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Parallel world (近未来?編)
・・・今何時であろうか?
時計がない。
いやそれより、ここはどこなのか?
見慣れぬ場所にいた。
いやそんなことより俺は一体誰なのか。
そこをスッカリ忘れていた。
大事なことのような気もするが、どうでもいいといった感じもある。
面倒くさがりの彼は考えるのをやめ、歩き出した。
街に出た。
ここの街の人々の表情にはなんだか余裕がある。
とても退屈そうで、豊かそうで。
必死な人はほとんど見当たらない。
どうやらこの時代に仕事は存在しないようだ。あるのは個々の活動だけだった。
働いている人はいない。
それぞれ裸でのんびり日向ぼっこしていたり、
お花に愛でるように水をあげ、樹々を抱きしめ、恋人同士は求愛のダンスをし、ある人はフルートの様な優雅な音楽を美しく奏でている。
労働はしたい人だけがしているらしい。それも非常に少数派であり、今では働く人は完全に奇人扱いであった。
そこは、労働で生きていけるほど甘い世の中ではないようだ。労働で食べていける人はほんの一握りの奇人であった。なんでも機械がやってくれる時代に、労働に関してAIに敵う人間などもはや地球には存在しない。
強烈な変態、奇人にしかできない鬼の所業だ。
人々の大多数は歌を歌い、絵を描き、詩を書き、暮らしていくしかないようだ。
芸術が過剰に溢れた時代。なにをしていてもしていなくても幸せそうで退屈そうで。地獄のような天国。天獄。
目はどこか虚で
しかし喜びに満ちていて。
虚ろに輝く瞳がなぜか愛しくて。
なんにも興味がなく、それでいて何にでも興味があり、好奇心に満ちていて。
生命力に溢れた枯れ木のようだ。
世界の空性を悟り無目的に生を楽しむ風狂の仙人の精神が初期設定として内蔵され生み落とされた人々の人格。
今日死ぬことを悟る老人と、今生まれたばかりの好奇心溢れるぴちぴちした子供が、同居している。
その瞳は、永遠に生きるかのように夢を見ていている子どものようでもあり、今日死ぬかのように深く空っぽの静けさの中で安らいでいる老人のようでもあって。
この時代のトレンドのマインドのようだ。
気が合いそうだ。
。
ある男と話した。
「
昔の人たちは機械やテクノロジーの進化によって
人間は労働から自由になり、より人間らしい個性を発揮できる豊かな社会が実現する、と夢想していたらしいがほんとうかい?
あー、働きたい。働きたいYO!ぼくの気持ちが君に分かるかい?子供の頃から夢に幾度もなく出てきたものさ。僕が世の為人の為必死に汗水流して働き馬車馬のように激しく働き毎日疲れ果てて、疲れ果てることに至上の喜びを感じる天国のような生活を。
働くことにほんとうに憧れた。労働がどんなに気持ちいいものなのかって。僕は熱望してきた。しかしそれは敵わない幻想。僕らは絶望するしかないのさ。
労働ができる君は羨ましいよ。
」
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