさんに何か言える資格もありません。
ただ。。。
天罰方式はとても難しい方法です。
自分なら進めない方法です。
もやもやしたので「天罰方式」について少し考えてみました。
ー天罰方式ー
「吠える」など犬が好ましくない行動をとった時に「スリッパで地面をたたく・小銭を入れた空き缶を鳴らす」など犬に不快な結果を与える事で好ましくない行動を減らそうと考える方法です。
※「音」以外にも「足元のシートを引っ張る」「気づかれないように入っているクレートを傾ける」なども「不快な結果」を利用する天罰です。
犬は自身の行動の結果で学習するため
「吠えた(行動)→不快な事が起きた(結果)=吠えたから嫌なことが起きた」
と学習してもらい「吠える」という好ましくない行動を減らそうとする方法になります。
「嫌なことが起きた行動は避けるよね」という考えです。
かなり昔からある方法ですが「誰がいつ使いだし一般に広まったのか?」わからなかったため少し本棚をあさってみました。
本棚の中で「天罰方式」という言葉を使っている本は複数ありました。
手に取った本では2015年には「天罰方式」のやり方が載っています。
その前はどうか?
1999年では「ダメ」と明確に伝え好ましくない行動を止める方式がほとんどでした。
この「ダメ」と伝える方法は後に「ガウ缶」など呼ばれる「空き缶に小銭を詰め音を鳴らす」方法と同じ理屈になっていました。
(この「ガウ缶」方式の説明で「天罰方式との違い」と書かれていたので2011年には「天罰方式」があったようです。)
ではもっと前はどうでしょう?
1969年に出版された本には「その行動をしたら誰が不快なのかを犬にはっきりと伝える」方法をとっています。
また「飛びつく時には足を踏む」など体罰的な方法も多く乗っていました。
すべての本を調べたわけではないので結局「いつ誰が言い出したのか?」はわかりませんが方法としては1999年~2015年にかけて一般に広まったのかと予想します。
余談ですが教育の現場で「体罰」がタブー視されだした時期と一致しているかと思います。
「好ましくない行動を取ったら嫌なことが起きる」とその行動の結果を「悪い結果」にする事で行動を避けようとさせたり、行動を減らそうとする方法が「天罰方式」になります。
「嫌なことが起きるから行動をやめる」
一見効果がある方法のようです。
「天罰方式」を使う際に大事なポイントがあります。
それは「誰がこの音を出したか気づかれてはいけない」事です。
その行動に対して「天罰が下る」から「天罰方式」です。
では何故「気づかれてはいけない」のでしょうか?
「嫌な事」が「犬の行動」と関連付けて学習されないからだと私は考えています。
犬のトレーニングとは関係のない本の一文に「ヤカンが熱い事を教える時に、熱いだろ!と相手の手をつかんで触らせたら相手は「熱いを無理やり触らさせた人」と受け取る」「ヤカンが熱いと学習するには自分で触るしかない」というような内容の一文がありました。
気づかれてはいけない理由になります。
「吠えたから嫌なことが起きた」
「吠えないでおこう」
と考えるためには「この人がイヤな事をした」と気づかれてはいけません。
「この人がイヤな事をするなら、この人がいない時は吠えても問題ない」
「この人がイヤな事するから、この人は信頼できない」
「自分の群れには必要ない」
「攻撃しよう」など
音を出したあなたに対して「どう行動するか?」考えるようになってしまいます。
「この人が怖いから顔色を窺ってビクビク生きなければ」となる可能性もあります。
気付かれてはいけません!!
では、気づかれないは可能でしょうか?
「吠え」た、悪い事をした。
その瞬間に「音」を出す。
その為には「吠え」る瞬間を予想しスリッパなり空き缶なりに手を伸ばし「吠え」たら「音」を出す。
犬がビックリして嫌な気分になっている時に「私は音を出してませんよ」と普通に過ごす。
手にスリッパ持ったまま?
音を出した瞬間に「どこからなった?」って振り向きませんか?
その時、手にスリッパ持ってたら?
「じゃあ隠れたらいい」ってのもありかもしれません。
「吠えそう」になったら毎回隠れるんですか?
気付かれないようにするためには「吠える」前の行動を予測し対応する必要があります。
(吠える条件を再現する方法もあります)
「吠える」が予測できる、再現できる状況であれば「吠えない」ように「マット」「コイ」「ハウス」「オスワリ」でもいいんじゃないでしょうか?
(「マットでは吠えない」とトレーニングする必要はあります。)
「好ましくない行動は経験させない予防」と「別の行動を教える」方が楽な気がします。
「吠え」てしまった時は仕方がないと考え「無視・無反応」でそれ以上の学習を避け、「吠えていない」状況時に「褒める」トレーニングで「吠えない」を伝える。
ただ「吠え」だけが好ましくない行動ではないですし、「吠え」でも「今すぐ止める」必要がある場合もあります。
常に「無視・無反応」では実生活で対応できません。
そんな時は「大きな音」でビックリさせる必要がある場合もあります。
ただこれは「天罰方式」とは全くの別物です。
どちらかというと「ダメ!」や「ガウ缶」方式に近い方法です。
「天罰方式」は正しく上手く利用する事で効果のある方法です。
ただ誰でもが「正しく上手く」利用できるか?と聞かれると「出来ない」方法です。
そのトレーナーさんが出来たからと言って「飼い主さんが出来るとは限らない」危険性の高い方法でもあると思っています。
今回は「天罰方式」について個人的な考えをつらつらと書かせていただきました。
お付き合いいただきありがとうございました。
2019年5月末に出張型ドッグトレーニングスクールを始めました。 犬と飼い主の関係づくりのお手伝いをモットーにやらしてもらっています。 アイコンタクト アイコンタクト とばっかり言う地味なトレーナーです