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1.掛軸ってなあに?


皆さんは掛軸をご覧になったことはありますか? 

おそらく多くの方は、一般家庭や神社仏閣の床の間に飾ってあるのを一度は目にしたことがあるかと思います。掛軸に限らず、伝統工芸品全般に言えるかもしれませんが、名称とイメージは何となくリンクするけれども、「そもそも⚫︎⚫︎って何?」「どんな条件を満たすと⚫︎⚫︎って言えるの?」と改めて聞かれると回答に窮するのではないでしょうか?

掛軸とは、一言で言えば、”埋めないタイムカプセル”です。皆さんが大切にされている宝物を後世まで残したい、掛軸はそんな想いが込められて制作されます。今回は、掛軸の魅力とその特徴についてご紹介します!

1-1.掛軸の基本・歴史

掛軸は、日本の伝統的な美術品として長い歴史を持っています。平安時代から存在していたとされ、その起源は中国にまで遡ることができます。日本に伝来した当初は、仏教の経典や仏像を収めるためのものとして使用されていました。しかし、時代が進むにつれて、日常の生活空間での装飾品としての役割も増してきました。

掛軸の主要な部分は、中心にある「本紙」と呼ばれる部分です。これは、書や絵画、詩歌などが描かれた紙や絹のことを指します。本紙は、周囲を布で縁取られ、上下に木製の軸が取り付けられています。この軸は、掛軸を巻き取る際の支点となり、また、掛ける際の重りとしても機能します。

掛軸には「表具」という技法が用いられます。これは、本紙を布に貼り付け、補強することで、長期間の保存や繰り返しの使用に耐えるようにするためのものです。表具師と呼ばれる職人が、一つ一つ手作業で行っており、その技術は日本の伝統的な工芸として高く評価されています。

1-2.掛軸の使用場面・背景

掛軸は、日本の伝統的な生活空間や文化の中で多様な場面で使用されてきました。以下は、その主な使用場面と背景です。

茶道

茶の湯の空間、特に茶室においては、季節や茶事のテーマに合わせて掛軸が選ばれます。茶室の中心となる「床の間」に掛けられる掛軸は、その日の茶事の心意気を表現するものとして非常に重要です。茶の湯の精神として「一期一会」があり、その時々の心境や季節の移ろいを大切にするため、掛軸もそれに合わせて変えられます。

禅宗の寺院

禅の修行の場としての座禅堂や法堂には、禅の教えや心意気を示す言葉が書かれた掛軸が掛けられることが多いです。これは、修行者たちの精神を鼓舞し、またその心を統一する役割があります。

一般家庭の生活空間

日本の伝統的な住宅、特に和室において、季節や家族の行事に合わせて掛軸が飾られます。新年には祝いの言葉や春を感じさせる風景、お盆には先祖を偲ぶ詩など、その時々の家族の心境や生活の中心となる出来事を反映した掛軸が選ばれます。

その他公的な空間

市役所、学校、公会堂や企業応接室などの公的な場所においても、訪問者を迎えるための装飾として、またその場の格式を示すためのアイテムとして掛軸が使用されることがあります。

1-3.掛軸の3要素

ここまで書いてきた通り、掛軸は、美しいデザインや技法だけでなく、その機能性や保存性にも優れています。最後に、掛軸の基本的な3つの要素を説明して本稿を締めます。

鑑賞性

掛軸は、本紙に描かれた書や絵画、詩歌などを鑑賞するためのアイテムです。そのため、鑑賞する際の視線の高さや、部屋の照明など、最適な条件で作品を楽しむことができるように設計されています。

収縮性

掛軸は、使用しない時には巻き取って保存することができます。これにより、場所を取らずに保管できるだけでなく、紫外線や埃から作品を守ることができます。

保存性

掛軸は、長期間の保存や繰り返しの使用に耐えるように工夫されています。特に、日本の湿度の高い気候条件下でも、作品が劣化しないようにするための技法が取り入れられています。まさに冒頭で述べた"埋めないタイムカプセル"なのです。


今回は、掛軸の魅力と特徴について簡単にご紹介しました。この美しい日本の伝統的なアートを、ぜひ日常に取り入れてみてください!

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