見出し画像

キャンディ・H・ミルキィさんへのインタビュー/第4回「逃げ場所を持とう」

女装愛好家のキャンディ・H・ミルキィさんにインタビューしました。
第4回では、ご家族との関係について伺っています。
女装に対して、初めはなかなかよい反応を得られなかったキャンディさん。
それでも、だんだんご家族の態度は変わっていきました。
また、女装が心の拠り所となってきた面についても伺っています。

動画版はこちら

プロフィール
1952年 東京都に生まれる
74年 結婚
76年 出版社「雄美社」を設立
84年 女装クラブ「エリザベス会館」デビュー
88年 アマチュア女装誌『ひまわり』創刊
   以後17年間にわたって発行を続け、全盛期の部数は7千部
94年 離婚
2008年 『キャンディ・キャンディ』の関連グッズを陳列した「コレクション展」の開催を始める
17年 東京・柴又に「キャンディ・キャンディ博物館」を開設

姪っ子が展示会に

悩みながらも、姉がいないと姉のものを着てた(笑)
大人になって聞いたら、姉も気がついてたとは言ったのね。
でも弟だからそんなに嫌な気持ちはしなかったみたい。

姉も息子と娘がいるんだけど、ある日突然、『キャンディ・キャンディ』の展示会やってる時にその姪っ子が来てくれた。
本当の名前は雄三っていうんだけど、「雄三おじさんなの!?」って言うから「そうだよ」つって。

姪が言うには、この間テレビで原宿のキャンディさんってのを珍しくやってて、「あ、私このおじさんと一緒に写真撮ったことがあるんだ」って話したら家族が全員押し黙っちゃって(笑)

姪以外家族は全員知ってたけど、まさか「あれはお母さんの弟だよ」って言えなかったんだって。

ほいで私のこと聞いて、「いや私劇団やってるから全然そんなの話してもらってもいいのに」とか言って、展示会来てくれてさ、もう大笑いだよ。
友達も一緒に来ててさ。

孫に会えた

――ご長男からは「縁を切ってくれ」と言われたそうですね?

結婚するから縁を切ってくれって。
で、子供ができたら、子供には会わせないって。
「うん、別にいいよ」って答えた。

お前だって二十歳過ぎてからだろう、物事がやっとわかるようになったのはって気があったから。

そしたら何てことない、ある日喫茶店から出てきたら女子高生がやってきて「いつもお年玉ありがとうございます」と言われた。
孫だった。

長男からは「娘の教育上よくないから会わせない」とか言われてたけど

「何お父さん変なこと言ってんの、全然私は平気なのに。うちのクラスでもいるよ」とか言ってさ。

ほいでついにこないだ、大学の入学のお祝いを家族でやった時、女装して行ったんだよ。
そしたら写真バチバチ撮って「クラスの奴に見せる」とか言って。

とても便利ないいご趣味

――女装のどんなところが楽しいか教えてもらえますか?

あのね、例えばカレーライスが好きな人に「なぜですか?」って聞いたら「辛いから」って答える。
じゃ「なぜ辛いのが好きなんですか?」って聞いてもわかんないんだよ。

それと同じで、本当のとこはわかんないの。
ただ、それで心が躍る。

なぜ女装が好きかってわかんないんだよ。
ただ、これに熱く反応する。

それがある人は鉄道であったり、飛行機であったり、人形であったり、アニメーションだったりするんだけど。

それがたまたまこの女装で、しかもレースとフリルとリボンという。
これはフェティシズムの世界だということを言ってくれた先生がいるの。
それまで自分でもわかんなかったんだよ。

「あなたのそれはレースとフリルとリボンのフェティシズムの世界です」と言われた時に一番ぴったりしたんだよ。
その通りだよ、先生。

その先生っていうのが、帝塚山学院大学の教授やってた小田おだすすむ先生。
宮崎事件って知ってる?
あの心理分析をした先生なんだよ。

小学館か何かの取材の時、その先生に会わしてくれて、雑談の中で言ってくれた。
一番モヤモヤしてたのが、先生の言葉でぴったりした。

レースとフリルとリボン、そうなんだよ。
それさえあればもう、それこそズボンでもいいんだよ。

とにかくどこでもかしこでもレースとフリルとリボンをつけちゃう。


それで熱くなる体質なんだろうね。
でも他にもあるんだよな、機関銃の弾とか、軍服とかね、そういうのも好きなんだけど(笑)

熱くなるもの、それがこれだったんだよね。
皆さんにもあるでしょう?
だから、女装って変態だなと思うけど、皆さんが何か趣味で熱くなってるものと何ら変わりないんだよ。

女装さえしてればね、つまらない映画でも見に行くと楽しいの。
意味なく山手線一周したって、女装してると楽しいの。
いっつも行き慣れてる愛想の悪い蕎麦屋でも、この格好で行って食べるとおいしいの。

だからもう全てのものはこの格好さえすれば楽しくおいしくなるという。
とても便利ないいご趣味なんですよ。

逃げ場所を持とう

あのね、逃げ場所なの。
逃げたかみさんから「あんたは女装に逃げてる」って言われたの。

人生、商売がうまくいかないとか、辛い時はやっぱりある。
辛い時ほど女装したくなるんだよ。

かっこよく言えば、しっかりした逃げ場所を持ってると強い。
逃げ場所がないと、後はどうなる?
逃げられなくなっちゃうと追い詰められちゃう。

逃げ場所はシェルター。
だから入っちゃったのがこの世界かな。
都合のいい話、自己弁護なんだけど、人間やっぱりね、しっかりした逃げ場所を持ってると強い。

逃げ場所を恥じることなく、逃げ場所を作って、そこに奥さんも子供も入れない、それこそ男の秘密基地みたいなさ。
逃げ場所をしっかり持とう。

これ仮定の話だけどね、女装で商売潰したんならば、女装しなければ商売うまくいったのかもしれない。
女装でかみさん逃げたんだったら、女装しなければかみさんは逃げなかった。

結果論だけどね。

確かにそうだよなっていうのもある反面、これが逃げ場所になったから、いけなかったといえばいけなかったんだけど。
でも、逃げ場所がなかったらどうなってたかなっていうような感じだね。

~第5回へ続く~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?