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SNSとの距離をどうやってとればいいのか

こんにちは。中尾と申します。
いつも応援していただいている皆さま、ありがとうございます。

表紙の写真は京都の北野天満宮に遅めの初もうでに行ったときに撮った梅の花です。また外に出て自由に花を見られる日が来るといいですね。

さて研究サーベイnote、6回目の今回は、SNSの使い過ぎをどうやって防げばいいのか、です。

Facebook、Twitter、InstagramといったSNSのフィードをだらだらと眺めてしまう経験は、程度の差はあれ多くの人が持っていると思います。

特に最近はコロナの影響で暗いニュースや多様な意見も多いように思います。あまりスマホを眺めすぎると気が滅入ってしまい、精神的にもよくなさそうです。できればスマホから距離を取りたい、と感じている人も多いのではないかと思います。

なぜ人はSNSを見続けてしまうのでしょうか。特定の時間にSNSを使うことが習慣化しているということ、あるいは中毒症状になってしまっていてその利用から抜け出せない、など色々な原因がありそうです。

なにが人をSNSに向わせるかを調べるために、学問的にはSNSを使う人と、使っていない人や使うのをやめた人を比較する、ということが行われています。

あるサービスを調べる際にそれを使っていない人を調べるというのは逆説的な気もしますが、non-userの研究と呼ばれ、一般的に行われています。

例えば、ある論文では2週間SNSを使ってもらい、そのあと4週間はSNSの利用をやめてもらい、そのあと使いたいか使いたくないかというインタビューを行い、どういう心境の変化があったのかが調べられています。[1]

さて、そのnon-userの研究でわかってきていることがあります。それは、人々がSNSを無意識に使い続けるという行動は「自分の行動を自分でコントロールしている」という感覚、Sense of Agencyに左右されるということです。

Sense of Agency というのは耳慣れない言葉です。Agencyとは力、とか代理人などの意味がありますが、日本語にそのものずばりの言葉がありません。このSense of Agencyという言葉も日本語に訳しにくいのですが、自分の力できちんと物事が制御できていると感じる、という感覚です。(難しいのですが、日本語になっている自己効力感という概念ともまた異なる概念です。)

以下ではSense of Agencyを略してSoAと呼びます。SoAはSNSのために作られた概念ではなく、一般的に人が自分の行動などに対して感じる感覚を表すために作られたものです。しかし、SNSの調査などでよくこの概念が利用されています。

先に紹介した論文 [1] では、このSoAを下の三つに分けます。
awareness: 自分の行動を意識的に行っているか。カジノで取りつかれたようにギャンブルを行っている状況になっていないか。
inetntionality: 意図して行っている行動か。自分の信条や願望からその行動が引き起こされていると感じているか。
capacity: 自分がその能力を起こすのに足る能力を持っているか。

そして、サービスを使い続ける人もやめる人も、SoAが高まる方向に動いていくと分析しています。

例えば、SNSから離れたほうが心の平穏が得られる、という人がいます。こうした人はSNSから離れたほうが自分の行動に対して持つ意識が高まり(awarenessの向上)、自分の行動をより意図したとおりに行うことが可能になる(intentionalityの向上)と考える、と言われています。

逆に、SNSを使い続ける人は、自分が所属する専門的なコミュニティと密にコミュニケーションをとる必要性を元々感じており (intentionalityの存在)、そのツールとしてSNSが自分の能力を強めてくれる (capacityの向上) といった理由からSNSを使い続けるとされています。

SoAの概念はまだまだ構築中で、尺度や考え方などがいろいろと提示されている状況ですが、上記のような分析を見るに、妥当な解釈がなされているのではないかと考えられます。

さて、SoAを高め、自分にとって最適なSNSとの付き合い方を行うにはどうすればいいのでしょうか。

基本として重要なのは、自分が何のためにSNSを使っているのかをはっきりさせることです。SNSの利用の目的として、情報収集のため、知人の近況を知るため、などがあると思います。

そのような目的を一度考えたうえで、果たして自分にとってその情報がどの程度有益なのか、その知人の情報を知ることがどの程度意味があるのか、などを整理することが必要です。そして特定の情報をミュートしたり、そのようなニュースを表示しにくくしたりといった整理を行っていく必要があります。

一つお勧めしたいのは、SNSの利用についての日記をつけることです。この論文 [1]の中では、被験者の心境の変化を記録するためにSNSの利用についての日記をつけてもらっています。この日記をつけるという行為自体が、自分が行っていることに対するフィードバックとなって、awarenessを向上させ、その人がSNSを使いにくくする、という効果があるといわれています。

また、SoAは一般的に、その人に強迫観念があるほどネガティブになっていく、とも言われています [2]。なにかに追い詰められているな感覚に陥ると、だんだん自分の行動を自分で律せなくなっていくということです。

まずは少し心に余裕をもって、長い目で見た時にその情報、そのコミュニティは大事なのか、自分を委縮させるようなコミュニティに入ってしまっていないか、といったことを一度考え直してみることも、生活の中での自身のSoAを向上させるためには必要なことかもしれません。

私も今後SoAの議論をもう少し深く見ていこうと思います。またお伝えできることがあればこのnoteでも触れていきたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
大変な状況ですが、皆様が健康に過ごされていることを願っています。
今後ともよろしくお願いします!

[1] Baumer, E. P., Sun, R., & Schaedler, P. (2018). Departing and Returning: Sense of Agency As an Organizing Concept for Understanding Social Media Non/Use Transitions. Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction, 2(CSCW), 1-19.
[2] Tapal, A., Oren, E., Dar, R., & Eitam, B. (2017). The sense of agency scale: A measure of consciously perceived control over one's mind, body, and the immediate environment. Frontiers in psychology, 8, 1552.

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豆乳とビールが好きです/企業研究所の研究員/レコメンダ/音楽/社会と技術/STS/HCI/著作権制度と情報技術。文理を分けることなく分野を転々としています。法学部志望→理系学部(B1-B3)→社会学系分野(B4-M2)→情報系の研究員←今ここ。
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