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難民のホテル代貯金から貧困削減貯金へ(2023年8月執筆)

8/2夜にずらずらとUKAidカットに関するツイートが流れてきたので「またやってんな」感があったのですが、何 やらIDCがEquality Impact Assessment なるものを出したようでして、Mitchell MPからIDCに提出されたレター をIDCがpublishした形になっております。ところでレターの冒頭が、”You will have seen that on 17 July the FCDO published its Annual Report and Accounts 2022 to 2023.”と始まってるんですけれども、筆者は「いやいや見てない見てない」状態でしてFCDOのツイッターからは何も発信されてないので、ちゃんと告知してほ しいんですけど!?ってなりましたがIDCがちゃんとやってくれてましたし、Bondあたりもツイートしておりまして筆者がチェックをサボってたことがバレただけでしたゴメンナサイ。ではそのペーパーを読みましょうとな るんですけれども、pdfのページ数が316となっておりまして、これは前回の投稿で読みますと言っていたMDBs のレポートは無かったことになりそうな予感ですね。devexがEIAのデータの要約をしてくれていますが非課金税の筆者は読めませんので、レターの要点をさらってから、お盆の連休使っても終わりそうにない物量に圧倒されつつも(とはいえ読む文字量はせいぜい50ページ分くらいの予感)本題のレポート内容に入っていきたいと思います。

レターのpdfがスキャンデータでコピペできないのがツラいですが、EIAは端的に言うと、23/24のODA予算削減 目標が国や援助テーマに与える影響の分析で(本文は”the potential impact on equalities of proposed reductions to country and thematic areas to achieve FCDO’s required ODA savings target“)、これをもって 最終的なアロケーションをFCDOの様々が決めるという流れらしいです。EIAはFCDO独自でなく、公的機関がPublic Sector Equality Duty (PSED)に則って(国外プログラムは遵守義務ではない)、ポリシーやプログラムが equality dutyの背くものでないかをチェックするためのエビデンスベースのアプローチとされています。そうい うわけで、ODA予算削減で外野からギャーギャー言われていたFCDOがEIAを実施したところ、当然ながら予算削 減の影響がやはりありましたという結果になっております。なので、影響がヤバそうなアフガンやイエメンなど は、“in-year underspends and other resources”を駆使してインパクトを和らげるようやりくり微調整がされています。

FCDO

ちなみに23/24ODA削減は2020年からありましたがそれらを累積した影響度は分析対象外となっております。あ 前置きで、今季のODAカットは大きく影響大であるものの、義務ではないEIAを行い昨年はしなかった公開ま でして、24/25の予算は£7.4bnから£8.3bnに増額、アフリカ地域に関しては倍増する予定とレターにもアンダー ラインで強調されているように、back to 0.7%努力をアピールしています。また、”ODA reductions were applied proportionately across Director General areas and savings were only implemented to the bilateral ODA portfolio”ということで、後半イマイチ何言ってるか分からないんですが、savingsは結局はODA reductions なのであってこれがbilateralのみっていうのがピンとこないんですけれども、”A review of multilateral spend was conducted separately”と続いておりましてやはりピンとこない。細かく分けてそれぞれいくらsaveするか 計算しているのはbilateral aidだけってことでしょうか。

FCDO

少し脱線しましたが、EIAはまず最初にsavings率が高かったトップ21エリア一覧が載せられておりまして、以下5つのequality anlysisがそれに続きます。

  1. Eliminating prohibited conduct

  2. Advancing equality of opportunity

  3. Fostering good relations

  4. Further action

  5. Constraints

1~2はgenderやらinclusionやらに影響が大きいなどの話が羅列されておりまして、4も特別なことは書かれてな くてこれまで話されてきたこととあまり相違は無いですね。目立った数値は載せてるのでそれ以前の数値とかプ ログラムレベルで知りたかったらannual report読めということでしょうか。レターの冒頭でDevTrackerが復活し たと書かれていて、実際見に行ったら復活しておりましたのでありがたやありがたやというところで、やはりこ ちら有効活用しつつレポートを読めということですね。

レポートの中身ですが、やはり半分は表ですしsection2,3は必要があれば読む程度の情報なので全体の読む文量 は多くないですね。読んでいく中でInternational Development Strategyとか、今年3月に公開されたWomen and Girls Strategyとかを読み返す必要に駆られる訳ですが、UKAidのアロケーションの根拠などを整理せにゃならん と思いまして、断トツで影響が大きい認定されたアフガンが気になりDevTrackerを見に行きましたところ、予算 がFY20/21には15%くらい減っていますがFY21/22に前期比60%くらい増えてまして、早速ドウイウコト!?状態ですのでアフガンについて続きます。

DevTracker
DevTracker

DevTrackerでもレポートのAnnex Aを見てもらっても分かる通り、ウクライナを除けば£200Mを超えているのはアフガンのみですので、アフガンは桁違いに予算配分されています。GNIが急増デモしない限り予算が増える所があれば減ったところがあるはずで、同FYでアフガン・ウクライナを除いて唯一£100Mを超えていたエチオピアをチラ見してみたところ前期まで7期連続で£300M以上当てられていた予算が£148Mと半減しており、アフガンの予算マシマシは前年から£100Mほどですから増額分すべてをこの減額分から割り当てても有り余ります。

DevTracker

問題は何故FY21/22に急増してるかですが、21年8月米軍撤退に伴うタリバン復権であるかと想像に難くないですね。アフガンの増額は事後的だろうと予測できる一方で、エチオピアは20年11月にティグライ民族解放戦線 (TPLF)と開戦しておりますし翌年11月に国家非常事態を宣言しているなど混迷極めている状況で半額セー ルされるとは思えないというのもあります。ぶっちゃけどっちでもいいんですが、FCDOのスタンスの変化も分かりますし、これまでのストラテジー振り返る良い機会ですので見ていきたいと思います。まず、DevTrackerのデータは国によって年刻みかFYで年を跨ぐか異なりますし、regionalのプログラムを含むのでbilateral aidでの数値を見るのが適切ですね。実際調べてみると 少し景色が変わりまして、bilateral aidではアフガンへの援助は増えておらず、その他援助額上位の国と比べると減り方がマシという図になっています。

gov.uk

21年のbilateral aidのトップ5は、アフガン、ナイジェリア、パキスタン、エチオピア、イエメンで、20年はどの国も似たりよったりですが、21年は上述の通りアフガンが比較的減り方が穏やかであるのに対し他4つは仲良く急減しています。その理由もご丁寧に述べられておりまして、

Afghanistan has become the top recipient of UK bilateral ODA in 2021, after being the fourth largest recipient in 2020. This coincides with the humanitarian crisis and Taliban takeover. Compared to the other top 5 recipients, Afghanistan experienced the smallest bilateral ODA decrease in 2021 (£38m).

やはりタリバン復権が21年のアフガン予算が他より手厚くされた要因のようです。エチオピアに関してですが、top5の中では最も減少率が高いのは確かですが、21年の統計情報見てみるとシリアやバングラデシュなども似たような減り方となっておりますのでエチオピアだけ特別減らされた訳でもないですね。

gov.uk

無駄に長く21年度予算について語ってしまいましたが、本題のEIA及びannual reportに戻ります、と言いつつEIAについてはあくまでequalityへの影響を調べたものですので、全体見通しとしてはannual report中心に見ていきます。だらだらと本稿執筆中にBondにレポートのまとめをされてしまいましたのでこちらの抜粋になります。

Bond

レポートはポジティブなところがありましたよ、ただ0.7%はまだ遠いですね、という論調で書かれておりまして、対LDCs援助がODA(DACのデータなのでおそらくFCDO以外の拠出含む)に占める割合が、FY10/11から21年の間に37%から26%に落ち込んだことは言及しつつ、FCDOのアロケーションで、対低所得国(LICs)援助の割合が53% (22/23)から57%(24/25)に増加する見通しとなっており、対貧困重視の援助のトレンドに変わりそうと述べられてます。ただ、前半の書き方は若干の語弊があるんじゃないのというところでして、というのも、LDCsとLICsの割合がガッツリ減ったのは21年度のことで、それまでは2011年の66%からaid cut前の2019年の56%と50%以上はキープしています

OGD
OGD

ネットでは10年間若干の増加トレンド、とはいえbilateral aidが貧困重視でなくなってきているのは事実です。FCDO以外によるODAに比べると貧困重視ですがそれはそうあるべきでして、何も誇れることではない。FY22/23のLDCsとLICsの割合については、レポートかIATIのデータをまとめれば分かりますが少し面倒なのと、2022年の統計情報(最終版は今秋公表予定)にもあるように、国内難民援助のコストの大幅増で21年よりも好ましくない結果になっているのは明らかなので、24/25の数値を以って評価されるべきでしょう。ニジェール周りの状況が怪しくなってきているのもありまして、ナイジェリアなどの周辺国に積み増すなどアロケーションは情勢に応じて変わるでしょうが、少なくとも24年度は対貧困援助の拡充は目指されているので、このトレンドをキープしていいけるかが当面の評価基準になりそうです。

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