【不幸中の幸い】セリエA20-21第31節ナポリ-インテル レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回はセリエA第31節ナポリ-インテルのマッチレビューです。
●スターティング
・ナポリ選手交代
74分、オシメン▶︎メルテンス
88分、ジエリンスキ▶︎エルマス
90+1分、ポリターノ▶︎ヒサイ
90+1分、ファビアン・ルイス▶︎バカヨコ
・インテル選手交代
69分、ダルミアン▶︎ペリシッチ
75分、ラウタロ▶︎サンチェス
84分、エリクセン▶︎ガリアルディーニ
●前半-いつも通り、+α?のボール保持
まずはナポリのボール保持から見ていきましょう。
✔︎マリオ・ルイが高めの位置取り。
✔︎ゆえ、最終ラインは3バック風に。
✔︎フォーメーションで表せば3-4-2-1のイメージ。
ナポリのスタンダードな設計ですね。シーズン前半のインテル戦も同様でした。
観るたびに思うんですが、マリオ・ルイが上がっているのでどうしても左サイドを追いたくなる。しかし、この設計で抑えておきたいのはむしろ右サイドのディ・ロレンツォ。とにかくボールをさばくのがうまい。横だけじゃなく縦にもばっちし付けられるし。
さらに縦関係で保持の潤滑油であるファビアン・ルイスがいますから「そりゃハイクオリティな起点になるわなぁ!」って感じです。
したがって、右でリズムを作って、高い左で崩す、が設計的にはメインになってくると睨んでいます。まぁ、ナポリは全方位から崩せるのでそうは感じられないかもですが。
・ナポリのパス回数上位3名(1試合平均)
1位:ディ・ロレンツォ75.2回
2位:ルイス73.1回
3位:クリバリ71.7回
30節時点、また、10試合以上出場した選手のみ。FBrefを参照。
シーズン前半のインテル戦と比べるならば、インシーニェの位置取りに変化が見られました。
前回はルイが上がったスペースにインシーニェが降りて、前を向いた状態でのオンザボールが脅威でしたが、今回はハーフスペースでの静的なポジショニングが目立ちました。
いつも通り、データにもしっかりと反映されています。
・ナポリのボール保持時の平均立ち位置(前半のみ)
ディ・ロレンツォ(22番)に対し、ルイ(6番)がかなり前がかりに位置していることが分かります。
それに呼応してインシーニェ(24番)もハーフスペースでのプレーが多いことが読み取れます。
前回よりもインテルの非保持において、前からプレス→5-3ブロックへの切り替えの速度も練度も向上しており迎撃体制の確保がされていた。
ゆえ、インシーニェが低めに降りてのオンザボールよりも前線で最終局面の打破に期待したい!という意図が込められていると思うのですが、これがアクション(事前プラン)なのかリアクション(試合中のアジャスト)なのかはちょっと判断し難いです。
具体性の欠如
「じゃあ実際にどう崩すの?」が見えない。その場での即興コンビネーションや個で崩す感が否めなかったように思います。
ここは素直にインテルの組織的守備を褒めるべきかもですけどね。
直近のサッスオーロも似たスキームだったので短いスパンでのおかわりだった点もうまく対応できたファクトかもしれません。
●前半-バレッラを浮かせるハイプレス
ナポリのいつも通りボール保持に対し、非保持はインテル仕様だったと見ています。最も特徴的だったのはハイプレス。
✔︎オシメンとジエリンスキは横関係。
✔︎オシメンはハンダノヴィッチをはじめ、インテル最終ラインにアクティブにプレッシャーをかける。
✔︎ジエリンスキはコース制限が主。
✔︎インテルのWレジスタ的なブロゾヴィッチとエリクセンも2DHが捕まえる。
ハンダノヴィッチを含めたインテルの6枚ビルドアップ隊になんと6枚、同数でハイプレスを仕掛けてきました。
これにはびっくり。この設計だとインテル側のフィールドプレーヤーが1枚浮きますからね。
浮いたのはバレッラ。
今季は一素人から有識者まで幅広い層が大絶賛。元々高かった評価をさらに伸ばすバレッラをあえて浮かせる大胆不敵な方策。
彼らのプレスは強度もありましたし、出るタイミングなども連動性もありましたが、個人的に本節のナポリのプレスを語るに設計は不可欠と考えます。
配球機関と加速器を徹底的に潰す
ビルドアップ隊そのものとルカクの楔というブースターさえ抑えれば、バレッラは放っておいても問題ないという判断でしょう。
バレッラとしてもビルドアップ隊を助ければ後ろが重くなるし、かと言ってルカクの楔がなければ、その推進力とダイナミズムが全面には活きない。ジレンマ。
個人的にこれはめちゃくちゃ悔しかった!
理屈は分かりますが、それでも今のバレッラを浮かされた事実。そして、それがクリバリがルカクに勝ち続ける目算アリの前提であったこと。悔しい、悔しいですよ。
もちろん、ナポリはバレッラをまるまるっと放置したわけではありません。
インテルが自陣深くにない場合はプレス隊の重心をうまく下げて対応。
デンメかインシーニェがバレッラを監視します。
この第二段階ではハイプレス時に明確だったマークの担当が薄れてゾーンマークっぽい感じになります。
これもまた良かった。「誰が出て行ったら、誰がどうフォローするのか」、非常に熟練されていました。
特にデンメ。
熟練云々もありますが、それ以上にプレスとプレスバックのスイッチがひたすらONなこと。
とにかくまぁー走りますね。単なる走行距離的な”走る”じゃなくて、インテンシティが伴う”走る”。バレッラ同様のスペシャルな貢献です。
と、ナポリを持ち上げて、「一方的な展開だった」と誤解されそうな書き方をしてしまいましたが決してそんなことはありませんでした。
ハイライン+数的同数のナポリ最終ラインと、その裏目掛けての一発展開。
ラウタロが1.5列目に降りてDF-MF間のスペースでボールを引き取る。
ルカクがクリバリの強烈なマークの中でも、要所でうまくボールを収めてすかさずバレッラやハキミがうまく絡む。
と攻略の手段とその効果はたしかに存在しました。
あともう一歩で決定機!というシーンに加え、セットプレーからポスト直撃の不運な決定機?もあり、複数回ネットが揺れていても全く不思議ではない。そんなもどかしい展開。
もどかしいと言えばハンダノヴィッチとデ・フライが交錯してしまったことで生まれた失点も。
直前のロストやインシーニェに深くまで抉られたという「インテル、やられてしまった!」の要素も間違いなくありますが、「”不運”という要素の方が大きいよね?」に対して首を横に振ることは難しいでしょう。
●後半-大筋はシンプル
後半の見方はシンプルでいいんじゃないかと思います。
ナポリが強度を下げた
これに尽きるかな、と。
もう少し分解すると、保持ではルイが上がるタイミングが変わりました。前半は自陣からでも積極的に上がっていましたが、後半は自陣をこえてから!というルールがあったと推察。
これにより、危険な位置(ナポリの自陣深い位置)でのトランジションのリスク管理を強化。
実際、後半のインテルはバレッラの前からプレスの頻度をアップさせたので、地味にいやらしいディテール変更でした。
非保持では、”バレッラを浮かせるハイプレス”のトリガーを厳しく再設定。
インテルが自陣深くでバックパスをせざるを得ない状況など、好条件のみで発動します。基本は前半に紹介した第二段階がベース。
再掲です。
ナポリのプレッシャー減は必然、インテルのバーティカル(縦方向)な攻撃の頻度増に繋がります。立ち上がりはナポリと言えど、このアタックを思うように捕まえられず後手後手になるシーンが散見。
この時間帯の中で生まれたエリクセンのゴラッソは非常に価値あるものでした。ゴールの難度はもちろん、ゴールが生まれた時間帯・流れを僕は評価したいです。
しかし、この得点あたりからナポリに深くまで持っていかれるシーンが散見。両者ややオープンな感じになると、70分くらいからインテルがトーンダウン。ナポリに主導権を渡したまま、タイムアップの笛が鳴り響きました。
おそらくコンテ監督のサンチェス、ガリアルディーニの交代策は
ⅰ)後半も引き続き効いていた”前線から1.5列目に降りるムーブ”を得意とするサンチェスに任せる。
ⅱ)サンチェスが降りて空いたスペースをクルソーレタイプのガリアルディーニに突いてもらう。
要は”縦の入れ替わり”の企図があるのかなと妄想しましたが、僕が的外れだったか。単に機能しなかったか。ガリアルディーニの交代策は僕の買い被りでドローでクロージングさせる為だったのか。
結論、大勢はまるで変わりがありませんでした。
・スコア
ナポリ1-1インテル
(36分ハンダノヴィッチOG、55分エリクセン)
●雑感-皮肉、そして不運の中にあった幸運
本節は、ナポリが強度を落としインテルの形が出しやすくなった後半よりも、ナポリのハイプレスが一定以上の効果があると思えた前半が期待値高しの内容。なんか皮肉だなぁ、という感想を抱きました。
しかも、その期待が実らなかった理由に運という要素が占める割合が大きいことを否定できないのも。
試合全体で言えば、失点もしたし、ポリターノのゴラッソ未遂もありましたがこの図がイメージを具現化したものに思えます。
understatより引用。
「得点期待値どうこう!」というより、局面ひとつひとつをポイント化して加算していったらこうなりますよ、みたいな。すみません、伝わらないですよね笑
けど、長いシーズン、この手の試合ってどこかしらで発生しますよね。それを苦戦必至のナポリ戦、しかもスタディオ・マラドーナで消化できたことはむしろ良かったのかも。
不幸中の幸い
我々はむしろラッキーだったのかもしれませんね。
●雑感−見えた!最終局面の課題
シーズン終盤、いよいよ最終コーナーを曲がって最後の直線に入りますが、ゴールテープを切るための課題がアタランタ戦、そしてこのナポリ戦でハッキリしましたね。
許容外のハイプレス
以前どこかで書きましたが、今のインテルにとって中途半端な前からプレスはご馳走です。
しかし、アタランタやナポリのような突出した強度や設計によりインテルのビルドアップユニットがキャパオーバーになると前線に当てたり、裏を狙ったりでルカクやラウタロの質的優位頼みが色濃くなってしまう。
インテルのカウンター(縦に速い攻撃)はここにダイナミズムが生む数的優位(同数)と緻密な位置的優位があってこその火力です。
ルカクなら数的同数のマッチアップで一度でも勝てば決定機に繋げてくれますが、単純な放り込みではデュエルに勝利するための態勢・体制も整えられません。
まして、クリバリクラスなら尚更。事実、本節もルカクはクリバリ相手に引けを取っていませんが、綺麗な一本勝ち!はい、理不尽!もありませんでした。
この先に控える相手でこれが実現できるのはユヴェントスしか存在しないと見ていますが、スペツィアはシーズン前半戦がそうであったように前からプレスが積極的なチーム。
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シーズン前半戦レビューより抜粋。
サンプドリアはオールコートでプレッシングを志向するチーム。
・セリエAプレス回数上位3チーム(1試合平均)
1位:サンプドリア161.5回
2位:ジェノア150.2回
3位:ミラン149.8回
30節時点、FBrefを参照。
加えて、ヴェローナもプレス自体の回数は多くありませんが、いざ圧をかけて距離を詰めたときの球際(デュエル)は超ゴリゴリ。
夕方から夜に移り変わるときのような薄暗い不安を禁じ得ないのは僕が慎重過ぎるからでしょうか。
肩を組んで勝ち点を分け合う仲良しのローマ、キャパオーバーのハイプレスを仕掛けられるユヴェントス(やるかやらないかは別)。
この2チームの前にいかに勝ち点を積み上げるか。
チームにとっての大きな山場
「わざわざ書かなくても、そんなの当たり前じゃん!」は仰る通りなんですが、現状のインテルを加味するとその言葉にグッと重みが増すでしょう。
一戦必勝!で臨んでほしいですね。
FORZA INTER!!⚫️🔵
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